(目次)
はじめに
第1章 100歳は若い
第2章 なぜ老いるのか
第3章 コレステロール~多いほうがいい?
第4章 成長ホルモン~少ないほどいい
第5章 細胞の奥にひそむ長寿の謎を解く
第6章 老化は防げると証明するための探求
第7章 80代を新たな60代に
第8章 時計を止める
第9章 明るい未来
【第1章】
老化は、慢性疾患の主要因だ(P23)
ほとんどの人の場合、老化に対する遺伝の影響は約20%~25%だが、センテナリアン(百寿者)の場合は、遺伝子が75%~80%影響する(P29)
【第2章】
人間の細胞はストレスや加齢に反応し、プログラムによって死ぬ(アポトーシス=細胞自然死)ことがあるし、分裂しなくなることもあるが、それが私たちの死をプログラムしていることにはならない(P63)
人間は他の種よりも、加齢とともに多くの細胞が変異する。ゲノム不安定性、すなわち変異がよく起こることは老化の特徴である(P63)
変異が累積していく原因の1つは、修復機能が次第に低下していくことだ。修復機能が低下すると、細胞が死んだり分裂しなくなるため、内臓が小さくなっていく。修復機能がなくなれば、細胞ががん化することもある(P63)
原因の一端はミトコンドリアにあり、ミトコンドリアの数と機能は加齢とともに減少する。ミトコンドリアはフリーラジカルによるダメージを受けやすく、そのダメージを自身のDNAに蓄積する。これが主因で、エネルギー生成が減少し、アポトーシスを引き起こすと考えられている(P64)
ミトコンドリア機能障害は、心臓病、腎臓病、肝臓病、胃腸病など、さまざまな健康上のリスクと関係がある。またミトコンドリア数のと機能の減少は、視力、聴力、皮膚の衰えにつながる。さらにミトコンドリアの機能が低下すると、肥満や糖尿病などの主な代謝異常を引き起こす(P64)
拮抗的多面発言説:若いときに生殖に必要だった生物資源が、高齢になると体を傷つけるようになる(1957年ジョージ・ウィリアムズ提唱の老化に関する仮説)(P65)
人が年を取って病気にかかりやすくなるのは細胞が情報を失うためである。DNAは情報をデジタル形式で保存しているが、細胞はアナログ形式なので、DNA配列における遺伝子の機能を変調させる可能性がある(デビッド・シンクレア提唱の老化の情報説)(P73)
インフラメージング(炎症性老化)とは、炎症性因子の生物学的量で示されるもの(クラウディオ・フランチェスキの造語)炎症性因子は主に高齢者に見られ、その大半が訴える筋骨格痛として表れる。炎症性老化の中には細胞分裂を停止したのに死なない細胞によって起こるものもある。この老化した「ゾンビ細胞」は加齢とともに蓄積して悪さをするようになり炎症性因子を分泌したり、SASP(細胞老化関連分泌形質)というたんぱく質を産生したりする(P76)
性ホルモンや成長ホルモンを補充することによって、健康寿命や寿命が伸びることを期待するホルモン療法は誤っている。エストロゲンを投与された平均60歳の女性は、偽薬を投与された女性より、心臓病や乳がん、認知低下などの加齢性疾患が多くみられた(WHI:米国立衛生研究所の研究)(P76~P78)
摂取カロリーを減らすと寿命が伸びるという仮説は誤りではないが、少食は直接老化を防ぐ効果があるわけではない(P82)
脂肪細胞から分泌されるレプチンは、満腹になったことを脳に伝えるが、高齢のマウスはレプチンに反応しない(レプチン耐性)ので、レプチンはカロリー制限の疑似効果を持つ老化治療薬には適さない(P83)
アディポネクチンも脂肪細胞から分泌されるが、インスリン抵抗性や炎症を抑え、他にも多くの利点がある。(P83~P84)
肥満の高齢ラットの腹腔内から内臓脂肪を見える限り取り除く手術をしたグループのラットは、インスリン抵抗性がなかった。(P87~P88)
