がんに効く生活 ダヴィド・S・シュレベール著 2009年2月日本放送出版会刊

(目次)

本書について

はじめに

マイストーリー1 突然の死の宣告

Ⅰ 統計や数字ではわからない、本当の「余命」

マイストーリー2 告知と新たな人生のスタート

Ⅱ がんの弱点を知る

 1 体の見張り番「免疫細胞」とがん

 2 炎症がもたらすふたつの顔

 3 がんの栄養源を断つ

マイストーリー3 がんを打ち明ける

Ⅲ がんに効く生活~環境を知る

 1 がんは流行病?

 2 がんを育てる食物~精白糖、精白小麦粉、植物油

 3 地球が病んでいては健康に暮らせない

マイストーリー4 再発の絶望の中で

Ⅳ がんに効く生活~効果のある食物

 1 抗がん効果のある食物~緑茶、大豆、ターメリックほか

 2 なぜ、食事療法が治療に取り入れられないのか?

 付録 抗がん効果のある食物リスト

Ⅴ がんに効く生活~心の力

 1 心と体の深い関係~がんになりやすい性格?

 2 過去の傷を癒す

 3 生命力との絆を結び直す

マイストーリー5 恐怖を克服する

Ⅵ がんに効く生活~運動

マイストーリー6 成功の鍵は、昨日までの自分を「変える」こと

Ⅶ まとめ~作らない、育てない、あきらめない

謝辞

監訳者ことば

訳者あとがき

 

【本書について】

 本書は、がんの進行を予防し、従来の西洋医学による治療法(外科治療、放射線治療、化学療法)の効果を促進するような、人間の体が本来持っている自然治癒力について述べたものである(P3)

 

【はじめに】

 私たちは誰でも、体内にがん細胞の芽をもっているだけでなく、体自体がその芽ががんに育つプロセスを妨げるようにつくられている。それを活用するかしないかは、本人次第である(P13)

 がんになる一番の原因は遺伝子ではなく生活習慣である。遺伝子が関係しているのは、がんの死亡率の15%以下にすぎない。今日、がんを治すことができる代替療法はひとつもない。外科手術、化学療法、放射線治療、免疫療法、近い将来は遺伝子治療といった西洋医学によって開発された技術に頼らずして、がんを治療することは考えられない(P14~15)

 

【マイストーリー1】

 被験者の一人が突然約束をキャンセルしたため、著者が代わりにMRI検査を受けたところ、脳腫瘍が見つかった(P22~25)

 

【Ⅰ】

 1982年7月、スティーブン・ジェイ・グールド(ハーバード大動物学教授)は40歳で腹膜中皮腫アスベスト吸入が原因とされる珍しいがん。不治の病)と診断された。この病気の診断が下された患者の余命の中央値は8カ月だった。しかし、多様性こそが自然の本質である。自然界において、中央値は抽象的であり、人間が個々のケースの多様さに対して無理に当てはめている「法則」にすぎない。グールドという個体にとって、中央値から多様な広がりを見せる可能性の中で、自分がどのあたりに位置しているのかが問題だった。余命グラフはでは、患者の半数がグラフの左半分=余命0~8カ月の部分に集中している。右半分は長いしっぽ(ロングテール)の形をしている。実際に、少数だが、この病気にかかりながら何年も生きている人がいる。20年後、グールドは、別の病気で亡くなった(P28~31)

 統計は情報にすぎず宣告ではない。がんにかかったとき目標とすべきは、グラフの曲線の尻尾の先端に達するために、自分にできる限りのチャンスを与えることだ(P31)

 

【マイストーリー2】

 私たちはみな自分が誰かの役に立っていると感じることを必要としている。それは心の栄養素ともいえよう。この栄養素が不足すると、死が近づけば近づくほど、心の痛みは耐え難いものになる。死の恐怖と呼ばれるものの大半が、自分の人生には意味がなかったのではないかという不安、自分は無駄に生きたのではないかという不安、自分の存在を誰も気にかけてくれないのではないかという不安からきている(P48)

 

