(目次)
まえがき
第1章 乳がんとはどんな病気なのか
第2章 乳がんの検査方法
第3章 乳がんの治療法をきめる3つの基準
第4章 乳がんを治療する薬剤
第6章 乳がんの手術
第7章 治療後の生活と乳房再建手術
第8章 手術しない乳がんの治療法
第9章 乳がん治療後の療法と転移・再発の治療法
第10章 乳がんの治療後にどのように暮らすか
あとがき 乳がんの治療は医療の現状だけで考えない
乳がんの治療は長期戦なので、「治療ノート」をつくる必要があります。医療側の説明を手短に書き込み、検査の結果をプリントアウトした記録をはりつけておきます。これは治療経過をたどりなおし、治療法を再検討するときに重要な資料になります。医療チームは真剣に治療法を考えますが、患者も最適の治療法を理解して納得していれば、治療効果が上がります。(P3~P4)
乳腺組織 小葉:腺房(小さな粒状の組織の集まり)の集合体
乳管:小葉から乳頭に続く管:乳がんの90%以上
乳頭:乳首
乳がんの90%以上が乳管にでき、5~10%が乳腺から発生します。(P10~P11)
◎「乳腺」は乳腺組織を指すとすれば、それは乳管とそれ以外の組織を指すので、上記文章は意味をなさない。公益財団法人日本対がん協会作成の「乳がんの基礎知識」によれば、「多くは乳管で発生する乳管がんで、乳腺小葉で発生する小葉がんが続きます」とされているので、「5~10%が乳腺」は「小葉等」と読み替えたほうがいいかもしれない。
乳がんは、乳管の上皮細胞(乳管の内側の表面をおおう細胞組織)の異常で発生する。(P11)
非浸潤がん:がんが乳管の中にとどまっている。転移リスクはほとんどない。
95%以上完治
浸潤がん :がんが乳管の金を突き抜けた状態。(微小転移)
微小転移が見える大きさのときは、すでに転移しているリスクがあり、
ホルモン剤、抗がん剤、分子標的薬を使う薬物療法が避けられない。
(P11~P12)
乳がんの広がるルートは、血行性とリンパ行性
・血行性:血管を通じて広がる→骨、肺、肝臓、脳
・リンパ行性:リンパ組織は、体内の異物や老廃物を体外に排出し、細菌、ウイルス
等の病原菌を食べて処理する。リンパ節は処理しきれなくなった、異
物、病原菌、癌細胞をため込むことがある。このとき、リンパ節はが
ん細胞を全身に広げる中継地点に変わる。
乳がんが進行すると、腋窩リンパ節に転移するリスクがあるので、腋窩リンパ節を摘出する(リンパ節郭清)→腕が太くなり痛む(リンパ浮腫)
放射線の使用により、リンパ節郭清を避ける方法も出現(P13)
乳がんのできやすい場所とセルフチェック(P13~P17)(略)
乳がんの体験のない50~79歳の48,835人の女性が参加し、20年間に3,374人が乳がんと診断されたが、脂肪の摂取を制限した女性は、脂肪を制限しなかった女性より、乳がんによる死亡リスクが21%少なかった。→バランスのとれた低脂肪食は、閉経後の女性の乳がん死亡リスクを軽減する。(2019年6月、米国臨床腫瘍学会で発表)(P28)
閉経後の女性の肥満は、乳がんのリスクを高める。(2014年第24回日本癌学会市民講座で講演)
欧米で、がんの再発を防ぐために推奨:1週間に合計3時間の散歩(P29)
乳製品とカルシウムを含む食品は乳がんのリスクを下げる可能性がある。(2017年世界がん研究基金、米国がん研究協会報告)
ダイズが乳がんの再発リスクを高めるという証拠はなく、むしろリスクを軽減させる可能性がある。(同上2014年報告)
乳がん体験のない45歳~74歳の約48,000人の女性を平均15.5年間追跡調査した結果を2021年1月、国立がん研究センターが発表→ダイズ製品の摂取量と乳がんの罹患リスクには関連がなかった。大豆のイソフラボンはエストロゲンを阻止し、乳がんのリスクを予防する作用をする。(P32)
第2章 乳がんの検査方法(P39~)(詳細は略)
・問診、マンモグラフィ、エコー(超音波)検査、マイクロ波マンモグラフィ
・生研(バイオプシー):細胞診、組織診
・画像検査:MRI、CT、PET、骨シンチグラフィ
がんの広がり、リンパ節転移の有無、他の臓器への遠隔転移の有無を確認
・腫瘍マーカー:がん細胞がつくる物質or正常な細胞ががん細胞に反応してつくる物質
信頼度は50%程度→参考にする目安の1つ
・がん遺伝子パネル検査:がんに関係する遺伝子の変異を一度に明らかにする(BRCA
・遺伝子変異を含む)
・乳がんの再発リスクを予測し、適切な治療を受けるようにする遺伝子検査(P61 ~)
・オンコタイプDX:アメリカで開発
