日本人の遺伝子 一石英一郎著 2018年3月KADOKAWA刊

(目次)

はじめに その答えはすべて「遺伝子」がカギを握っている

第1章 日本人はどこから来たのか?

第2章 あなたを動かすさまざまな遺伝子

第3章 遺伝子は鍛えられる~エピジェネティクス

第4章 遺伝子健康法

第5章 日本発・最新遺伝子事情

おわりに 日本人と医療と遺伝子と

 

 遺伝子に関するよもやま話っていう感じの本。例えば、第1章は、「日本人はどこから来たのか?」がテーマになっており、確かに、ミトコンドリア遺伝子から見た日本人の起源はセムユダヤ人、Y染色体からすると古代ユダヤ人と共通するとかの記述はあるものの、そういうことを踏まえての自分なりの結論めいたものの記述がない。

 挙句の果てに、同じ第1章の中で、「日本人は太りやすい遺伝子を持っている」だの、日本人はセロトニン・トランスポータ遺伝子のうちSS型やLS型を持つ人の比率が高く、その結果、細やかな気配りができ、相手に尽くす、おもてなし上手でまじめなコツコツ型であるなどという記述が続く。

 確かにそれらは、日本人の特殊性の遺伝子的側面ではあろうけれども、そもそも「日本人はどこから来たのか?」という問いかけへの回答ではない。

 もう一つ。この方の記述は、かなり不正確に感じる。

 例えば、エピジェネティクスについて、「生活習慣やストレスなど、何らかの刺激的な出来事が起こると、それが後天的に変化を起こして遺伝情報が切り替わってしまう」と記載されている。

 これを丁寧に読めば、遺伝子の「発現」が切り替わるという趣旨であることは分かるけれども、そのように読める人は、そもそもこんな本など読む必要がないくらいに知識があるわけで、普通の人は、「遺伝子そのものが変化する」と読んでしまうのではないだろうか?

 この種の曖昧な記述が多くてうんざりしてしまった、というのが正直な感想である。