投資の超基本 泉美智子著 2021年朝日新聞出版刊

(目次)

はじめに

Chapter1 ライフプランと投資

Chapter2 投資の基礎知識

Chapter3 iDeCo・NISA

Chapter4 株式投資

Chapter5 債券投資

Chapter6 投資信託

Chapter7 FX・金・不動産‥

 

【Chapter1~3】(略)

【Chapter4】

キャッシュフロー計算書(P117左下)

 説明不足の感があります。

 営業キャッシュフローは、当該期間において、その企業が営業活動により、キャッシュを生み出したか、それともキャッシュを流出させてしまったかを明確にするものです。マイナスが続くと企業の存続が困難になるので、いずれ資金調達(借入または新株発行)が必要となります。営業キャッシュフローがマイナスの企業はリスクが高いので、私は投資対象から外しています。

 

・PER(P119)

 「一般的に、日本の企業の平均PERは15倍程度といわれており、それより高ければ割高、低ければ割安の株式と見ることができます」(P119)との記述は誤っていると言っていいでしょう。

 一般に、成長性の高い企業のPERは高く、成長性が低い企業は低くなります。成長性を考慮することなく、PERの数字だけで割安、割高を判断するのは誤りです。

 

・成行注文と指値注文(P122)

 日々の売買高が少ない銘柄は、指値注文をしないと想定外の価格で売買が執行されてしまうリスクがあります。一方、売買高が多い銘柄はそういうリスクがありません。なので、成行注文を出しても差し支えありません。

 

・単元未満株(ミニ株)の売買(P124)

 ここでの説明は間違いではありませんが、ミニ株の売買は売買が成立しにくいし、価格も不利なので、そもそもやらないのが正解です。

 

・逆指値売り注文(P129)

 株式の売買では「自分の感情を抑える」ことが非常に大切です。

 株価が現実に下がる前の時点(つまり平常心を保っているとき)で、「これ以上下がったときは売る」という注文(逆指値売り注文)を事前に出しておくのは非常に有効です。自分の予想に反して株価が下がってきたときは、月末あるいは翌月末までの期間を区切って逆指値注文を出すことが多いです。

 なお、逆指値注文は「買い注文」でも有効な時があります。(別の機会に書きます)

 

・一部だけを売る(P129)

 これは「ポジションを軽くする」という意味合いを含みます。損失が嵩んできたとき半分売っておくと、その後株価が下がっても、その後の損失が半分で済むので、気持ちが楽になります。利益が乗ってきたときも、「半分売って利益を確定する」ことも有効です。

 

・チャート(P134~135)

 「ローソク足の高値と安値を結んだライン(サポートライン)が右肩上がりになっているときは『上昇トレンド』」(P135①)と記されています。

 しかしネットでは、以下のような説明がされています。

「「支持線」と「抵抗線」は、それぞれ「サポートライン」と「レジスタンスライン」とも呼ばれます。これらの線は、チャート上にある2つ以上の高値または安値の水準を線で結ぶことで表現されます。具体的には、「支持線(サポートライン)」は価格が下落する局面で定期的に反転する2以上のポイントを結んで表現されます。一方、「抵抗線レジスタンスライン)」は価格が上昇する局面で定期的に上値が抑制される2以上のポイントを結んで表現されます。」

 つまり、安値同士を結んだ線がサポートライン(支持線)、高値同士を結んだ線がレジスタンスライン(抵抗線)と呼ばれます。著者が言いたかったのは「サポートライン」ではなく、「トレンドライン」だったと推測されますが、「トレンドライン」は高値を安値を結んだラインではなく、そのトレンド中の安値同士を結んだ線ということになります。

 なお、私は、トレンドはの判断は、移動平均線が上向きか、下向きかで行っており、200日、50日、25日の移動平均線を見ています。

 

・情報収集のツール(P136)

 いろいろ書かれていますが、私の場合は、ツイッター(X)でフォローしている人からの情報が圧倒的に多いです。もちろん、ツイッター情報は玉石混交というか、大半はろくでもない情報です。なので、フォローする人の選択は重要です。

 なお岡崎良介氏(ユーチューブ)、田中泰輔氏(X、ユーチューブ)、春山昇華氏(フェイスブック)からの情報(すべて無料)は、極めて良質です。

 

【Chapter5】(略)

【Chapter6】

ETF(P170~171)

 ETFは、①リスク分散が図れること、②株式と同じように売買できること=流動性が高い、③少額から投資できることが説明されています。個別株投資では、常に倒産リスクに注意を払う必要がありますが、ETFでは、①のリスク分散には、企業の倒産リスクを回避できることなどのメリットがあります。

 

・ESG投資(P172~173)

 ひと頃マスメディアでもてはやされましたが、耳障りのいい言葉ではありますが、あまり惑わされないほうがいいです。投資の基本は、利益と成長です。

 

・暗号資産(P186~187)

 暗号資産は値動きが激しいので、短期間に儲けることができそうに思えます。でも、資産の管理(パスワード管理)、ハッキング、事業者による分別管理の不徹底等価格下落リスク以外のリスクも大きいので、私は手を出してはいません。

 

 ここまで書いてきたように、本書は、「株式投資」の項目での「誤り」と目されるものが多いです。おそらく、著者、監修者、協力者、STAFFのいずれも「株取引」をしていないと思われます。須藤先生(協力者)は「株式を10年以上保有している」(P138)とのことですが、ほとんどトレード(取引)はしたことがないのでしょう。この本は、他の初心者向けの投資本(P191:参考文献)を要約する形でつくられたものだと思います。

 

 「投資の基本は、利益と成長です」と書きました。

 企業の(投資家の視点からの)価値の基本は「利益」です。

 ここでの利益とは、将来的にもたらされる累積的な利益を指します。なので、「成長」、特に「持続的な成長」の要素が大きくなります。

 その持続的成長を確保するための要素として、「堀」と呼ばれるものの存在が重要視されます。他の事業者に対する「圧倒的優位性」の存在です。

 このあたりのことを平易に解説してくれている本があれば、その本は良書だと思います。