「心の病」がみえる脳科学講義 加藤忠史著 2025年11月翔泳社刊

(目次)

はじめに

第1講 精神疾患の脳科学(総論) 心が病気になるんじゃない。原因は脳にある

 脳科学とは

 精神疾患の研究方法

 精神疾患研究の現在地

 精神医学の歴史

第2講 脳科学の基本と発達障害~脳が変化する時

 脳の特徴

 脳の発達と可塑性

 発達障害

第3講 精神科診断学と統合失調症~診断の光と影、自我の境界に迫る

 精神医学的診断とは

 精神医学的診察と精神症候学

 統合失調症

 統合失調症の診断と治療

 統合失調症の脳科学

第4講 うつ病に見る精神医学の課題~シナプスの変化と回復のしくみ

 うつ病とは

 「うつ」をめぐる混乱

 さまざまなうつ病

 うつ病の治療

 うつ病の脳科学

第5講 双極症からひもとく脳科学の研究戦略~基礎研究と臨床現場の懸け橋

 双極症とは

 双極症の診断

 双極症の治療

 双極症の脳科学

第6講 不安スペクトラムにみる心理学と脳科学のアプローチの違い~心と脳をつなぐ試み

 神経症とは

 不安スペクトラム

 心理学と脳科学

おわりに

 

【第1講】

 個々の遺伝子の影響が小さくても、何千もの遺伝的要素を統合して、「病気のかかりやすさ」を数値化する(ポリジェニック・リスク・スコア)(P22~23)

 神経性やせ症は、脅迫症に近い遺伝的体質を持っており、糖尿病とは遺伝的に逆相関がある:糖尿病は少しの食事で体重が増えやすい⇔神経性やせ症は少し食べないだけで痩せやすい(P23)

◎これ、逆相関なのか?

 波長の短い光(高エネルギー光)は組織内で散乱・吸収されやすく、深部まで届かない。近赤外線は、波長が長く組織を透過しやすい。パルスオキシメーターは、指先に近赤外線を当てて、血中酸素飽和度や脈拍を測定する。近赤外線を組織の内部で焦点を結ぶように照射すると、組織内の局所で光子密度が高まり、あらかじめ短波長光で蛍光を発するタンパク質を発現させた神経細胞を励起できる(2光子励起現象⇒2光子顕微鏡⇒生きた動物の脳深部を直接観察可能(P27)

 オプトジェネティクス(optogenetics光遺伝学)では、マウス等の脳内にある特定の神経細胞(前頭前野のニューロンの中で扁桃体に投射しているもの等)を狙い撃ちする

⇒ウイルスベクター(遺伝子の運び屋)を使って、その神経回路だけにチャネルロドプシン(光感受性タンパク質:光が当たるとNa、Cl等のイオンを通す性質を持つたんぱく質)を発現させる

⇒チャネルロドプシンを発現させた神経細胞に光ファイバーを通して光を当てて、神経細胞を意図的に興奮or抑制できる

⇒特定の神経細胞を操作したときの動物の行動の変化を直接調べる(P28~29)

 シナプティックオプトジェネティクスではでは、新しく結合させたたんぱく質(新しいスパインに集まる)を利用

⇒新しいスパインの周辺に光を当てる

⇒学習によって形成されたばかりのシナプスだけを壊す

⇒学習の基盤はシナプス可塑性にある(仮説)を直接的に証明(マウス実験)(P30~31)

 iPS細胞をシャーレにまいて神経細胞に分化させると、二次元的(平面的)な神経組織になるが、これをゲルに埋め込んだり、培養環境を揺らしたりし三次元的(立体的)に配置し、あらゆる方向に神経突起を伸ばせるようにする(脳オルガノイド)(P33)

 統合失調症の患者のiPS細胞からつくったグリア細胞をマウスの脳に移植すると、社会行動の変化がみられる⇒グリア細胞も統合失調症の発症に関与している(P33)

 自閉症スペクトラム症で多くの変異のみられる遺伝子群は、バルブロ酸投与で発現が低下する遺伝子群と似ている(P35)

 計量論理的精神医学は、脳の情報処理プロセスを数理モデルとして表現し、脳の動作原理を探求する(P36)

 ディープラーニングの弱点:人間の脳に比べて膨大な学習量を必要とすること

⇔人は1回の経験で学習できる(innate behavior)

⇒本能の本質は、進化の過程で獲得し、ゲノムに刻まれた能力

⇒人間には情動(生まれつきの感覚)があるが、AIには情動がない(P36~37)

◎本能と情動を同義に使っているのか?情動を遺伝子に基づく感覚と定義すると、AIに情動を組み込むことは無理に見える

 

【第2講】

(脳の特徴)

①部位ごとに違う動き:機能局在

②多彩な細胞の共演

③神経細胞は電気で興奮する

④シナプスは科学でつなぐ

 脳幹はモノアミン神経系(セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリン、ヒスタミン)を司り、大脳皮質全体を調節する(P60)

 モノアミン神経系は、軸索から拡散して広域を調節する拡散性伝達(ボリュームトランスミッション)を担う(P61)

 手綱核(たづなかく)が働くと、ドパミン神経が抑制されドパミンが出にくくなる。うつ病では手綱核が過剰に興奮し、 快楽を感じられなくなる(P61)

(多彩な細胞)(P62~63)

神経細胞 興奮性

     抑制性

グリア細胞

 アストロサイト

 ⇒血管の周囲を覆い、物質透過性を調整+シナプスを取り巻き働きを調整

 ミクログリア

 ⇒脳の免疫細胞で異物取込み処理+シナプスを食べて神経回路を調整

 オリゴデンドロサイト

 ⇒髄鞘を作り伝達速度を大幅向上

血管をつくる細胞 

 ヒト細胞アトラス(Human Cell Atlas)プロジェクト:2023年

⇒3人の脳から100か所の組織(1か所につき数千個の細胞のRNA)を採取、シングルセルRNAシーケンス技術で細胞(細胞核)ごとのRNA発現を解析

⇒人の脳には、大分類で31種類、中分類461種類、3313種類の細胞が存在(P63)

 細胞の膜は、内と外でイオンを汲み出し、取込みで電位差をつくる(分極)

⇒細胞膜のチャネル(イオンを通す)が開くとイオンが一気に流れ込み電位差が一瞬で失われる(脱分極:神経細胞が興奮する:電位差が失われること)(P65)

 他の神経細胞からの入力が樹状突起に届くと、イオンが少しずつ細胞内に入り、それが重なることで電位差が徐々に減っていき、閾値を超えると一気に脱分極が起こり、活動電位(インパルス)が発生する(P65)

 1つの神経細胞が興奮するには、多数の神経細胞からの入力が必要で、それを統合して複雑な計算を行うのが脳のしくみ(P65)

 神経細胞の中は電気のやりとりだが、次の細胞に渡すときは、化学信号(P66)

 神経細胞の端には神経伝達物質を詰めた袋があり、これが放出されて次の細胞の受容体に作用。軸索先端のプレシナプスから樹状突起の棘(スパイン)にあるポストシナプスへと信号が渡される。この構造全体がシナプス(P67)

 神経細胞=軸索1本+樹状突起多数(P67)

 神経伝達物質:アミノ酸、アミン、ペプチド

 ⇒興奮性:グルタミン酸⇔抑制性:GABA(ギャバ):脳の基本的計算を支える(P67)

 ヒトの脳の特徴は、生まれた後も経験に応じて、神経回路が繋ぎ変えられること

⇒多くの領域は、大人になってからも学習や記憶によって変化を続ける(P69~70)

 ネオテニー(幼形成熟):未成熟の姿を残したまま性成熟に達する(ヒトの特徴)

⇒SRGAP2遺伝子が340万年前と240万年前に増加、シナプスの成熟を抑える働きを獲得⇒人の脳は成熟が遅れて、未熟なまま保たれる仕組みが備わった

⇒皮質の表面積が拡大し、多くの経験を糧に脳を柔軟に変えていく力を獲得(P70)

 グルタミン酸がシナプスに到達すると、AMPA受容体が働き、Na⁺が流れ込む

⇒刺激が繰り返され、相手の細胞が脱分極しているときは、NMDA受容体が開き、Ca⁺が細胞内に入る

⇒Caの流入は、この刺激は重要と細胞に知らせる合図となる

⇒スパインが大きくなり、AMPA受容体が集まってシナプスの働きが強化

⇒NMDA受容体が、長期増強(LTP)を引き起こす(P71)

 脳が行う学習や記憶は、秒単位~分・時間・日単位で積み重なっていく(P73)

⇒分子レベルの変化~シナプスの形の変化~神経細胞の突起の伸長、新神経細胞形成等あらゆる変化が記憶、学習に関わる(P73)

 ジャグリングを一生懸命練習すると、手の動きを司る領域でなく、動く球を目で追う視覚に関わる領域が大きくなった(P73)