【Ⅱ】

 ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は、がん細胞のような異物の存在を探知すると、その周りに集まってきて、自分の細胞膜をがん細胞に接触させ、分泌物がつまった小胞をがん細胞に向けて発射する。その分泌物の一つパーフォリン分子はがん細胞に穴を開け、グランザイムはがん細胞にプログラミングされた自己破壊のメカニズムを活性化させる。結果、がん細胞の核が砕け、細胞の構造全体が崩壊する。それをマクロファージが消化する(P62~63)

 乳がんと診断された女性から採取された腫瘍の断片が患者本人のNK細胞とともに培養された。12年後、NK細胞が反応しなかった47%の患者が亡くなっていた。顕微鏡で免疫システムの活発な動きがみられた患者の95%は生きていた(P63~64)

 食生活が健康的で、環境が清潔であり、全身を使った運動をしていれば、白血球は活動レベルが高くなる。喜びや人間関係からくる感情にも敏感である。地中海料理やインド料理、アジア料理は炎症を抑える。加えて心の平穏、家族、友人からのサポート、自身の価値と過去の受け入れ、定期的な運動が重要である(P68~69)

 腫瘍は、免疫細胞に炎症をつくり出すように後押しすることで、自分の成長と周囲の組織の侵略に必要な燃料を体内に製造させる。血中の炎症マーカーの測定による炎症レベルが低い患者は、その後生きられる確率が2倍高い(P76~77)

C反応性タンパクが10mg/ℓ未満 かつ アルブミン35g/ℓ以上:最小限のリスク

             以上 または        未満:中程度のリスク

             以上 かつ         未満:高いリスク

 抗炎症剤(アドヴィル、ヌプロフェン、イブプロフェン)を定期的に服用している患者は、服用していない患者に比べてがんになりにくい。しかし、これらの薬には副作用(胃潰瘍、胃炎)がある。ヴィオックスやセレブレックスはCOX-2(炎症促進物質の生産を促すために腫瘍によってつくられた酵素)の阻害剤であり、がんから身を守る効果が認められたが、心血管疾患の危険性が大きい(P77)

 NFカッパB(炎症性サイトカイン)の生成を阻害するだけで、がん細胞の大半を死に追いやることができる。カテキンレスベラトロールのほか同じ働きをする多くの分子が食物の中に含まれている(P78~79)

 精神的ストレス(怒る、パニック)で体内に大量のノルアドレナリンコルチゾールが分泌され、ともに炎症性因子を刺激する(P79)

(血管新生仮説):ジュダー・フォークマン(米海軍医官)(P86~87)

1 微小腫瘍は、栄養を得るための新しい血管網をつくらない限り、危険ながんへと進行することはない

2 がん細胞は、血管新生因子を放出して、新しい分枝血管をつくる

3 転移した腫瘍の細胞は、その細胞自身が新しい血管を呼び寄せる力がない限り危険ではない

4 メインの腫瘍は、転移を引き起こすが、転移した細胞の血管新生を妨げる化学物質を放出する。なので、メインの腫瘍が手術で取り除かれると、ときには転移した腫瘍が急激に成長することがある

 フォークマンは、血管新生抑制因子を投与することで、マウスに移植された3種類のヒトのがんをはじめ数種類のがんの成長を止めることを証明した。血管新生抑制因子は急激に成長する血管にしか作用せず、もともとある血管には影響を及ぼさない(P89~90)

 現在、血管新生抑制因子に類似した多くの薬剤(アバスチンなど)が開発されているが、単独で服用しても大した効果はなく、副作用もある(P90~91)

 自然の抗血管新生食品として、食用キノコ、緑茶、いくつかのスパイス、食用ハーブがある(P91)

 

【マイストーリー3】

 私たちは、具体的な成果ばかりを求める西洋的な価値観を信奉するあまり、危険や不安に直面したときに、誰かにそばにいてもらいたいという本能的欲求を忘れてしまっていることが多い。信頼のおけるやさしい人がいつもそばにいてくれる。身近な人々が私たちのために行うことの中で、これほど美しい行為はないのだが、その価値に気づいている人は少ない(P94)