内臓脂肪を取り除いたラットにカロリー制限しないときは、制限なしのラットより20%長生きし、カロリー制限したラットは制限なしラットより40%長生きした。つまり内臓脂肪を取り除くと、(カロリー制限ほどではないが)長寿に一定の効果がある(P88~P89)
皮下脂肪は、ウイルスや細菌など、皮膚から侵入しようとする物質へのバリアとして働くだけでなく、善玉ペプチドやアディポネクチンのような死亡ホルモンを分泌する。よって、皮膚の下に少量の脂肪があるのはよいことだ(P89)
カロリー制限したマウスの半数は、好きなだけ食べたマウスより長生きし、半数は寿命が短かった。これは、カロリー制限が長寿につながるかどうかは遺伝的背景によることを示しており、ヒトにも当てはまる(P91~P92)
【スーパーエイジャーの特徴】(P95~P96)
①善玉コレステロール値が高い
②成長ホルモンGF-1値が非常に低い
⇒成長に使われたエネルギーが生き延びるために使われる
③いくつかのMDP値(マクロファージ及び樹状細胞への分化能を示す前駆細胞)が非常に高い⇒このたんぱく質はミトコンドリア内にある
【第3章】
スタチンを飲むと心臓発作の発生とそれによる死亡がスタチンを飲んでいない人に比べて25~30%少なかった。一方、スタチンを使っても全死亡率は変わらなかった。スタチンを飲んでいる人は、そうでない人より、2型糖尿病になるリスクが30%高まる。ある研究ではスタチンの使用で自殺の可能性も高まることが示された(P102)
コレステロール値を下げすぎると、脳内ニューロンに悪影響を及ぼす心配もある極端に低いLDL値は、出血性脳卒中と関係がある(P102)
HDLコレステロール値は、男性平均約45㎎、女性55㎎だったが、センテナリアンの子は100㎎を超えることがあった(P103~P104)
センテナリアンとその子はHDLの数が多いだけでなく、HDLとLDLの粒子が普通よりずっと大きい。小さな粒子は酸化しやすい(P105)
【第4章】
成長ホルモンは、成長時には欠かせないが、老化の面では害を及ぼしかねない。成長は生物にとって重要だが、大きな資源を要する。そのためほぼすべての種で、成長が早く止まると、健康寿命も延びる(P124~P125)
後成的メカニズムによって寿命が伸びる(P135)
①DNAのメチル化:いくつかの遺伝子を不活性化し、他の遺伝子を活性化する
②ヒストン:DNAの周りに巻き付き、遺伝子制御の役割を担う
③マイクロRNA(miRNA):小さなリボ核酸分子。他のRNAを抑制し、ターゲットとする特定の遺伝子の発現を妨げる
レスベラトロールは、ヒストン脱アセチル化酵素を活性化させることで、ヒストンをもっとDNAにしっかり巻き付けさせる。その結果、その部位が再活性化し、ゲノムが若いときの状態に戻る(PP137)
【第5章】
ヒューマニンは、慶応大学チームにより最初に発見されたミトコンドリア由来ペプチド(MDP)である。
ミトコンドリアは、エネルギー代謝の調節中枢である視床下部に、ニューマニンによって、メッセージを送り、全身の代謝を調節している(P153)
ヒューマニンは、特許を取得西本征夫医央医師が亡くなり、申請した薬品開発の特許が切れた。そのため誰もが自由に使えるので、たとえ薬を開発しても他の製薬会社に複製されるので儲からない。なので開発されない(P154~P155)
コーバー社(CWER)を設立。ミトコンドリアを基にした治療法(MBT)を研究開発
【第6章】
老化の特徴~老化治療のターゲット(P176~P180)
①染色体の維持⇔DNA等が傷つくと細胞消失、がん発生
②細胞老化
⇒細胞のDNAが損傷した場合の選択肢は2つ
・老化細胞になって分裂を止める⇒がん化を避ける
⇒しかし老化細胞が蓄積すると炎症因子や細胞老化関連分泌形質(SASP)を分泌
⇒SASPが周りの環境を変え、がんを発生させることもある
③炎症⇒慢性炎症は老化をもたらす
④ミトコンドリアの品質管理