 初めて出産したマウスは、子どもを見て触れていくうちに、視床下部の内側視索前野でBDNF(脳由来神経栄養因子)が働き、脳が少しずつ変わっていくことで子育てができるようになっていく(P74)

(発達障害)(P75~76)

①自閉スペクトラム症(ASD):1歳6か月検診、3歳児検診で特性チェック

②注意欠如多動性(ADHD):小学校低学年で目立つ。精神刺激薬が有効

③学習障害(LD)

 ASDの中心的症状は、対人相互作用やコミュニケーションの障害。特に対人認知困難

⇒他の人も自分と同じように相手を見ているという基本的理解ができていない

⇒常同性や興味の範囲の狭さ

 自閉症の本質を、社会的相互作用の質的障害+コミュニケーションの質的障害+想像力の障害と行動・興味の限定性に整理、早期幼児自閉症とアスペルガー症候群を1つの連続体としてとらえる(ローナ・ウイングの仮説)(P79)

 ASDは、遺伝的要因が大きい:発症率が一卵性双生児>二卵性双生児=兄弟と同程度

⇒ASDでは、てんかん性の異常脳波が多くみられ、脳機能そのものに異常が及ぶ(P79)

⇒染色体異常、コピー数変異(染色体の小変化) が発症に影響

⇒デノボ変異(子どもに生じた変異)が10~15%

⇒高齢父親でデノボ変異増加(P80)

 環境要因:妊娠中にバルブロ酸(抗てんかん薬)に曝露でASD発症リスク増加(P80)

 自閉症では、生後6カ月~5歳で、脳が大きい(P80)

 軸索の先端からNLXN1(ニューレキシン1)が、樹状突起のスパインからNLGN3or4(ニューロリギン3or4)が突き出し、両者が結合することで神経細胞同士を安定的につなぎとめている(P84)

 ASDに関連する102個の遺伝子を特定

①遺伝子発現の制御に関わる遺伝子

②神経細胞間のコミュニケーション、特にシナプス機能に関わる遺伝子(P84)

 ヒストンの一部がメチル化されることで遺伝子の発現に対する指令が出る。KMT2Cは、ヒストンのメチル化を担う酵素を作る遺伝子で、ASDの原因遺伝子の1つだ(P85)

 自閉症モデルマウスでは、シナプスができやすく消えやすい。シナプスを安定させる仕組みが損なわれる⇒脳のネットワークが不安定になり、ASDの症状が出てくる(P86)

 KMT2Cたんぱく質は、ヒストンのメチル化に関わっているが、これが制御している遺伝子と発現が増えている遺伝子との間には相関関係がなく、発現が減っている遺伝子とは大きな重なりがある。KMT2Cは、転写、翻訳レベルで遺伝子発現制御に関わる遺伝子群に作用し、それを介して間接的にシナプス関連の遺伝子に影響している(P87)

 変化の出発点となる原因細胞は:射状グリアの段階で大きな変化が起きている(P88)

 バフィデムスタット(vafidemstat)(ヒストンのメチル化を改善させる化合物)投与で、変異マウスで社会行動の異常が改善(他のマウスに関心を示さなかったのが、興味を持って近づくようになった)(P88)

 注意欠如多動(Attention Deficit Hyperactivity Disortder)症は7歳未満までに症状が現れる。①不注意(大人まで残る)②多動③衝動性(②③は小学生までに改善)(P91~92)

 ADHDに有効な薬は、ドパミン、ノルアドレナリンに作用する薬(P94)

(ADHDの病態仮説)(P95~96)
①実行機能の障害:前頭葉機能低下⇒計画的行動、注意持続の働き低下

②報酬系の障害:ドパミン機能の低下

③小脳の障害:時間感覚の障害

④デフォルトモードネットワーク(DMN:安静時に活動が高まる脳領域)の機能低下

 認知症の原因は、本来は立体構造を持って働いているタンパク質が、崩れて線維状に固まって機能せず、周囲の正常タンパク質を巻き込んで悪化していく状態(P99)

 

【第3講】

 診断とは、治療や理解を深めるための道具。診断の目的は、治療方針を決め、経過や予後を見通すこと。病状の説明、医療スタッフの共通言語として機能(P103)

 診断基準:①DSM、②ICD(P104)

 診断の出発点は、①面接、②観察(P110)

 錯覚:対象を誤って知覚⇔幻覚:対象なき知覚⇒幻聴、幻視、幻臭等(P114~115)

 統合失調症は、思春期~青年期に多発。陰性症状(意欲低下、感情の乏しさ等)が続く中で、陽性症状(幻覚、妄想)が発生。治療によっても、陰性症状が残ることも少なくない(P117)

 自我の障害:シュナイダーの1級症状:幻聴、作為体験(させられ体験)、思考奪取(P122~123)

 陰性症状:その部位が持っていた機能が失われることにより発生

 陽性症状:その部位の機能が失われることで、他の脳部位から出てくる普通は存在しない症状の発生(P124~125)

 陰性症状と陽性症状が同時に出る統合失調症は、自我の機能が失われている(P125)

 統合失調症の治療:①急性期:抗精神病薬、②寛解、③再発予防(P131)

 ドパミンは刺激のうちどれが重要(セイリアンスsalience)かを選ぶプロセスに関与⇒過剰放出で、全ての刺激が重要に感じられる(P137)

アメリカの新右翼 井上弘貴著 2025年6月新潮社刊

(目次)

まえがき アメリカは体制変革(レジーム・チェンジ)の只中か?

第1章 左右からの急進主義に揺れるアメリカ

第2章 1619年か1776年か、それとも

第3章 ポストリベラル右派の躍進

第4章 テクノロジーと反中主義の背後にあるもの

第5章 大いなる置き換えとグローバル化する文化戦争

第6章 右派進歩主義の台頭?

 

【まえがき】

 仮にトランプが2期目の大統領の座を降りたとしても、より広い意味での政治的成果を残す可能性はある。アメリカの価値観に大きな影響を及ぼすような人々や思想の台頭をもたらし、それによって社会や政治の中長期的な変容・変質が促される可能性だ。本書はこれを論じる(P6)

 現在のアメリカの新しい右派は、従来の右派と異なり、アメリカの思想的な基底である古典的自由主義にも懐疑の目を向け、よりナショナリズムを重視し、キリスト教的価値を重んじ、テクノロジーを受け入れ、極右との親和性を強めている(P7)

 

【第1章】

 保守とリベラルが妥協のない形で文化的な争点をめぐって対立し合う状態(文化戦争)によって、アメリカ社会の基本的原理が揺さぶられるようになったのは、2000年代後半以降、特に2010年代のオバマ政権から第一次トランプ政権にかけてだった(P22)

 2010年代半ばにかけて、同性婚が全米規模で合法化されるなど、オバマ政権下のアメリカ社会は、更なる平等化の推進へと歩を進めた。2012年に起きたトレイボン・マーティン事件の無罪判決をきっかけとして、ブラック・ライヴズ・マター運動(システミック・レイシズム=人種をめぐる不平等はいまだ政策や社会の仕組みの中で機能しているという主張による告発)が立ち上がり、2014年~15年に、全米各地で激しい人種暴動が勃発した。2017年Me Too運動、2020年ジョージ・フロイドの事件(P22~23)

 右派は、2017年8月極右の集会を開催、2021年1月連邦議会事件を起こしたが、2010年代より前から既存の共和党や保守思想の主流派に反旗を翻していた。右の急進主義を束ねるブランドになったのはオルトライト(Alt-right)だった(P23~24)

 オルトライトは、ポリティカル・コレクトネスや多文化主義によって、白人のアイデンティティが危機に瀕していると考える立場だった(P24)

◎ポリティカル・コレクトネス(通称:ポリコレ、PC)とは、人種、性別、宗教、障がい、性的指向などの違いに基づく偏見や差別をなくし、特定グループに不快感や不利益を与えない中立的な表現や政策を目指す考え方  byGemini

 2016年秋、オルトライトは、ネオナチや反ユダヤ主義的な極右と、それらに批判的な人々(軽めのオルトライトAlt-lite)に分裂した(P24)

 反体制右派は、ネオコンやグローバリズムを後押しする右派エリートへの不平不満を原動力にしている(P25)

 右派傍流としての白人至上主義やネオナチの閉鎖的なネット空間だけなら大きな動きにはならない。2000年代半ば、様々な集団、潮流を終結させた若きカリスマはリチャード・スペンサーだ(P26)

 デューク大学ラクロス事件は、2006年3月同大男子ラクロス部の白人男子学生が黒人ストリッパー女性(別の大学)をレイプしたとして訴追。DNA検査により訴えが虚偽との証拠を得ていたのに、それを無視した地元ダーラムの地区検事は2007年1月辞職。事件の発生当初、デューク大学教員有志は、大学の学生新聞にラクロス部部員を批判する意見広告を掲載し、事件の背後に性差別、人種差別があると非難。虚偽だったことがわかり激しい批判を浴びた。リベラルなデュークの教員たちの欺瞞を告発する急先鋒がデューク大学博士課程で院生だったスペンサーとスティーブン・ミラー(P27~28)

