人類は噛んで進化した ピーター・S・アンガ-著 河合信和訳 2019年9月原書房刊

(目次)

序章

第1章 歯はどのように機能しているか

第2章 歯はどのように使われるか

第3章 楽園の外へ

第4章 移り変わる世界

第5章 食跡

第6章 ヒトを人間にしたもの

第7章 新石器革命

第8章 自らの成功の犠牲者

 

 慢性退行性疾患のほとんどの原因は食のバランスの不一致によるとして、旧石器時代食を現代人は食べるべきとする主張については、人を取り巻く世界は常に変化してきたのであり、祖先の食も変化してきたのであるからナンセンスである。

 イヌイットは、オメガ脂肪酸を調節する遺伝子群に突然変異を生じた結果、血中脂質レベルを健康な範囲内に保っているのであって、オメガ脂肪酸を摂取しているから健康を維持しているというわけではない。

 我々の遠い祖先は草食動物ではなかった。早期ホモ属は、先行者であるアウストラロピテクスより短くて単純な腸を備えていただろうし、グルテンも自然に反するものではない。穀物は主食だった。オハロⅡ遺跡(2万3千年前)を残した人たちは、イネ科植物が栽培された1万年以上前から野生の小麦や大麦を食べていた。

 糖質制限食は正しいのだろうか?少なくとも、砂糖は毒だと言ってよさそうだ。