(目次)
第1章 生きている電気的な生地
第2章 ただ世界をつけ足せ
第3章 内は外を映す
第4章 感覚入力を受け入れる
第5章 よりよい体を手に入れるには
第6章 大事であることがなぜ大事か
第7章 なぜ愛は別れのときまで己の深さを知らないのか
第8章 変化の縁でバランスをとる
第9章 老犬に新しい芸を仕込むのはなぜ難しいか
第10章 あのときを思い出す
第11章 オオカミと火星探査車
第12章 エッツイの叶わぬ恋を見つけ出す
私たちの遺伝子は、周囲の世界に自らを適合させるシステムを築けという単純な原則を生み出した。
脳は、世界に関する内部モデルを構築し、予測が間違っていたらその都度それに合わせて自らを修正する。
脳は、自らを入力情報に適合させる。脳は、動的なシステムであって、体に何ができるかや、環境がどうなっているかに応じて、自らの回路を絶えず変化させている。
ニューロンは、生存競争に明け暮れており、脳内の地図は何度も書き換えられて、その人の経験や目標が、常に脳の構造に反映されるようになる。
脳の本質は、果てしない変化と適応を続けながら情報を求めるシステムである。脳は、何であれ流れ込んでくる情報を活用する。
脳は、何らかの課題を解決するためのものであり、情報がどの感覚経路を通って届けられるかは問題ではない。
夢を見るのは、地球の自転により平均12時間サイクルで闇になることで視覚系のニューロンが他の系統のニューロンから乗っ取られるのを防ぐために、疑似的な体験をすることである。
脳は、初めから特定の身体を扱うように定められているわけではない。
脳は、どんなボディプランの中にいようと、その体を操る方法を学習する。
目の前の課題が大きな目標と概ね一致しているとき、脳の回路はそれを反映した姿になる。
脳は、一度に少しずつ自らを変えることで、本当に相関があることを確認する。
神経の変化が起きるためには、複数の神経修飾物質が特定の調合で放出される必要があり、どのように調合されるかは、好奇心や興味、どの程度エネルギーと時間をつぎ込んでいるかで決まる。
自分の気の向くままに、自分の家で、自分のペースで、自分の好きな時間に、自分の興味ある題材について調べる。そういうチャンスを一人一人に与えれば、だれもが楽しく学ぶことができる。
神経科学の知見に基づいて、脳が自らをどう調整して配線を書き換えるかを踏まえるならば、教室では基本的に、個々の生徒が自らの情熱の赴くままに広大な知識の世界を掘り進んでいくのがいい。
脳内に浮かぶ新しい考えはすべて、既に学んだ入力情報のごちゃまぜの中から立ち現れる。
脳は、自分にとって何が大事かに基づいて、資源を配分する。報酬や目標から外れていない限り、あなたが時間をかけて取り組む課題に合わせて、脳は自らを調整する。
脳は、変化しないものを無視する戦略を用いているからこそ、動くものや姿を変えるものを感知する能力を強化している。
脳は、回路を適応させるとき、次の瞬間に世界がどうなっているかを推測しており、新しい出来事があっても、その継続が予想されるのであれば注意を払うのをやめる。予測が裏切られたときのみ、そのデータを脳内で表現するために、脳はエネルギーを費やす。
愛する相手は、あなたの一部になっており、その人が存在することを見越して、脳は自らをつくり替えている。愛する人がいなくなると、その喪失によって、脳は平衡状態から大きく逸脱する。
脳は、一種の予測装置であり、世界の状態に関するモデルをつくって、適切な予測ができるように自らを変化させ、それによって予期せぬ出来事への感受性を最大限に高めている。
脳領域の生存競争から可塑性が生まれる。脳の地図、ニューロンの配線は、必要に応じて、常に書き換えられている。
脳に送る情報量が多いほど、脳内地図で広い領域を得る。
多細胞生物は、進化の末に、混沌の縁でバランスをとるというニッチを見つけた。
脳の領域間には柔軟性に差があり、それは入力情報の種類に応じて決まる。脳領域はそれぞれ異なる可塑性スケジュールで動いており、扱うデータが外の世界でどの程度変わるか,または変わらない見込みがあるかによって、可塑性の度合いが決まる。
柔軟性は階層化されており、最下層の情報が確立され学習され固定化される。
分子病理学的にアルツハイマー病とみなされる脳を持っていた修道女の3分の1に予想される認知症候群が現れていなかった。相当な高齢になっても、常に頭を使っていれば、新しい接続が生まれる。
あなたという人間は、これまで相互作用してきたすべて(環境、経験、友人、競争相手、文化、信念体系、時代)の中から立ち現れてくる。あなたが何者かは、そのすべてによって決まっている。
自らの信念も、主義主張も、切なる願いも、何から何まで、外の世界によって形づくられている。
ライブワイヤリングのおかげで、私たち一人一人が世界なのである。