 スペンサーは、2008~2009年に、タキズ・マガジンの編集長を務め、白人至上主義者を起用した。スペンサーという看板とオルトライトという旗印は、様々な人々や団体を惹きつけた。加えて2008年のリーマンショックは、アメリカの若者に深刻な影響(教育ローンの返済等)をもたらし、こうした境遇は若者たちの自尊心を傷つけた(P29~30)

 トレイボン・マーティン事件は、2012年2月26日、オーランド(フロリダ州)で発生、ブラック・ライヴズ・マター運動が起きるきっかけとなった。事件は、ゲイティッド・コミュニティで起きた。トレイボン・マーティン(黒人少年)は、同住宅地内に住む父親のもとに遊びに来ていた。その住宅地には、防犯ボランティアをしている男性(ジマーマン)が住んでいた。事件発生前、周辺で住居侵入、窃盗が複数起きており、彼は苛立っていた。彼は雨の日の夕方にパーカーのフードをかぶった黒人(トレイボン)を目撃、小競り合いの末少年を射殺。フードをかぶって顔を隠した黒人男性は犯罪者とのイメージがある。ジマーマンは拘束後釈放された。2013年、無罪判決(正当防衛法:自宅or私有地に不審者が侵入した場合、致死性武器の使用可)⇒BlackLivesMatterのハッシュタグでアクティビスト女性たちが意思表明、全米に拡散(P32~33)

 他の事件を含めオバマ政権下の暴動は、アメリカの繁栄から取り残されていると感じている黒人たちの怒りや不満は、警察の横暴(ポリス・ブルタリティ)をきっかけに容易く暴動にエスカレートした(P35)

 こうした動きに反発する白人至上主義者、極右集団の動きも活発化し、2015年6月17日、チャールストン協会銃撃事件が発生した。チャールストン(サウスカロライナ州)黒人教会で行われていた学習会に白人青年ディラン・ルーフが飛び入り参入し、銃を発砲、著名黒人指導者9名が死亡(P36)

 トランプが2016年の大統領選挙に向けた出馬表明を行ったのは、2015年6月16日、泡沫候補と見られ、アウトサイダーだったが、選挙戦では優位に立った。既存の共和党の政治家は、寝取られ保守(カクサーヴァティヴ:白人妻を黒人男に寝取られる白人男)と揶揄されていた(P39~40)

 2016年11月、トランプが大統領に当選すると、反トランプの共和党関係者、保守の有力知識人は苦しい立場に陥った。結果、従来の右派の中にあった主流による傍流の統制という仕掛けが崩れ始めた(P40~41)

 2016年11月19日、ハイルゲート事件(オルトライトの集会でナチス式敬礼:ネオナチ的要素顕在化)発生⇒オルトライトが分裂⇒Alt-lite⇔白人至上主義へ純化(P41~42)

 2017年8月、ユナイト・ザ・ライト・ラリー(極右集会)で暴動。極右団体への世論の非難⇒関係者が混乱⇒オルトライトの終焉(P43~44)

 2020年以降、暴力的な犯罪に対する不安は高まり、アフリカ系やヒスパニック系の間でも年長者を中心に、地域の警察力の拡充を求める声が高まった。2022年の中間選挙では、リベラルが優勢なニューヨーク州でも、複数選挙区で共和党が勝利した。コロナ下での犯罪の増加に対する不安が、超党派での課題解決に積極的な穏健な共和党候補者を選ばせた(P46)

 

【第2章】

(批判的人種理論)

 デリック・ベルが、1980年「ブラウン対教育委員会事件(1954年連邦最高裁判決)と利益集約のジレンマ」を発表。判決から25年近く経過した現在でも、黒人の子どもたちは劣位に置かれたままで、裁判所は必要な社会変革をも取らすのに必要な能力を欠いていると指摘。ブラウン判決は中立を旨とする原理に沿って出されようとしたものではなく、白人と黒人の集団的利害の力関係、特に白人の利益の貫徹という観点から生み出された産物と主張(P50~51)

 修正第14条は、中産階級or上流階級の白人たちの優越的社会的地位を脅かす形では人種的平等をもたらす法的救済をしない⇒人種の平等を達成しようとする黒人たちの利益は、それが白人の利益に集約される場合においてのみ受け入れられる(利益集約原理)①台頭しつつある第三世界の人々の心と信頼を勝ち取り、共産主義諸国との戦いにおいて有利な立場を築くという白人の利益

②第二次世界大戦の間にアメリカが諸外国に対して打ち出した自由と平等の指針が、国内においても同じく適用されることを示すことで、黒人たちに安心感をもたらす

③人種隔離は、南部における更なる工業化に取って障壁だ。判決による平等の推進は、黒人たちを労働者として新たな従属関係に引き込むための呼び水に過ぎない(P51~53)

 ベルにとって、法律とは人種によってカテゴリー分けされた利益集団に従属している政治的なものであり、その道徳的な訴えは人種をめぐる改革をもたらすうえで全く不十分なものだった(P53)

◎憲法も法律も、ある時点における政治的決定だ。その決定はそれを主導した集団の利益に即したものではある

 ベルは、1980年論文で、現在の学校の改善に加えて、黒人生徒のみからなるモデル学校の新設or既存のそのような学校の維持だった。ベルは、黒人コミュニティの文化的強さを活用できるそのような学校形態のほうが教育現場での効果ある改善という点で、より望ましい方向と考えた(P53)

(1619プロジェクト:The 1619 Project)

 1619年は、ヴァージニア植民地に20~30名の黒人が奴隷として連れてこられた年であり、アメリカにおいて1863年の奴隷解放宣言まで続く奴隷制の始まりの年だ(P54~55)

 2019年8月18日付けNYTは、1619プロジェクト特集を組み、アメリカが誕生したのは1776年ではなく1619年だと訴えた。アメリカの本質は、奴隷制を内に抱えながら自由と平等を宣言した欺瞞にあり、抑圧されてきた黒人によってこの欺瞞が克服されてきた過程にあった(P55)

 このような歴史観を否定するためにトランプ政権が立ち上げたのが,1776委員会で、アメリカの本質は、万人に平等に創造されていることを掲げた独立宣言にあり、この宣言に込められた自然権が喪失していく危機の過程がアメリカの歴史と主張(P55)

 ハンナ=ジョンズがアメリカ史の批判的理解という点で強調しているのは、ジョージ・ワシントン等の建国の父祖たちは、奴隷所有者でもあったという事実だ(P60)

 ハンナの歴史的理解は、アメリカの植民地が英国からの独立を求めた主たる理由の1つは、奴隷制廃止の機運が高まっていた英国から自分たちを切り離すことによって、奴隷制を守りたかったからとなる。議論の余地のある解釈だが、初期の12人の大統領のうち10人が奴隷所有者だった。アメリカは民主主義(民衆の支配)ではなく、奴隷所有者による支配に基礎をおいていた。空疎なアメリカの民主主義を実質的なものにしてきた人々が黒人だとの主張(P60)

 サマーセット事件に代表される18C後半の英国、北米植民地での奴隷解放の動きは事実だが、西インド諸島の英国の植民地では奴隷制が維持された(P65)

 

【第3章】

 1955年、ウィリアム・F・バックリー・ジュニア等は、右派主流の座を獲得し、オールドライトたちを継承して、リバタリアニズム(個人の自由と権利を最優先)の立場を守り、個人を超えた道徳秩序の存在を信じ、強固な反共主義者でもあった(P75~76)

 第2のニューライトは、1964年のバリー・ゴールドウォーターを共和党の大統領候補とした選挙戦で登場し、1970年代にかけて隆盛を極めた。第1のニューライトの中の道徳主義を強めた潮流だった(P76)

 第3のニューライトは、複数の潮流が競合している(P78~80)

①ナトコン(国民保守主義:national conservatism)

②テック右派

③極右主義

④ポストリベラル右派:アメリカの体制に対する批判。保守は古典的自由主義を含めたリベラリズム全般と手を切るべきとの立場。市場、企業に明確な敵意⇒ハンガリーへの親近感:キリスト教の価値観を擁護

 

【第4章】

 2019年、ピーター・ティールは、グーグルが人工知能の開発でペンタゴンとの契約を打ち切った一方で、中国との関係を深めていることを強く非難した。中国に甘い対応をすることは、米ソ対決の中で米中接近を果たした1970年代以来の冷戦的メンタリティであり、これがソ連崩壊後も続いていることが問題の根本だ(P108)

 ティールの反中主義のは、単なる中国脅威論ではなく、彼の独特なキリスト教理解に根差した世界把握が隠れている(P109)