 私は、まず、3人の弟に一人ずつ会って、自分ががんになった話してみた。幸いなことに弟たちの反応は、シンプルで、しかも的を射たものだった。言葉を選びながら、苦しい胸の内を吐露し、私が長生きしてくれることがどれだけうれしいことか、またこんな辛い試練の中にいる私をどれほど支えていきたいか、を語ってくれた。それこそ、私に必要な言葉だった(P97)

 

【Ⅲ】

 先進国では、全体的に、1940年以来がんの発症率が上昇傾向にある。近年のがんの増加は高齢化だけでは説明できない。1970年代以降、小児がんと青少年のがんが劇的に増加している(P103~104)

 乳がん前立腺がん、結腸がんは先進国、とりわけ欧米諸国の病気だ、欧米諸国におけるこれらのがんの発症率は、中国、韓国の9倍、日本の4倍に達している。しかしこれは遺伝子の問題ではない。サンフランシスコやハワイに棲んでいる中国人や日本人の発症率は欧米人とほとんど変わらない(P107~108)

第二次世界大戦後に欧米諸国の環境で急変したこと)(P110)

①食事における大量の精製糖の使用

②農業・畜産業の変化による食物の変化

③様々な化学物質による汚染

(精製糖の使用)(P111)

・精白糖などの精製糖

・精白小麦粉(精白パン、精白パスタ等)、精白米

・植物油(大豆油、ひまわり油、トウモロコシ油、トランス脂肪酸) 

 精白糖や精白小麦粉を食べると、血糖値が急速に上昇し、そのブドウ糖を細胞に吸収させるためインスリンが分泌される。それとともにIGFインスリン様成長因子)が分泌される。IGFは、細胞の成長を促進する。またインスリンIGFは、炎症性因子刺激する。炎症性因子も腫瘍の成長を促す作用がある(P113)

 オーストラリアで、欧米の青少年を対象に3カ月間、砂糖と精白小麦粉を制限した食事を摂らせたところ、数週間後には、インスリンIGF血中濃度が減少し、ニキビも消えた(P115)

 乳がんの腫瘍を植え付けたネズミにさまざまなGI値の食物を与えたところ、2か月後、高GI値餌群の20匹のネズミのうち2/3が死んだ。低GI値群では1匹が死んだ。糖尿病患者はがんになる確率が高い(P115~116)

 アガベシロップはリュウゼツランの樹液から抽出した甘味料だが、GI値はハチミツの1/4~1/5である(P117)

(低GI値食品群)(P118) ⇔は高GI値

アガベシロップ、キシリトール、カカオ分70%以上のチョコレート

・全粒穀物のパン、玄米、キノア、燕麦、そば

・サツマイモ、ヤマイモ、レンズ豆、エンドウ豆、インゲン豆⇔ジャガイモ

オートミールオールブラン

・自然の果物、ブルーベリー⇔ジャム、シロップ漬け果物

・レモン水、緑茶、赤ワイン⇔ジュース、炭酸飲料、アルコール

・ニンニク、タマネギ、エシャロット

 乳幼児の肥満は、1950年以降、ミルクの質が変わったことによる(ジェラール・アイヨーによる仮説)その質の変化が、脂肪組織及びがん細胞の成長に影響を与えている(著者の主張)(P121)

 春の草はオメガ3脂肪酸が多く含まれているので、牧草で育てられた牛の乳にはオメガ3脂肪酸が濃縮されている。バター、クリーム、ヨーグルト、チーズも同様。1950年代から、バタリー飼育(牛舎などでの飼育)が一般的になると、家畜の飼料はトウモロコシ、大豆、小麦が主流になった。これらの飼料には、オメガ6を豊富に含んでいる。オメガ6は、脂肪を蓄え、細胞を硬くし、血液を凝固させ、外部からの攻撃に対し、炎症性の反応を引き起こす。オメガ6の引き起こす炎症性の反応が、発がんや体内のがん成長に関わる。トウモロコシで育った鶏が産んだ卵は、オメガ6をオメガ3の20倍含んでいる(アルテミス・シモポーロス米国立衛生研究所長)(P121~123)

