癌では死なない 稲田芳弘・鶴見隆史・松野哲也著 2009年12月ワニブックス刊

(目次)

はじめに

第1章 病院では教えてくれない癌治療の実際(松野哲也:理学博士)

第2章 腸をきれいにすれば癌が消える(鶴見隆史:鶴見クリニック院長)

第3章 癌完治の決め手は「癌呪縛」からの解放(稲田芳弘:ジャーナリスト)

第4章 著者鼎談「癌はどうしたら治るのか?」

 

◎第1章は、プロポリスが効くと言いたいのか、 プロポリスそのものが自然治癒力を高めると言いたいのか、意識や、「気」、「縁」、「運命」等の超自然的力が病気に作用すると言っているのか、何を言いたいのか分からない文章である。

 「世の中には癌を治すさまざまな療法がある。(略)その人の自然治癒力を引き出すものは、その人の体質や気質などの要素によって違ってくるのである。代替医療や民間療法と呼ばれるものであっても、自分に合うものであれば大いに利用すると良いのではなかろうか。」(P61)

◎あらあら、プロポリスに関する研究はどこに行ったの言いたくなる。おそ松の限りである。この程度のことなら誰でも言えるわけで、理学博士の名が廃るというものだ。

 

◎第2章は、一般論としての腸内細菌の重要性であるとか、その他食生活において留意すべきことを記述している。それらは(細かいところを除けば)常識的なことだし、無理のない範囲で日々実践すればいいと思う。

◎必ずしも同意できないのは、例えば、「野菜の半分以上は加熱しないで食べる」(P108)という記述がある。その趣旨は加熱によりビタミン等の栄養素が壊れる、ということだろうが、生の野菜をたくさん食べるのは難しいので加熱するのであって、その分量を多くとればそのほうが実践しやすいし、それで十分ではないだろうか。食生活については、完璧である必要はないと思う。やれる範囲でやればいいのだから。

◎もう一つ。「日本で以前、人糞を肥料としていた頃は、たまった人糞を1年以上もかけて発酵させ、完全に熟したものを『コヤシ』として肥料に使っていた。1年以上も人糞を発酵させると、寄生虫が死に、金が全部善玉菌になる。」(P75)

◎ちょっと待ってくれ、その「日本では以前」とはいつの話だ?江戸時代の話か?執筆者は1948年生まれだが、その頃の子供たちは「蟯虫検査」なるものをやっていたはずだ。蟯虫は寄生虫で、その原因は人糞を肥料として使っていたからだと記憶しているが、違ったのか?

◎「癌になったらどうしたらいいか」ということには直接的な言及がない。癌細胞に「悪さをしないでくれ」とお願いせよというのでは、なんだかはしごを外された感じがする。(P113~P114)

 

◎第3章の論拠になっているのは、千島学説(P127~)とガストン・ネサンのソマチッド(P146)だろう。その内容については、この本を読むより、Wikipediaの記事を読んだほうがいい。千島学説なるものは、これまでの科学的知見とは相いれない。