 ティールによれば、人類の進歩には2つの形がある

①水平的進歩(拡張的進歩):1をnにすること(量的増大):グローバリゼーション

②垂直的進歩:ゼロから1を生み出すこと:テクノロジー  (P110~111)

 ティールは、新しいテクノロジーを生み出すのは、志や考えを共有する少人数からなる集団だと指摘。中国のような官僚機構に批判的。行動を共にする仲間の存在なしにテクノロジーを世に送り出すことはできず、競争に批判的で独占を評価する。スタートアップは、基本的に君主制として組織される(P113~114)

 新規のテクノロジーを規制するグローバルな制度に対するティールの否定的立場は、個人の権利と自由を何よりも重視するリバタリアンの政治的スタンスだ。公海上に人工島による海上都市を建設し、既存の主権国家の影響が及ばない空間を創り出そうという試みは、右であれ左であれ、一定数のリバタリアンが魅力を感じる実践的なヴィジョンだ(P119)

 本当の意味で自由な空間は、既存の世界には残されていない。自由な空間は未知の世界にしかなく、その世界を切り開く手段はテクノロジーだ。ティールに従えば、科学テクノロジーのもたらすユートピアへの不信こそ、ポスト近代化の証であり、この傾向はアポロ計画が頓挫するのと入れ替わる形で1970年代に始まった(P122~126)

 ポスト近代としての無神論的悲観主義から、啓蒙主義の無神論的楽観主義を経て、最終的にティールが最も高い地位を与えるのがユダヤ西洋的楽観主義だ。これが無神論的楽観主義と決定的に異なるのは、人間が混沌と自然を統御することが可能であると信じる点であり、それらを統御しようとする意思自体を重視する点だ(P127)

 

【第5章】

 第3のニューライトの複数の勢力が理想の政治家としてきたのが、ハンガリーのオルバンだ。オルバンは、2022年5月16日の首相就任演説で非ヨーロッパ移民の流入に対する懸念を表明した。ここで大いなるヨーロッパ民の置き換えという表現は、ルノー・カミュの大いなる置き換え(great replacement)を念頭に置いていた(P134~135)

 この大いなる置き換えという言葉は、2010年代末から2020年代にかけて、欧米の白人至上主義者に大きなインスピレーションを与え、各地で大量銃撃事件の引き金となってきた(P136)

 長く共有された歴史や文化を、同じように切望してくれる者たちは、ある人々の輪の中に同じように入ることができる。しかし、自分たちはあくまでも自分たちのままでいると言う人々は、他の人々の輪の中に入ることはできない。彼ら(移民)がしようとしていることは征服であり、元に人々に置き換わろうとしている(カミュの見解)(P139)

 

私たちは意外に近いうちに老いなくなる 吉森保著 2025年11月日経BP刊

(目次)

はじめに

炎症とは何か

01 老化を止めるオートファジー

  遺伝子とDNAをわかりやすく解説

02 身体全体が老化することと細胞が老化することは別

03 「免疫」は、「自分」と「他人」を厳密に区別する

04 皮膚は環境による老化の影響がとくに大きい臓器

05 ハダカデバネズミは、人間にたとえると数百歳生きる

06 老化を遅らせ、寿命をのばすかもしれないNMN

07 100歳以上生きる人とそうでない人の違いを調べている機関がある

08 病気のゲームチェンジャーとなる可能性がある「構造生物学」

09 老化研究に最適なのは「魚」?

10 睡眠が不足すると、老化は加速する

あとがき

 

【はじめに】

 老化研究は、私の感覚では、ここ5~10年くらいの間に、大きな進展がある。老化は、避けられない運命ではなく、回避できるものかもしれない。ハダカデバネズミは、年齢を重ねても死亡率が上昇しない(P4~7)

 

【炎症とは何か】

 炎症は、免疫細胞を呼び寄せて、異物と戦うための信号だ(P27)

 慢性炎症は、目に見える原因がなく、低いレベルで長期間続く炎症。通常は古くなった細胞を除去してくれるはずの免疫が、手が回らず残ってしまっている状態が老化細胞で、これが炎症物質を出し続ける(SASP:細胞老化随伴分泌現象)(P29~30)

 日本の110歳以上の人には、体内の炎症が少ない(P33)

 炎症があることで、人間の体は健康を保てる。理想的には、必要なときだけ炎症が起き、役目を終えたら速やかに収まること(P34~35)

 炎症を抑える食事は、野菜、魚、オリーブオイル(抗炎症作用がある食品)。適度は運動と睡眠が炎症を抑える(P36~37)

 

【01】

(オートファジーの役割) (P38~39)

①代謝回転:細胞内のたんぱく質、小器官を新しいものと入れ替える

②隔離除去:侵入した細菌、ウイルス、壊れたミトコンドリア等の有害物質を除去

③栄養確保:栄養不足、飢餓状態のとき、細胞内の成分を分解してエネルギーを確保

 リソソームは、細胞内の胃腸の働きをする。不要物を分解処理。損傷リソソーム(リソソームに穴が開く)は、中から消化酵素が漏れ出して、周囲の正常な部分を傷つける。損傷リソソームは年齢とともに増加する(P40)

(リソソームの防御システム)(P40~41)

①オートファジーが損傷リソソームを丸ごと除去

②ミクロオートファジー:損傷リソソームを修復

 ミクロオートファジーの機能を抑制すると寿命が短くなる

⇒損傷リソソームの蓄積が老化を引き起こす原因の1つである可能性(P41)

 ルビコン(タンパク質)は、オートファジーの能力を低下させる。多くの生き物の細胞で、加齢とともにルビコンが増加する⇔ルビコン抑制⇒オートファジー活性化⇒動物の寿命延長、加齢に伴う病態改善(P43~47)

 エクソソームは、細胞がつくり出す小さい「情報の入れ物」。ルビコンによってつくられる悪いエクソソームは、「疲れた、もう働けない」という老化を進めるメッセージ、体の炎症を強める物質、他の細胞の働きを弱めるものをつくらせる等の情報を運ぶ(P50~52)

 MondoA(転写因子)は、ルビコンの働きを抑える⇒細胞の老化を遅らせる(P54)

 ルビコンをなくしてオートファジーが下がらないようにしたら、細胞の老化を遅らせることができた(P57)

(オートファジーを高める)(P58~60)

①スペルミジン:納豆、味噌、醤油、チーズ、キノコ類、ウロリチン(ザクロ)、レスベラトロール

②阿波番茶(発酵茶)の濃縮エキス:若返り効果⇒動物実験(線虫)では効果あり 

 オートファジーには、有酸素運動が有効(P62)

 

【02】

 個体老化:身体全体が老化

⇔細胞老化:細胞の老化:細胞分裂が停止し、再び増えない状態(P80~86)

 個体老化の原因の1つはステムセル(幹細胞)の枯渇

⇒ステムセルの老化による分裂能力の低下(P82~84)

 SASPは、老化細胞が炎症物質を分泌する現象。免疫細胞に不要になった老化細胞を死滅させるため分泌(P88)

 老化細胞は、細胞のがん化を防止している可能性がある(P90~91)

 DNAが修復が間に合わないほど傷ついたとき、P16遺伝子が働いて、細胞分裂を停止し、老化細胞になる(P91)

 老化細胞は、過剰な蓄積が問題(P92)

 

【03】

 40代以降、自己免疫疾患が起こりがちなのは、胸腺が老化するからかもしれない。40歳代以降、新たに教育されるT細胞は新生児期の1/100以下。50代以降、自己と非自己の識別機能の低下、混乱が起こりがちになり、自己免疫疾患を誘発する(P106)

 

【04】

 メラニンが過剰に合成され続けると、ターンオーバーで処理できる限界量を超え、結果肌に取り残されるメラニンが蓄積される⇒シミになる(P125)

 ヒアルロン酸は、質量の6000倍の水を蓄える保水機能のあるゼリー状のタンパク質。加齢とともに減少し、75歳の皮膚のヒアルロン酸量は19歳の1/4。皮下注射によるヒアルロン酸注入は、深くなったしわやたるみを目立たなくできるが、半年程度で効果が薄れる。間違って血管に注入すると、塞栓ができてその組織が壊死する(P132~133)

 ボトックス注射は、ボツリヌス菌がつくり出す毒素を使って筋肉の神経の働きを麻痺させるもので、しわが出にくくなる。効果は3~4か月(P134)

 

【05】

 ハダカデバネズミは、30年生きる。細胞中にセロトニンため込んでいて、細胞が老化すると、酵素の働きでセロトニンから有害物質が出て細胞死させる。ハダカデバネズミは、地下暮らしで外敵に襲われる可能性が低いから、激しい炎症を起こさないようでできている。(P138~144)

 

【06】

 糖尿病のマウスにNMNを飲ませたところ、血糖コントロールがほぼ正常になり、膵臓の機能も回復した(P153)