 環境汚染物質の多くは内分泌作用攪乱物質(環境ホルモン)である。その構造が人間のホルモンの構造に似ているので、細胞の錠前を開け、細胞を以上に活性化させることができる。エストロゲンに似ているものが多い(外因性エストロゲン)これらは、一部の除草剤や殺虫剤を通して家畜の脂肪に溶け込み、蓄積される。またプラスティック、化粧品等に含まれていることがある。野菜は、動物性食品の1/100しか発がん物質を含まない(P139~141)

デトックス対象食品)(P149)

①精製糖、精白小麦粉:インスリンIGF分泌促進により炎症、細胞の成長を刺激

②動物性脂肪、マーガリン等トランス脂肪酸:オメガ6の過剰摂取→炎症性体質

③動物性脂肪に含まれた環境ホルモン:細胞の異常活性化

 

【マイストーリー4】

 最初の手術の数か月後に再発。それまでの食事は、チリコンカルネ(ひき肉、豆、をチリソースで煮たもの)、ベーグル、コカ・コーラ(P158)

 再手術の後、1年間、化学療法を受けることにし、自分の体質改善に努めることにした(P163)

 

【Ⅳ】

 エピガロカテキンカテキンガレード(EGCG)は、がん細胞が隣接組織へ侵入したり、新たな血管を形成する働きを抑制する。EGCGは、茶葉を発酵させると破壊されるので、紅茶には含まれないが、緑茶には豊富に含まれる。ECGCは、がん細胞の侵入に関する受容体や新生血管のスイッチを塞ぐ。EGCGががん細胞の成長を抑制するとする研究がある(リシャール・ペリヴォー(生化学者、カナダのがん生物学専門の分子医学研究所長)の研究チーム)(P179)

 大豆の植物エストロゲンは、エストロゲンによる過剰刺激を大幅に抑え、その結果エストロゲン依存性の腫瘍の成長を抑える(P181)

 クルクミンは、発ガン性化学物質による様々な腫瘍の出現を防ぐ。ターメリック(ウコン)の抗炎症作用を引き起こす主成分はクルクミンである。2005年タキソール(抗がん剤)が効かない人の乳がん腫瘍をマウスに移植した実験では、クルクミンの摂取量を増やすと転移の進行が抑えられた(P184)

 ターメリックは単独摂取では吸収率が悪く効果を得にくいが、黒コショウを混ぜると吸収率が2千倍高まる(P185)

 マイタケ、シイタケ、ヒラタケ、エノキタケに含まれるレンチンやその他多糖類が免疫系を活性化する(P187)

 悪性の発ガン物資を投与したマウスにラズベリーやイチゴを投与すると、そこに含まれるエラグ酸が腫瘍の成長を著しく遅らせる。エラグ酸クルミにも含まれる)は、血管内皮増殖因子(VEGF)と血小板由来増殖因子(PDGF)に対して効果がある(P189)

 ミント、タイム、マジョラム、オレガノ、バジル、ローズマリーは、エッセンシャルオイルの中にテルペン類を豊富に含み、テルペン類は多くの腫瘍に作用し、がん細胞の増殖を抑制、もしくは死滅させる。カルノソール(テルペン類の一種)は、がん細胞が隣接組織を侵食するのを抑制する(P191~192)

 アピゲニン(パセリ、セロリに含まれる)は、血管新生抑制に効果がある(P192)

 雌のマウスにDMBA(ジメチルベンゾアントラセン:発がん物質)に慢性的に触れさせておくと数週間後には100%乳がんを発症する。しかし、セレン、マグネシウム、ビタミンC、ビタミンAのうち1種類を餌に混ぜておくと、がんを発症するマウスは半減した。同時に2種類与えると1/3に、3種類では1/5、4種類すべてを与えると1/10に減った(P194~195)

①セレン:有機栽培の野菜、穀物、魚、甲殻類

マグネシウム:ホウレンソウ、クルミ、ヘーゼルナッツ、アーモンド、全粒穀物

③ビタミンC:大半の果物、野菜、特に柑橘類、緑色野菜、キャベツ、イチゴ

④ビタミンA:鮮やかな色の野菜、果物、卵

 遺伝的な欠陥から免疫系に欠損があり、毛がない裸のマウス(ヌードマウス)の皮下にヒトの肺がん細胞を注入すると、数日後には巨大な腫瘍に成長する。このマウスに特殊なスープを与えると、腫瘍が現れるまでに長い時間がかかり、腫瘍の成長はゆっくりだった(P196~197)