・マンマプリント:オランダで開発
・リキッドバイオプシー(液体による生検)(P63~)
第3章 乳がんの治療法を決める3つの基準(P67~)
・乳がんの組織型(P71~)
乳がん 非浸潤性がん 非浸潤性乳管がん
非浸潤性小葉がん
浸潤性がん 通常型(85%:浸潤性がんに占める割合)
乳頭腺管がん(25%)
充実腺管がん(20%)
硬がん(40%)
特殊型(10種類)
浸潤性小葉がん(5%)
粘液がん(3%)
アポクリンがん(1%)
炎症性乳がんでは、がん細胞が乳房の皮膚の中のリンパ腺をふさいでリンパ液の流れを阻害するので、乳房が腫れて、オレンジの皮のように赤くなる。数週間から数か月で急速に広がる。
炎症性乳がんでは、転移・再発を抑えるため、術前化学療法を計画し、薬剤を3週間投与して1週間休むスケジュールを4~6か月続ける。(P72)
トリプルネガティブ(略称:トリネガ)では、ドキソルビシン(アドリアシン:アンスラサイクリン系)とパクリタキセル(タキソール:タキサン系)を併用。シクロフォスファミド(エンドキサン)を補助的に使用(P73)
乳がんのサブタイプ分類(P77)
サブタイプ ホルモン受容体 HER2受容体 ホルモン療法 化学療法 分子標的薬
ルミナルA + ー ○
ルミナルB(HER2ー) + ー ○ ○
ルミナルB(HER2+) + + ○ ○
HER2 ー + ○ ○
トリプルネガティブ ー ー ○ ○
第4章 乳がんを治療する薬剤(P79~)
ホルモン感受性陽性タイプの治療薬(P81~)(略)
分子標的薬は、多くのがんは自分と同じ異常な細胞を増殖させようとして「シグナル(信号)」を送り続ける。この信号の伝達に関係する分子を狙い撃ちにするのが分子標的薬(P85)
分子標的薬の分類(P85~P86)
・HER2を標的
・血管新生を妨害:がん細胞栄養をとるために新しい血管をつくり出す血管新生を妨害
・骨転移を妨害・治療
・転移・再発乳がんに対応
・遺伝性乳がんに対象
・免疫チェックポイント阻害剤(免疫CP阻害剤):ニボルマブ(オプジーボ)
⇒がん細胞は、PDーL1という分子を放出してキラーT細胞(がん攻撃の主役)表面の
PD-1分子と結びつくことで、キラーT細胞からの攻撃を防御する。
免疫CP阻害剤は、PD-L1を標的として、その働きを阻害し、がんの増殖を抑える。
乳がん関連の免疫CP阻害剤は、アテゾリズマブ(テセントリク)
ルミナルA・ルミナルB・HER2(P100~P111)(略)
トリプルネガティブ(トリネガ)(P112~)
トリネガ患者の術前治療には、抗がん剤と分子標的薬が使われ、転移性トリネガの患者には、プラチナ製剤のシスプラチンとカルボプラチンが使われる。
※白金製剤(プラチナ製剤)の薬理作用
がん細胞は無秩序な増殖を繰り返し、正常な細胞を障害し組織を壊したり、転移を行うことで本来がんのかたまりがない組織でも増殖を行う。細胞の増殖には遺伝情報が刻まれたDNAの複製が必要となる。本剤はがん細胞のDNAと結合することでDNAの複製を阻害し、がん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導することで抗腫瘍効果をあらわす。本剤は薬剤の構造の中に白金(プラチナ:Pt)を持つため、白金製剤と呼ばれる。
スタチンは、LDLコレステロールを下げる薬だが、がん細胞の分裂を抑え、細胞死を促進するとされる。(P114)
第6章 乳がんの手術(P119~)
乳房全摘手術(P130~)
現在の手術では、再建手術に備えて乳房の皮膚を残し、乳腺組織を切除する手術法がとられる。(P130)
⇒センチネルリンパ節とは、乳管の外に出たがん細胞が、最初にたどり着くリンパ節
センチネルリンパ節を調べれば、乳がん細胞が乳房の外に出ているか同課が分かる
センチネルリンパ節生検は、手術中に切除したセンチネルリンパ節を病理室にもっていき、顕微鏡で調べる。転移がないことが分かれば、それ以上のリンパ節郭清(リンパ節の摘出)の必要がなくなる。
手術前の画像検査で、腋窩リンパ節に転移があることが分かれば、はじめからリンパ節郭清にはいる。(P137)
乳がん手術・リンパ節郭清の後遺症(P139~)
・乳房やわきの下、腕がチリチリ痛む
・肩や腕が動かしにくい
・腕の間隔が鈍くなる
・リンパ液が溜まり、腕が腫れる(リンパ浮腫):リンパ節郭清、放射線療法の後遺症
リンパ浮腫の対策(P142)
・種々した翌日からリハビリを始める:リンパマッサージ
・重い物を長時間持たない