 老化の原因は、本来読み取られてはいけないDNA情報が読み取られてしまうこと(今井眞一郎仮説)。老化により、DNAのヒストン(タンパク質)へのパッキングが緩み、細胞が本来の活動ができなくなる。(P154~155)

 サーチュイン遺伝子がサーチュイン(脱アセチル化酵素)をつくる。ヒストンの脱アセチル化が、老化につながるタンパク質をつくるのを防ぐ=現状を維持する=老化を遅らせる(P156~158)

 NADがサーチュインを活性化するが、加齢により減少する。NMNはNADを増やす。NMNは、アボガド、ブロッコリー、キャベツ、エビに含まれるが微量なので、サプリが現実的。NMNの点滴療法は長期治療で障害リスクあり(P160~162)

 脳(視床下部)の神経細胞が活性化すると、脂肪細胞がNAMPTを多く分泌し、NMN、NADが増え、全身の老化が抑えられる(P164)

 

【07】

 DNAメチル化は、DNAの特定の部位(主にCpG配列)にメチル基(-CH₃)が付加され、転写因子やRNAポリメラーゼの結合が阻害されることで、遺伝子の発現が抑制される⇒動脈硬化、糖尿病、がん、認知症等につながる(P176)

 高齢になっても、血中アルブミン濃度が高い人のほうが長生きする

⇔濃度低下⇒疲れやすくなり、握力低下、要介護一歩手前状態で、脂肪率上昇(P185)

 

【08】

 構造生物学は、タンパク質の形を詳しく調べる。(P187)

 物理的に人間の細胞を形成するタンパク質とタンパク質、他の物質の形がぴったり合ってくっつくこと(鍵と鍵穴)で、ワクチン、薬が作用する(P188~189)

 クライオ電子顕微鏡:解析したい対象分子を凍らせたものに、電子線を当てて顕微鏡(1台数億円)で撮影⇔X線結晶構造解析:結晶化が困難(P193)

 アルファフォールド(グーグル・ディープマインド開発)がタンパク質の構造を予測:タンパク質のアミノ酸配列と基地の構造を登録⇒構造予測。2024年、アルファフォールド3開発(P195~198)

 CRISPR-Cas9:CRISPR:ガイド役、Cas9:DNAを切断(P199~200)

 改良版Cas9:DNAを切らずに狙った場所にくっつくだけの機能

⇒転写酵素を呼び寄せる機能⇒DNAを傷つけることなく、遺伝子の覚醒、抑制を操作 (P203)

 老化を抑制するタンパク質の構造がわかればCas9技術でそれを活性化できる(P208)

 

【09】

 キャリアフィッシュの寿命は3~4か月なので、研究を短期化でき、寿命短期化の遺伝子を発見できる(P213~215)

 精子をつくれないターコイズキリフィシュのオスは通常より13%長生き

⇒そのオスの肝臓ではビタミンDを活性化する酵素が大量生成⇒ビタミンDが老化抑制⇒通常のキリフィッシュにビタミンD投与⇒オス21%、メス7%寿命延長(P221~222)

 

【10】

 人間は睡眠不足で老化加速(P227)

(眠りの定義)(P228)

①外部からの刺激に鈍くなりつつ、刺激があれば覚醒

②長く起き続けたとき、その分たくさん眠る⇔寝だめは無理

 睡眠時間6時間が10日間続くと、集中力、注意力が一晩徹夜と同じ状態になる(P231)

 9歳では10時間の睡眠が必要。15~17歳で8時間45分の睡眠が必要(P233)

 スマホ、パソコンのブルーライト量は、睡眠に大きな影響を与えるほどではない。明るすぎるリビングの照明のほうが有害(P238~239)

 夜眠れなかったときは、昼間の仮眠(パワーナップ)が効果的。15~20分(P239~240)

 睡眠のゴールデンタイム(午後10時~午前2時)は根拠がない(P242)

 睡眠サイクルは平均90分だが、一晩でも一定しない。90分の倍数がいいという主張も正確ではない(P242)

 

子どものすごい読書 猪原敬介著 2026年1月日経BP刊

(目次)

はじめに

Part1 読書で本当に頭はよくなるか?

Part2 共感・非認知能力・優しさ‥読書が「心」を育むメカニズム

Part3 読書で子どもの「生きる力」は高まるか

Part4 実は読みすぎもダメ。本当に「効く」読書の科学

Part5 はじめてみよう!お子さんとの家庭の読書

Part6 読書の「質」を高めて効果を上げる

おわりに

 

【Part1】

(知能の分類)(P30)

①流動性知能:情報を素早く正確に処理する。推論を働かせる

②結晶性知能:言葉の力、一般的知能

 知能は環境的要因によっても変化する。楽しみのための読書期間が長い児童ほど、知能が高まっていた(米ABCD調査:10歳前後の児童12,000人を対象に1回目、2年後2回目調査)(P30~32)

 すべての学年(小1~高2)で、読書時間が長い人ほど、勉強時間も長い(P47)

 毎日30分勉強するのも苦痛な小中学生は、学校の宿題を完了させることを目標にして、子どもが好きな本を読む方が塾に行くより優れる(著者の感想)。読書は息抜きであって、長時間の読書は学力向上の面で勧められない(P52~55)

 読書は、学力向上に寄与しつつ、幅広い形式の受験への対策、就職活動、仕事での成功を視野に入れた長期的、汎用的投資だ(P57)

 読書の大きな効果は、言葉の力の向上であり、地頭の良さを構成する要素だ(P59)

 読書は、勉強以外で学力を高める要素であり、国語だけでなく、算数(数学)、理科、社会、英語の教科成績も高める(P67)

 読書は、知的好奇心、言葉の力(言語化)、思考力という勉強する際の基礎をつくる(P68)

 

【Part2】

 読書をよくする人は、イメージや思考が豊穣で、遊び心があり、開放性(新しいものを好む性格特性)が強い(P75)

 読書は、人間関係からのダメージを和らげるワクチン的効果とともに、行動を起こすきっかけともなる(P87)

 物語は、他者の感情を理解する力を向上させる(P90~93)

 同じ教訓を語る場合でも、物語のほうが教訓を実感できる(P102)

◎ありきたりの内容で、イマイチ読み進む気力が萎えてしまったので、ここらで終了

 

代謝を上げると、もっと健康になる! 鶴見隆史著 2018年12月三笠書房刊

(目次)

はじめに 代謝を上げる 健康になるのはもちろん、見た目もどんどん若くなる!

1章 代謝を上げると、免疫、体温、体調アップ!

2章 代謝を上げると、体重、血圧、血糖が理想的にダウンする

3章 代謝を上げる食べ方、代謝を下げる食べ方

4章 酵素食、「もっと若く、もっと健康になる」食習慣

5章 「いい睡眠」「いい運動」「いい入浴」で代謝をさらに上げる!

 

【1章】

 食物酵素を毎日の食事からしっかりとることが大切で、外部酵素である食物酵素を取り入れれば、消化の働きは食物酵素が担ってくれる。その分、多くの酵素を代謝酵素に回せる。食物酵素は生野菜やフルーツ、生の魚や肉に多く含まれる(P39)

◎鶴見隆史氏が提唱する「食物酵素が生野菜、フルーツ、生の魚や肉に多く含まれる」という記述の前半(食材自体に酵素が含まれること)には生化学的な事実がありますが、それによって「体内の消化酵素が節約される」「代謝が上がって病気が治る」といった健康効果(酵素栄養学の核心部分)については、現代の医学・栄養学における科学的エビデンス(根拠)はありません。

◎鶴見氏の主張のベースにある「酵素栄養学」について、エビデンスの有無を「事実である部分」と「根拠がない(否定されている)部分」に分けて分かりやすく解説します。

◎ 科学的事実である部分(エビデンスあり):生の食材に酵素が含まれていること

すべての生物は代謝や生命維持のために内部で酵素を作っています。そのため、加熱されていない生の野菜、果物、生の肉や魚に多くの「食物酵素」が含まれているのは生化学的な事実です。

食材が「自己消化」すること:一部の果物(パイナップルやキウイなど)には強力なタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が含まれており、肉を柔らかくしたり、胃頭での消化を一部手助けしたりする現象(自己消化)は認められています。

◎科学的根拠がない部分(エビデンスなし・現代医学で否定)現代の生化学や臨床医学において、鶴見氏らの主張(酵素栄養学)の以下の根拠は完全に否定されているか、実証されていません。

◎鶴見氏(酵素栄養学)の主張:現代医学・生化学の見解(エビデンス)口から食べた食物酵素が、そのまま体内で酵素として働く働かない(ただのアミノ酸になる)

酵素は「タンパク質」です。胃に入ると、強力な胃酸や体内の消化酵素によってバラバラに分解され、単なるアミノ酸として吸収されます。

元の酵素の形のまま体内で働くことはありません。

◎一生の間に作られる体内の酵素(潜在酵素)の量は決まっている決まっていない(必要に応じて常に合成される)

体内の酵素は、遺伝子の情報に基づいてアミノ酸を原料に日々新しく合成されています。「一生の製造限度量」があるという説は、医学の教科書には存在しません。

◎食物酵素を摂ると、体内の「消化酵素」が節約され「代謝酵素」に回せる:そのような仕組みはない

消化酵素と代謝酵素は、それぞれ全く異なる細胞で、必要に応じて独立して作られます。一方が減ったからといって、もう一方に使い回されるというデータはありません。◎なぜ「生野菜やフルーツ」で体調が良くなるのか?

