いつまでも消えない痛みの正体 牛田享宏著 2021年9月青春出版社刊

(目次)

第1章 慢性的な痛みは脳が感じている

第2章 脳に働きかけて慢性疼痛を克服する

第3章 運動で痛みの悪循環から抜け出す

第4章 ケガや病気が治っても、なぜ「痛い」のか

第5章 慢性疼痛治療の今とこれから

 

 慢性疼痛とは、急性疾患の通常の経過あるいは創傷の治癒に要する妥当な時間を超えて持続する痛みが3~6か月以上持続する疼痛であり、その原因として、脳が「こういうことをされたときは痛い」ということを記憶していて、その記憶が痛みを感じさせている。つまり、慢性疼痛は、脳に刻まれた記憶が何らかのきっかけで呼び起こされ、脳が痛いと感じている。

 痛みの発症メカニズムとしては、次の3種類がある。

①侵害受容性疼痛

 ケガなどにより抹消神経センサーである侵害受容体が直接刺激される一般的な痛み

神経障害性疼痛

 神経そのものの損傷、疾患で発生する痛み。坐骨神経痛帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害。痛みの伝達、認識メカニズム障害に起因しているので痛みのコントロールが困難

③ノシプラスティックペイン

 組織や神経の明らかな傷害がなくて、神経過敏で痛みを生じる。

 ・線維筋痛症

  血液検査や画像診断で異常がないのに、体のあちこちに激しい痛みを生じる

 ・CRPS(複合性局初疼痛症候群Ⅰ)

  アロディニア:痛くないはずの刺激を痛みに感じる

  痛覚過敏:痛みを起こす刺激により余計に強く痛みを感じる

 

 脳の中で不快な情動と関係している前帯状回から脊髄の感覚神経のところに信号が伝わって、末梢神経から普通に入ってきた痛みの信号に影響を与える。つまり、末梢神経から普通に入ってきた感覚が、前帯状回からの信号によって、アクセルまたはブレーキをかけられて、辛い、悲しい、悔しい等の情動次第で、ちょっとした痛みが強い痛みになる。

 痛み刺激を持続的に受けることや、筋肉をギブス固定すること等により動かさないでいると、神経が性格を変え、誤作動を起こすようになる。

 感覚神経は単に感覚を捉えるだけではなく、内分泌器官でもあり、神経ペプチドを介してプロスタグランジン(炎症性発痛物質)を出させて、炎症を増悪させる。よって、神経が誤作動を起こす状態に変化していると、痛みを完全にコントロールすることが困難になる。

 

 この本が10年前に出ていれば、違ったかもしれないという想いがある。とっても残念だ。友人の妻を救えたかもしれないのに