⑤タンパク質恒常性(タンパク質ホメオスタシス)
タンパク質恒常性は、自食作用という体の機能の衰えから生じる
⑥免疫機能障害
⑦代謝調節異常
⑧後成的変化
メトホルミンは、ミトコンドリアの酸化経路を適度に調節し、その結果、インスリン感受性の改善と自食作用の誘発という代謝的適応が起きることで、老化の特徴にプラス効果を与えている(仮説)(P187)
TAME研究は、老化・老年問題研究連盟(AFAR)監督の下で行われる6年間の二重盲検プラセボ対照試験である。登録者は65~80歳の多様な人々3,000人で、糖尿病ではないが加齢性慢性疾患にかかり始めているか、機能低下や主な加齢性疾患、死亡の高リスクの兆候が見えだしている人たちだ(P190)
TAME研究の手順は、1500㎎のメトホルミンの徐放性錠剤を1日1回服用する(P194)
【第7章】
ライフ・バイオサイエンシズ社グループ企業(P214~P216)
・セルファジー・セラピュ―ティクス社:自食作用能力を修復、ごみタンパク質除去
・コンティニューアム・バイオサイエンシズ社:ミトコンドリアの活性化
・イドゥナ社:幹細胞の生成、山中伸弥教授の研究に基づく
【第8章】
環境とゲノムの相互作用(=後成的遺伝)によってゲノムのメチル化に変化が起きその変化が遺伝子の活性を変える(P227)
メチル化は可逆性の作用ではないかもしれない(P228)
老化を防ぐのに一番良い方法は運動である(P229)
ストレッチで柔軟性を保ったり、ヨガや太極拳のようにバランスを鍛える運動をすることが大切だ(P229)
定期的な運動は、細胞内のたんぱく質をリサイクルする仕組みを刺激する(P233)
メトホルミンを飲んだグループの人は、運動による悪影響の酸化的損傷と炎症が少ない(P241)
【食生活の指針】
①カロリー摂取量に気をつける
②主要栄養素を摂る
タンパク源として肉をもっとも多く食べる人は心血管疾患死亡率が2倍になり、ナッツや種をよく食べる人の死亡率は50%下がった(P246)
加工した赤身肉は他のどんなタンパク質より死亡リスクを高めるが、鶏肉や魚、乳製品はそれほど危険ではない(P246)
③マイクロバイオーム(微細物叢)を守る
④最良の健康のために食べる:地中海食
コールドプレス・エクストラヴァージン・オリーブオイルには30種類のポリフェノールが含まれていて、炎症を抑え、老化の特徴に効き、心臓血管系や脳の老化を防ぐが、エクストラヴァージンでないオリーブオイルには何の効果もない(P254)
⑤微量栄養素とビタミンは必要なだけ補う
高齢者の体重が減って体が衰え始めたときに、食事に複合ビタミン剤とミネラル剤を補うのは、安全で有益(P257)
1日に16時間断食すると、体がグリコーゲンを使い切る(P261~P262)
⇒等の減少に応じてインスリン値が下がり、必要なグルコースを供給する肝臓の能力が高まる
⇒インスリン小で、mTORが減り、自食作用が高まる
⇒インスリン値低下状態で、体は貯蔵脂肪を利用し、脂肪が血流内に放出
⇒脂肪が肝臓に届くと、ケトン(エネルギー分子)に変わる
高ケトン食は、動物では寿命を延ばす(P262)
マウスでは、カロリー摂取を1日8~10時間に制限すると、脂肪や糖の多い餌を食べていても健康状態がよくなった(P264)
⇒寿命と健康寿命を伸ばすには、少なくとも16時間の断食が最も有望(P264)
BRCA1変異(乳がん)やAPOE4(アルツハイマー病)は、多くの研究で病気と関係するとわかっているが、予測値は定かでない。私たちは非常に多くの多様体からできていて、とても複雑なので、遺伝子検査で予測できるとは限らない(P268~P269)
【第9章】
ソロマジック社は、5000のタンパク質を測定する方法を開発した(P290)
クロト―は、センテナリアンによく見られるが、対照群にはない。ユニティ社が、このタンパク質の商品化に2億5000万ドルを投資している(P291)