鶴見氏の食事法(ローフードや生食)を実践して「体調が良くなった」「痩せた」と感じる人がいるのは事実です。

しかし、その理由は「酵素」によるものではなく、以下のような通常の栄養学的なメリットによるものと証明されています。

ビタミン・ミネラルの摂取:熱に弱いビタミンCやカリウムなどを壊さずに摂取できる

豊富な食物繊維:腸内環境が改善し、便秘解消や代謝向上につながる。

カロリー制限効果:生の食材は水分が多く咀嚼回数が増えるため、結果的に食べ過ぎを防ぎダイエットになる。

まとめ「生の食材に酵素がある」というのは事実ですが、それを食べたからといって「体内の酵素が増える・節約できる」という効果にエビデンスはありません。

生野菜やフルーツを食べることは健康に非常に良いですが、それは酵素のおかげではなく、ビタミンや食物繊維の恩恵です。

むしろ、生の肉や魚の過度な生食は寄生虫や食中毒のリスクを高めるため、現代医学では適切な加熱調理も強く推奨されています。

もし特定の健康課題(胃腸の不調やダイエットなど)の解決を目的とされている場合、どのような症状を改善したいかを教えていただければ、より科学的根拠に基づいたアプローチをご提案できます。   byGemini

◎ということで、著者の根幹部分にエビデンスがなく、読む価値なし

◎ちなみに第4章の各項目については次のとおり

◎鶴見氏の提唱する「酵素が体に効く」という理論(前述の通りエビデンスなし)は横に置いたとしても、そこで推奨されている具体的な食事行動(生食・よく噛む・発酵食品など)自体は、現代の医学・栄養学においても「非常に有益である」と強い科学的根拠(エビデンス)が認められています。

◎鶴見氏の本にあるような極端な健康法は、言われた通りにすべて実践する必要はありません。

1. 「クエン酸サイクル促進目的での酢」結論:わざわざ飲む必要はない(効果は限定的)

2. 「必須アミノ酸目的の黒酢」結論:不要。ご指摘通り「プロテイン(タンパク質)で十分」です

3. 「水を2リットル飲む」結論:ご指摘通り微妙。一律「2リットル」に根拠はない

4. 「朝の生野菜すりおろし+フルーツジュース」結論:悪くはないが「すりおろし・ジュース」にするデメリットもある科学的な事実:血糖値の急上昇リスク:フルーツをジュース(特に液体状)にすると、果糖が胃を素通りして小腸で急激に吸収されるため、血糖値が急上昇(スパイク)しやすく、脂肪がつきやすくなったり、その後に強い眠気や気分の浮き沈みを引き起こしたりします。お腹が冷える:朝一番に冷たい生野菜やフルーツを摂ると、内臓が冷えて消化機能が落ちる人もいます。改善策:ミキサーでジュースにするより、「そのままの形(固形)」でよく噛んで食べるほうが、食物繊維もしっかり摂れて血糖値も安定するため、栄養学的にははるかに有益です。  byGemini

人類帝国衰亡史 ヘンリー・ジー著 2025年9月ダイヤモンド社刊

(目次)

プロローグ

第1部 台頭

 第1章 人類という家族

 第2章 ヒト属

 第3章 横並び、生き延びた者たち

 第4章 最後に生き残った人類

第2部 凋落

 第5章 農業 最初の犠牲

 第6章 病弱で、寄生虫まみれ、感染症にも悩まされる

 第7章 崖っぷち

 第8章 崖っぷちを越えて

 第9章 崩壊の先にあるもの 

第3部 脱出

 第10章 未来への鍵を握るのは‥

 第11章 新たな一歩を踏み出す

 第12章 人類の生存領域を広げる

あとがき

注釈

訳者あとがき

 

【プロローグ】

 生物の系統は一定期間栄えた後、当然のように衰退し滅びるものだという考え方(種の老衰:直線進化)(P23)

 ある種がこの世に現れる理由は様々だが、その種が優勢になる背景には、他の生き物たちとの摩擦がある。一度頂点に達し、あらゆる競争相手を排除してしまうと、今度は地球という敵と長く、最終的には敗北する戦いを続けねばならない(仮説)(P27)

 5万年前のホモ・サピエンスは、数ある人類のひとつに過ぎなかった。2万5千年前頃、ホモ・サピエンスは、アフリカ全域とユーラシア大陸に拡がり、アメリカ大陸にも進出していた。この時点で、他の人類は姿を消していた。この瞬間から、ホモ・サピエンスの終わりは、すでに定められていた(P30~31)

 93万年前~81万年前の10万年間以上、人類は絶滅寸前の状態にあった。期間中地球上全ての繁殖可能な人類合計で、常に1280人を超えることがなかった。初期の人口の少なさが、私たちの遺伝子に痕跡を残している。遺伝子的に中身が似通っている(P37)

◎この説は有力な科学研究の仮説。現代人のゲノム(遺伝情報)を高度な統計手法で解析した結果、およそ93万年前から81万3000年前にかけての約11万7000年間、人類の祖先が急激な人口減少(ボトルネック効果)を経験し、絶滅寸前だったことは間違いない

◎90万年前に生きていたのは、現生人類(ホモ・サピエンス)ではなく、その祖先にあたる初期人類(ホモ・ハイデルベルゲンシスやホモ・エレクトスなど)。ホモ・サピエンスがアフリカに誕生するのは、それからずっと後の約30万年〜200万年前。

◎化石記録との矛盾:この期間中も、アフリカ、中国、ヨーロッパ等で初期人類の化石が見つかっている。世界中で同時に1280人まで減ったにしては、化石が広範囲で見つかりすぎている

◎地域的な孤立の可能性:全人類が減ったのではなく、後に現生人類へつながる一部の集団(数千人)だけが孤立し、他の地域の人類と交わらなくなった⇒それが遺伝子にボトルネックとして刻まれた(仮説)

統計モデルの限界:現代人のDNAのわずかな変異から100万年近く前の正確な人数を逆算する手法そのものに、まだ不確実性がある  byGemini

 現在のすべての人類は、小さな生き残り集団の子孫にあたるため、遺伝的に利用できる資源は限られている。新たな病気への対応において、立ち向かうための多様性が十分ではない(P39)

 人類の衰退が始まったのは、動植物の家畜化からだ。2万6千年前、農業の誕生だ。このときから人口が指数関数的に増え始めたが、その代償は大きかった。結核、寄生虫、糖尿病だ(P41)

◎動植物の家畜化によって、人類は指数関数的に増加したのだから、それは隆盛の始まりであって、衰退の始まりではない。「衰退」を著者はどう定義づけているのか不可解

 もっと深刻なのは、今の人類の多くが遺伝的に似通った限られた種類の作物によって養われているという事実だ(P42)

 ホモ・エレクトスは、アフリカからユーラシア全域に広がっていく中で、新しい種へと分化し、特定の環境に適応した姿を取るようになった。多様化が可能になったのはホモ・エレクトスの集団が広く分散し、個体・集団同士が出会わなくなったからだ。交流、交配の機会が断たれることで、それぞれが独自の進化の道を歩み始めた(P51)

◎著者が指摘する人類の欠陥は「現生人類の遺伝的多様性の欠如だ」。それを補うために種の多様性が必要という論理だが、その論理は間違っている

◎「人間としての遺伝子資源3(バリエーション)を豊かにする」という意味での多様性であれば、本質的に必要なものは以下の3つ。要するに時間が足りないだけだ

①時間(十分な世代交代の回数)

②巨大な人口(変異を溜めるプール)

③自由な交配(バリエーションのシャッフル)  byGemini

 

【第1部】【第1章】

 1千万年前~600万年前の間に、ある種のサルが習慣として直立歩行を始めていた。ダヌビウス(1200~1400万年前:バイエルン)は、木の枝や枝の上をよじ登るのに適応していたが、その姿勢は直立に近いものだった。木の上を歩くように、ただ枝がなくなっただけ。それが初期の直立歩行だったのかもしれない(P70~71)

 600~700万年前のサヘラントロプスの頭骨は、直立歩行していたとされる。頭骨の底にある穴が四足歩行動物は頭蓋骨の後ろにあるが、直立歩行するホミニンでは頭蓋骨の下側にある。そうすることで背骨が垂直に立ち上がっても、顔が前を向く(P73~74)