(スープの中身)

芽キャベツブロッコリー、ニンニク、青ネギ、ターメリック、黒コショウ、クランベリー、グレープフルーツ、緑茶

 「食物でがんの再発を防ぐことができると考えられるような研究成果はほとんどない」の意味は、「二重盲検試験により人体に治療効果が証明された」研究成果がないことを指している。疫学やマウスに関する研究では足りない。しかし、「食物」には特許が与えられないため、これらの食物を対象とする二重盲検試験に巨額の費用をかけることはできない。よって、「食物の抗がん効果の有効性に関する」研究成果は存在しえない(P201~203)

(抗がん効果のある食物)(P209~P228)

緑茶、ターメリック(ウコン)、ショウガ、アブラナ科野菜(キャベツ、芽キャベツ、チンゲン菜、白菜、ブロッコリー、カリフラワー)、ネギ類(ニンニク、タマネギ、リーキ、エシャロット、チャイブ)、カロチノイドを豊富に含む野菜、果物(ニンジン、ヤマノイモ、サツマイモ、スカッシュ、カボチャ、栗カボチャ、トマト、カキ、アンズ、ビー)、トマト、大豆、キノコ、ハーブ(ローズマリー、タイム、オレガノ、バジル、ミント)、海藻、小魚(オメガ3脂肪酸)、プロバイオティクス、ベリー類、柑橘類、ザクロ、赤ワイン、ブラックチョコレート(カカオ分70%以上。1日20g以内)

 

【Ⅴ】

 ストレスそれ自体ががんの成長を促すわけではない。無力感を継続的に感じることが、がんに対する体の反応に悪影響を及ぼす(P241~242)

 親しい人に囲まれ、支えられていると感じ、気力を保っている患者は、無力感や孤独を感じている患者に比べて、より闘志にあふれたNK細胞を持っていた(P251)

 EMDR療法:Eye Movement Desensitization 眼球運動を使うPTSD治療法(P263)

 シャーマンもEMDR療法も、がんを治すことはできない。だがときには、無力感を解消し、生きようという生命の炎を燃え上がらせることはできる(P269)

 乳がん前立腺がんの治療を受けながら、マインドフルネス瞑想法を実勢している患者は、白血球(NK細胞を含む)が正常に戻った(P285~286)

 

【マイストーリー5】(略)

 

【Ⅵ】

 1980年代に、未熟児を蘇生させるための保育器に入れられた赤ん坊の生命力を引き出すには、その体に触れることが重要であることが明らかになった。ラットをっ使った実験では、生まれてすぐ母親から引き離されたラットの体内では、成長に必要な酵素をつくり出す遺伝子が不活性化し、体全体を一種の冬眠状態にしていた。反対に、母親ラットが体をたっぷり舐めてやるのをまねて、濡らした筆でラットの赤ん坊の背をなでると、すぐに酵素がつくられ、赤ん坊の体が成長し始めた。心からの愛情や好意をもって行うマッサージのように、心のこもった物理的な触れ合いは、大人でも、細胞の中心で生命力を刺激することができる(P316~317)

 乳がんの患者に週に3回30分ずつマッサージを行うと、ストレスホルモンの分泌が抑えられ、NK細胞の数値が上昇した(ティファニー・フィールド博士とソール・シャンバーグ博士の共同研究)(P317)

 乳がんの研究によると、週に6回、普通の速さで30分間歩けば、再発を防ぐ大きな効果がある(P328)

 

【マイストーリー6】(略)

 

【Ⅶ】

 病状が急変したときは、適切な処置や薬で治療を行う西洋医療が効果を発揮する。しかし慢性疾患では西洋医学の限界が明らかになる。それには体質を変える必要がある。その手段として、食生活の見直し、精神状態の改善、運動による体の強化があげられる。がんは慢性病の代表であり、ここでも体質を根本的に改善することが必要となる(P346~348)