・肩や腕を圧迫する窮屈な下着、衣類、アクセサリーを避ける
リンパ浮腫が起きている箇所が細菌感染を起こすと赤い斑点ができたり、赤く腫れあがって熱が出ることがある。(蜂窩織炎)⇒即刻、医師に相談する。(P144)
乳がん看護認定看護師:治療法の選択、リンパ浮腫予防のアドバイスをしてくれる
手術後の放射線治療(P147)
術後乳房再建手術をうける患者に放射線照射するとダメージがあり、有害な症例が増えるのでしないことになっている。(P148)
◎次のようなネット情報がある
※「乳房再建とがんの治療・・・がんの治療が優先です
乳房再建には、乳がん手術と同時に行う一次再建と、乳がん手術が終わって一定期間おいてからおこなう二次再建があります(詳細は乳房再建術を受ける時期と回数を参照)。再建術を行う時期については、患者さんの希望だけでなく、乳がん術後に抗がん剤治療や放射線治療を行うかどうかでも選択できる時期が異なります。
乳房再建は抗がん剤治療や放射線治療の後でも受けることができますので、がんの治療と同時進行できない場合は、がんの治療が優先となります。また、形成外科が無い施設や、乳房再建を行っていない施設で乳がん手術を受けた患者さんでも、乳房再建を行っている施設において二次再建で乳房を取り戻すことができます。どの時期で再建術を受けるのがベストなのかについては、医療者によく相談するようにしましょう。
抗がん剤治療と乳房再建
抗がん剤の治療中は、抗がん剤の副作用で感染しやすくなり、術後合併症のリスクが高くなります。基本的には、抗がん剤治療が終了し、抗がん剤の影響が無くなってから手術を行いますが、乳房再建を行う時期は担当医と相談してください。なお、ホルモン療法では乳房再建を同時進行することができます。
術後放射線治療と乳房再建
放射線治療後に乳房再建を行う場合は、治療終了後1年間はあける必要があります。
放射線治療後は放射線の照射範囲に皮膚炎が起こり、皮膚が固くなり伸びにくくなるので、ティッシュ・エキスパンダーを使用する二期再建は難しくなります。また原則的には、ティッシュ・エキスパンダー挿入中に放射線治療を行うことができません。乳房インプラントに入れ替えた後では、放射線治療を受けることはできますが、放射線の影響によりインプラントで再建した部位が変形する可能性があります。一方、自家組織移植でも、放射線を照射した部分の皮膚が固くなったり、色素沈着により、整容性が悪くなったりすることがあります。放射線治療後に乳房再建を考えられている場合は、スキンケアを念入りに行いましょう」
第7章 治療後の生活と乳房再建手術(P155~)
自家移植による乳房再建法(P171~)
自分の組織による乳房再建法では、主に腹部か背中の組織を生かす。最大のメリットは、柔らかさをもつ自然な形が再現されること。インプラントに比べて感染症に強く、長期間安定した乳房を維持できる。腹部の組織を生かす場合と、背中の組織を生かす場合で、システムと手順が違う。(P171~P172)
自家移植による再建:手術時間4~10時間
入院期間10日~2週間
身体的負担が割と大きい
費用30万円~60万円
第8章 手術をしない乳がんの治療法(P175~)(略)
第9章 乳がん治療後の療法と転移・再発の治療法(P195~)(略)
第10章 乳がんの治療後にどのように暮らすか(P207~)
免疫システムを高めるライフスタイル(P215~)
・1日にコップ8杯分の水分(2リットルに相当)をとる
水分を十分にとらないと、免疫システムが働きにくい。
・毎日、ぬるめ(40度前後。冬場は41℃)のお風呂に20~30分つかる
40度の熱で、熱ショックタンパク質が増えて、細胞をガードしてくれる。
・体を冷やさない
がん細胞は熱に弱く、寒い冬に活動する。がん細胞は夜10時から朝4時にかけて増殖する。だから夜間には、体温を低下させないようにする。
現代人が一般に低温傾向にあるのは、風呂に入らずにシャワーで済ますこと、暑い季節にエアコンを使いすぎること、冷えた飲料を飲みすぎることに原因があるとされる。
・どんな時間帯でも眠くなったら眠る
病気の時に眠くなるのは体の自然な欲求
・暗いことを考えない
心の働きと細胞の働きは密接に連携している。明るいことを考えて笑っていることは病気にプラスになる。
・免疫システムを高める特製野菜スープ
野菜を加熱すると、消化・吸収しやすくなるだけでなく、野菜の抗がん物質と抗酸化物質の効力が、生野菜の10~100倍も高くなる。
野菜の中では、ブロッコリー、キャベツ、セロリ、ニンジン、カボチャ、タマネギに特に効力がある。