 恐竜が二足歩行できたのは、長い尾があったからだ。胴体の前方と尾が釣り合いを取り、水平に保たれていた。尾が短い鳥たちは、背骨を水平に保つために、膝を常に曲げたまま、しゃがみ込むような姿勢で歩いている(P78)

 類人猿は、サルより体が大きいため、枝の上を走ったり、枝から枝へ飛び移るのが難しくなる。そのため類人猿たちは、枝の上を歩くのではなく、枝にぶら下がったり、よじ登ったりするようになった。こうした生活様式では、直立の姿勢を取れることが利点になる。ホミニンは、木が少なくなりつつある世界に生き、祖先が尾を失っていたため、身体がサルより大きくなっていた。結果、後ろ足で立って歩くしかなかった(P80)

 二足歩行は四足歩行よりずっと不安定だ。一歩踏み出すたびに、片足だけで全身を支えることになる。その瞬間、体全体のバランスが崩れやすくなる。だから脳は、常に、身体が今どこにあるか、どの方向に向かっているのかを、正確に把握しなければならない(P82~83)

 

【第2章】

 地上で暮らし、群れで狩りをするという新しい進化の方向を決定づけたのが、ホモ・エレクトス種だ。背が高く、脚が長い彼らは長く走れた。短距離では速い獲物も、やがて暑さで力尽きる。アフリカから初めて出たホミニンも彼らだ(P90~92)

 ネアンデルタール人は、元々熱帯を好んで暮らしていたホミニンの系譜を受け継ぎながら、ユーラシア全域に広がっていった。彼らの数は少なく、行動範囲は狭く、部族同士が出会うこともまれだった。そのため血縁関係が濃くなっていき、常に絶滅の一歩手前に立たされていた(P94~95)

◎数が少なかったのはホント。ユーラシア全域にいたネアンデルタール人の総人口は、全盛期でも常に数万人程度と推定。近親交配で常に絶滅寸前だったのはウソ。シベリアなどの極端な辺境(アルタイ地方)の化石からは、激しい近親交配の痕跡が見つかっているが、ヨーロッパ西部にいた主要なグループは高い遺伝的多様性を保ち、近親交配を避けて健全に暮らしていたことが判明。彼らは孤立していたわけではなく、部族間でネットワークを作り、交流(婚姻関係の結びつきなど)を維持していた  byGemini

 

【第3章】

 人類は共通のアフリカ出身の母(イブ)にルーツを持つ。イブが唯一の女性だったわけではない。他の女性の子孫が現代まで続かなかっただけだ(P110~111)

 アフリカの外にいる現代人は、アフリカ内部の多様な人類の一枝に過ぎない(P122)

 現代アフリカ人のDNAには、まだ知られてない別のヒト属の痕跡がわずかに含まれている。割合は2%で、70万年前に現生人類の祖先と別れた。この未知のヒト属のDNAが現代アフリカ人の祖先に入り込んだのは、3万5千年前のことだ(P125)

 

【第4章】

 ホモ・サピエンスは、その存在期間の96%において、石器時代レベルの道具で生きてきた。人口が増えたことで、ひとつの発明、伝統がその時代限りで消えることなく、次の時代へと引き継がれていく。進歩を妨げていたのは、人口の少なさだ(P128~132)

 技術的な技能を次世代に受け継いでいくには、ある程度の人口が、ある程度の密度で暮らしている必要がある(P132)

 衣服のおかげで人類は北極海沿岸にまで進出できた。目当てはマンモスだ。肉、脂肪、皮、骨は、食料、道具、住居の材料となった(P141)

 

【第2部】【第5章】

 イヌも人間も社会性のある肉食動物であり、ときには死肉をあさるスカベンジャーでもある。社会構造が似ているため、人間の集団とイヌの集団が一体となって行動するのは自然な流れだったかもしれない(P151)

 狩猟採集民は、季節ごとの自然の食料を効率よく利用するため、彼らは決まったルートをたどる傾向がある。むやみにあたりをさまようようなことはしない(P153)

 最大の疑問は、狩猟採集で生きてきたホモ・サピエンスが、何故ある時期から定住生活に移って、農耕を始めたのかだ。3つの要因がある

①地球が数十万年ぶりの寒冷期を抜け出しつつあったこと⇒気候の急激な変化 

②人の数が増えた⇒狩猟生活だけでは生活が成り立たない

③野生動物が激減(P154~156)

◎①気候変動(ヤンガードリアス期の終わり)約1万1700年前、氷河期が終わり地球が温暖化:適度な降雨により、野生の麦などの植物が自生しやすい環境が整った

② 人口増加と資源の枯渇:狩猟採集の技術が向上し人口が増加:野生の動植物の供給不足⇒食料不足

③定住化の先行豊かな環境(水辺など)では、農耕を始める前から定住生活が始まっていた。移動しない生活様式が、種まきや収穫の管理(農耕)を容易にした。

④動植物の馴化(ドメスティケーション)人類が栽培・飼育しやすい種(小麦、米、羊、山羊など)を意図的に選別。野生種より収穫量や生産性が飛躍的に向上 byGemini

◎②では、「狩猟技術の向上」により「人の数が増えた」と言わないと狩猟生活からの移行が説明できない。従来と同じ狩猟生活をして、なぜ人が増えるのかを説明できていない

◎肝心なところでの不正確な記述が多すぎて、まともに読む気がしなくなった。よってこの辺りで読むのを終了

メタトレンド投資 中島聡著 2025年2月徳間書店刊

(目次)

はじめに

第1章 第3の投資手法「メタトレンド投資」とは?

第2章 「メタトレンド投資」実践のイロハ

第3章 「推し」の企業に投資する

第4章 投資判断のソース

第5章 勝ち切るためのセオリー

第6章 日本株、投資信託、金(ゴールド)、仮想通貨

おわりに

 

【はじめに】

 メタトレンドとは、メタ(高次の)とトレンド(流れ)を組み合わせた造語。メタトレンド投資とは、社会構造の激変や産業の再編、テクノロジーの秘薬的な進歩などを生み出すメタトレンド(時代の巨大なうねり)を早い段階でとらえ、しかるべき企業に投資し、その長期的な成長を狙う手法(P1)

 2001年に崩壊したドットコムバブルで大やけどした。暴落する株価に焦り、その後大躍進を遂げるAMZN株を手放した(P4)

 メタトレンドに乗り遅れてもタイムオーバーになることは稀。メタトレンドが実際に起き、多くの人がその変化に気づき始めてから投資をスタートしても遅くない(P8)

 メタトレンド投資は、10年単位。アメリカの金利政策の変更や日銀の利上げ等株価に大きな影響を与える要因であっても、ノイズにすぎなくなる(P9)

◎趣旨はいいけど、現実には難しい。長期目線で見るにしても、現実の環境が悪ければポジションを最小限に絞ってやり過ごし、回復過程を確認してからポジションを大きくしていく手法のほうが安全な気がする

 

【第1章】

 テクニカル分析には本質的な限界と矛盾がある。株価を動かすのは未来に無数に存在する不確定要素だが、テクニカル分析は、過去の価格変動しか材料にできないし、確実な攻略法なら、投資家が大挙利用し、株価は投資家の行動を反映したものになる(P23)

◎テクニカル分析が不完全な手法であることは指摘のとおり。現在時点の投資家の心理状態、ポジションの状況、トレンドを反映しているので使えるし、重要

 過去の数字だけに頼って、確実なサインを見出そうとする行為は、少し乱暴。理系的視点では、統計学を装った占いに等しい(P24)

 ファンダメンタルズ分析で将来の株価を精度高く見通すことは困難。社会を一変するような革新的イノベーションや、企業やCEOが掲げるビジョンを評価委しづらい(P25)

 短期的(数日~数か月)な株価は誰にも読めない。マクロトレンドとは、世界経済全体や特定の地域経済に広く影響する大きな潮流だが、その先行きを正確に読み切ることは困難。メタトレンドは、マクロトレンドよりさらに長期的な潮流で、10年以上の時間をかけて社会、経済、技術基盤を変える巨大な時代のうねり(P31~33)

 メタトレンドは、社会全体がどの方向に向かうのかを大局的に捉えるための概念で、このメタトレンドをなるべく早い段階で把握し、時代の大きなうねりに乗じて成長していく業界や企業をねらって投資する(P34)

 2012年トロント大学の研究チームによって開発されたAlexNet(AIモデル)の登場によりAIが使えるものになったという確信が世界中のAI研究者の間で広がった。このAlexNetの快挙を支えていたのがNVDAのGPU(P36~37)

 2012年当時はAIブームの主役はNVDAという図式は明確ではなかった。INTC、AMDがいた。2014年頃、NVDAを購入した(P39~40)

◎2013年〜2014年頃のNVIDIAはゲーム用GPU(GeForce)が絶好調で、同社の成長を牽引していた時期。2013年末から2014年初頭に、ビットコインなどの高騰により「最初のGPUマイニングブーム」が起きたが、2014年中盤にはASIC(専用機)の登場や暴落によって一度ブームが完全崩壊した。これによりGPUの在庫調整が発生。  byGemini

◎AI以外の材料で株価が動いているときに、長期目線であっても、AIを材料に買うというのは無謀かも?

