気持ちがラクになる がんとの向き合い方 高野利実著 2023年4月ビジネス社刊

(目次)

はじめに

第1章 がん患者の生活の悩みに答えます

第2章 がん治療の悩みや疑問に答えます

第3章 抗がん剤治療に関する不安を解消する

第4章 女性に多いがんの不安や悩みに答えます

第5章 進行がんでも「幸せな人生」をあきらめない

あとがき

 

【第1章】(略)

【第2章】

 血液検査では、CEACA15-3CA19-9などの腫瘍マーカー項目が測定されることがある。経過観察中にこれらの数値が上がってきたときは、がんの再発が疑われる。腫瘍マーカー、胸部・腹部のCT検査で見つけようとしているのは、遠隔転移だが、遠隔転移は根治が困難。PSA(前立腺がん)やCA125卵巣がん)では早期がん、局所再発でも数値が上昇するが、ほとんどの腫瘍マーカーでは、局所再発で数値が異常値となることはない。ただし、がんとは関係なく上がることもある(擬陽性)(P65~66)

 遠隔転移が見つかった場合は根治が困難なので、「癌とうまく長くつきあう」ことを目標として、主に抗がん剤などの薬物療法を行う。しかし、過去の臨床試験で、検査を繰り返し行うグループと症状が出てから検査や治療を行ったグループとの比較で、どちらのグループも命の長さに違いはなかった。よって、「症状のない遠隔転移」を早期発見・早期治療する意義は乏しい。腫瘍マーカーは、ある程度、遠隔転移が広がってから上昇する。よって遠隔転移を早期発見するために腫瘍マーカーを測る必要もない。逆に、擬陽性のときは不安になり不利益になる(P67~68)

 ただし、検査の精度が上がり、薬物療法も進歩した今の状況なら結果が違ってくる可能性はある。この点について、現在臨床試験中で2027年頃結果が出る(P68~69)

 現在の「術前後薬物療法」は、「できるだけ早期に治療を開始する」という趣旨で、遠隔転移が見つかる前に薬物療法を行うという考え方で行うものである(P70)

 遠隔転移のある進行がんでは、腫瘍マーカーの数値が高くなっていることが多く、体全体のがんの勢いを反映していると考えられる。しかし、腫瘍マーカーの数値を下げることやがんが小さくなること(CTの画像検査で確認)は究極の目標ではない。「いい状態で長生きできること」のほうが重要(P73~75)

 腫瘍マーカーは、「いくつ以上になると危険」というものではない(P78)

 再発の可能性はゼロではないが、化学療法後は、現時点で最善と考えられる治療をやり遂げたわけなので、基本的に治ったものと考えて、今まで通りの生活を取り戻し、これからの人生を歩んでいくのがいい。(P81)

 再発の不安と向き合うための方法(P82~83)

①自分の努力で避けられないことはそのまま受け止める(天命を待つ)

②再発率等の情報をある程度知った上で、それを冷静に客観視し、過剰に考えすぎない

③不安が強くなる状況や、和らぐ状況を客観視する(不安日記をつける) 

 再発した後は根治は難しいが、「がんとうまく長くつきあう」ことを目指す(P87)

 がんゲノム医療やプレシジョン・メディシンは、条件を満たせば受けることは可能だが、その結果で特別な治療を受けられる方は僅か。保険が適用される遺伝子パネル検査は、FoundationOne CDxNCCオンコパネルで、保険適用対象は、標準治療が終了となった固形がんの患者等(P99~100)

 「今ここにある医療」は、10年前の患者にとって「切望しながら手の届かなかった夢の医療」。そういう医療を受けられていることに感謝してみるとよいかも(P107)

【第3章】

 乳がんでは、術前薬物療法が主流となりつつある。手術前であれば、しこりが小さくなっていることを確認しながら薬物療法を行える。術前薬物療法の効果を厳密に評価したうえで、その効果が十分であれば術後薬物療法を軽くし、不十分なら強化する。術前術後の薬物療法を適切に行うことが遠隔転移を防ぐことにつながる(P138~139)

【第4章】

抗がん剤)(P166~167)

横綱クラス:効果大、副作用大

・タキサン系抗がん剤:パクリタキセルドセタキセル

・アントラサイクリン系抗がん剤:アドリアマイシン、エピルビシン

大関クラス

・エリブリン

・5-FU系内服抗がん剤エスワン、カペシタビン

前頭クラス

・ゲムシタビン、ビノレルビン 

 トリプルネガティブでは、抗がん剤が有効なことが多く、プラチナ系抗がん剤(カルボプラチン)も有効(P170)

【第5章】

 CTで確認できるがん細胞は、がん細胞が1億~10億個の塊(P185)

 遠隔転移がある場合、治療の中心は薬物療法だが、根治は難しい(というか、CTで病変が確認できなくても、がん細胞がないとは言えない)(P186)

 今は薬物療法も緩和ケアも進歩してきたので、進行がんでもいい状態で長生きできる方が増えた(P188)

 CT検査で、がんが小さくなるか、横ばいのときは、効果有と判断し、治療を継続する。1つの薬物療法を継続する期間は平均半年(P191)

 クリニックで行われている自費診療の免疫療法は、有効性が示されていない(P213)