 ガラケー文化になじんだ日本人にとって、iPhone登場時のインパクトは大きくなかったかもしれない。絵文字が使えず、画面タッチの操作が使いずらい等。私(著者)は、iPhoneが世界を変えると直感した。携帯電話を使てインターネットにアクセスできることはとてつもない偉業。iPhoneはガラケーとは比較できないほど優れたユーザー体験と完成度でガラケーでは太刀打ちできないと衝撃を受けた(P42~44)

 EVや自動運転等のメタトレンドには、スマホより長い時間がかかる。買い替えサイクルが5~10年とスマホの2年より長いから(P46~47)

 ChatGPTがすごいと世間やメディアで騒がれた段階で投資を始めても十分すぎる恩恵を受けた(P52)

◎メガトレンド投資は眼力が必要。長期目線で物事を見るのは当然だけど、最後のブームになってからの投資で十分じゃないかな?

 

【第2章】

 今後、メタトレンドという大きな時代のうねりに乗って飛躍的に成長していくわけだから、少額の投資から始めても大化けするチャンスは十分ある(P59)

 少額でも株を持てば、その企業のニュースや活動を自分事としてとらえられ、自然に情報のアンテナが広がる(P60)

 メタトレンドに乗りそうな企業を複数抑えておく。10~20社に少額ずつ投資し、そのうち1つがテンバガーになればいい。ウォッチ中の企業を半年~1年かけて様子見し、伸びると感じたら買い増す。ダメなら切る(P63)

 ウォッチリストは、メタトレンド投資で大きく跳ねそうな企業を見守り、買い増しや売却を判断するためのツール(P69)

 ARやVRはいずれ大きなメタトレンドになるが、現時点では決定的な兆候が見えない勝者がMETA、APPLとも言い切れない。SNAPはARグラスに注力しているが、本業のSnapchatがInstagramやTikTokに圧倒され、復活の兆しがないので買ってない(P69~71)

 自分なりに、今後間違いなく成長していくという確信が得られた段階で、一気に投資額を増やしていく(P74)

 AIは要素技術であり、自動運転、ロボット、防犯カメラ等幅広い分野に応用され、確実に到来するメタトレンドとして、ヒューマノイド(人間型ロボット)がある(P75)

 防犯カメラにもAIが搭載されるときは、NVDAの高性能GPUではなく、QCOMが成長するかもしれない(P76)

 Stripeは、ウェブサイト上でのクレジットカード決済を手軽にできるサービスを提供中(P80~81)

 

【第3章】

 私にとっての推しの代表格は、APPLとTSLA。両者の製品やサービスに強く魅了され、株式も保有してきた(P104)

 実際にiPhoneを使い始めると、その直感的で洗練されたUI/UXに驚嘆した(P105)

 投資を推し活という視点でとらえると、投資はエキサイティングで身近、心から没頭できる最高のエンタメに変わる(P108)

 推せなくなったらさっさと売る(P113)

 よく知らない業界だけど、妙に気になると感じる企業やサービスに出会ったとき、少額だけ投資をしてみる(P126)

 私が住む地域ではRivianの自動車をよく見かける。TSLA8割、Rivian2割。Rivianは赤字だけど、フォルクスワーゲンから資金調達し、ジョイントベンチャーをつくり、ソフトウェアを共同開発することまで決まった(P127~128)

 U(ユニティ)は、3Dゲーム開発で使用されているゲームエンジン(Unity)を開発、提供。近年医療、製造、建築等幅広い産業分野で活用され始めていたが、ビジネスモデルを変更し、開発者を怒らせてしまった。この時点で売却(P128~129)

 投資を検討するときは、経営者が書いた本、インタビュー記事に目を通し、考え方、リーダーシップを注意深く見る(P137)

 METAのLlamaのオープンソース化によりAIの発展を加速化したが、これはMETAを中心としたAI開発のシステムが普及するきっかけとなる(P139)

 

【第4章】

 赤字企業では、手元資金があと何年持つか、黒字企業ならPERをチェックする。

①現金及び現金同等物:手元資金。直近1年間の最終損益。手元資金/最終損益>3年ならOK

②PER20倍未満。毎年5%の利益成長を市場が予測していることになる。PER50~100倍の企業は将来の急激な成長が期待され、それが株価に織り込まれているが現在の水準と比べると明らかに割高(P148~153)

◎①は手元現金/営業キャッシュフローのほうがいいんじゃないかな?②はPER20倍は5%成長を見込んでいるわけじゃなくて、ゼロ成長でも20年間で投資を回収できるという数字のはず。5%成長はどこにも出てこない。

◎実際のところ、PER20倍未満の企業はほとんどない。あっても魅力のない企業のみ

 実際に製品やサービスを使ってみることが重要(P159)

 ダイニーは、飲食店向けにQRコードを活用した、モバイルオーダーシステムを開発・提供している企業。今後上場したら、そのシステムを導入している飲食店に足を運び、客としてサービスを体験する(P160~161)

◎モバイルオーダーシステムを提供している企業は多数あり、それ自体は薄利のようだし、客側の使い勝手というより、店側のメリット・デメリットで採否が左右されるダイニーは、ライン活用で特色があり、その評価になる

 カリスマ性とは、現実歪曲空間を生み出す能力。圧倒的な説得力の総体(P164)

 VCのような投資家は、単なる事業計画や机上の論理ではなく、経営者の人となり、ビジョン、情熱に投資する(P171)

 iPhoneやTSLAの個別スペックは、競合製品より圧倒的に優れているわけではないが、実際に製品を手に取ってみると、ユーザーを惹きつける何かがある(P176)

 WeWorkは、単なるレンタルオフィス事業ではなく、テクノロジーの力で人々に全く新しい働き方、新しいコミュニティを提供する、次世代のプラットフォーマーとして注目を浴びた。レンタルオフィス事業の本質は、不動産オーナーから長期契約で借り受けたオフィススペースを短期間で再貸出しするビジネスモデル(P182~183)

◎ビジネスモデルに新鮮さがないのに、周囲が浮かれたのが不可解

 TSLAは、2006年テスラモーターズ秘密のマスタープランを発表。第1段階で、高コストを吸収できる購買力ある富裕層向けハイエンドのスポーツカー(ロードスター)、第2段階で、4ドアファミリーカー(ModelS,ModelX)、3段階でより安価な大衆型モデル(Model3)という戦略だった(P188)

 CEOのスピーチ動画を見る(P191)

YouTubeで「企業名+CEO+Interview」「企業名+創業者+スピーチ」で検索(P193)

 Podcastの最大のメリットは、じっくり時間をかけて1つのテーマが深堀されていること。特に①レックス・フリードマンの番組。出演者が豪華、②ガイ・カワサキのRemarkable People。多種多様な分野の傑出した人々がゲスト(P206~207)

 レックス・フリードマンのPodcastはYouTubeで配信。自動字幕機能、AI翻訳技術を使う。ガイ・カワサキの番組は、Podcastアプリの文字起こし機能で、AI翻訳(P210~211)

  ウェブメディアThe Information(月額39ドル)は別格の存在。GAFAM等の経営戦略や新製品開発の舞台裏を徹底した取材に基づき、迅速かつ詳細に報道。NYTも読みごたえのある記事が多い。ブルーム・バーグも有効。有料購読契約が必要(P213~214)

 週刊Life is Beautifulは、著者のメルマガ(P214)

 論文は、要旨(アブストラクト)に目を通して大枠をつかむ程度でよい(P216)

 AIのアシスタント活用:①この記事を全文読んでと指示、②要約を依頼、③疑問点を聞く(P219~220)

 

【第5章】

 TSMCは本来推し企業だが、中国リスクが致命的な懸念材料(P253)

 経営者交代:売買のターニングポイント(P258)

 

【第6章】

 ビットコインは、デジタル金と呼ぶのは時期尚早。最近のBTC等暗号通貨は、株式市場との逆相関の関係が見られないので、株式に対するリスクヘッジ手段として力不足。少額しか持たず、増やす気もない(P272~274)

 暗号通貨は、本質的に価値を生み出す仕組みや利益を生み出す事業構造がない。売る理由がないという消極的理由で保有中(P276~277)

 ブロックチェーンはメタトレンドになりえない。日常の買い物、スマートコントラクトが実現していない。DiFi(分散型金融):仮想通貨を預け入れて高利回りを得るという実態のわからない投機的サービス。GameFi:遊ぶだけで儲かるを謳い文句(P278~279)