免疫力が上がるアルカリ性体質 小峰一雄著 2022年3月ユサブル刊

(目次)

はじめに

第1章 酸性体質が病気をつくる

第2章 アルカリ性体質になるための食事術

第3章 アルカリ性体質になるための生活術

第4章 最新の虫歯・歯周病研究について

第5章 未来の健康生活

あとがき

 

 口の中に酸性の液体があった場合、その液体が電解質となって詰め物に使用された金属が溶けだし、溶ける前の金属と溶けた後の金属間に電位差が生じて電気信号が発生する。これをガルバニック電流という。

※電解液中で2種の金属を接触させたとき、2種の金属と電解液の間で電池が形成されて電流が流れる。水溶液中で鉄と銅を接触した場合、「銅 → 鉄 → 水溶液 → 銅」の順で電流が流れる。このとき、流れる電流は腐食の進展を意味しており、腐食時に形成される電池を腐食電池などと呼ぶ。異種金属接触腐食で流れる電流はガルバニック電流とも呼ばれる。(Wikipedia

※異種金属接触腐食が起こるとき、逆に自然電位が高い(貴な)方の金属では腐食が抑制される。これを利用し、腐食から守りたい材料に卑な材料を意図的に付加すれば防食の効果が得られる。このような防食法は犠牲陽極法として知られる。(Wikipedia

◎ガルバニック電流は、2種類の金属間で生じるものと定義されているので、著者の言う「溶ける前の金属と溶けた後の金属間に電位差が生じて」という部分は、そういう現象を生じるかどうかは別として、少なくとも所謂ガルバニック電流ではないことになる。

Wikipediaの論理からすると、「自然電位が高い(貴な)方の金属では腐食が抑制される」。では、著者の指摘する状態で、どちらが自然電位が高いのだろうか?元が同じ金属なのだから、いわゆる自然電位は同じではないだろうか?という疑問がある。

 

 「ガルバニック電流による磁場が脳に与える影響」として、味覚障害、有害ミネラル中毒が掲げられている。

◎しかし、これらの鉛、水銀、ヒ素カドミウム等が有害なのは当然のことであって、「ガルバニック電流」を云々するまでもないと思われる。

 

 小唾液腺は食事のタイミングとは無関係に唾液を分泌しており、小唾液腺が分泌する唾液は間質液(体液)の成分に近いと考えられる。そこで唾液PHを計測することで体全体のPHの状態を推測できる。

 酸性体質は、免疫力低下、慢性的な疲労感、栄養素の吸収不全、皮膚炎、口内炎骨粗しょう症生活習慣病を引き起こす。

 1931年、ドイツの生理学者Warburg博士が、「がんが無酸素や酸性条件下で発症あるいは増殖する」ことを発見した。

1924年、オットー・ワールブルクは、体細胞が長期間低酸素状態に晒されると呼吸障害を引き起こし、通常酸素濃度環境下に戻しても大半の細胞が変性や壊死を起こすが、ごく一部の細胞が酸素呼吸に代わるエネルギー生成経路を亢進させ、生存した細胞が癌細胞となる、との説を発表した。(Wikipedia

※悪性腫瘍細胞は有酸素下でもミトコンドリアの酸化的リン酸化よりも、解糖系でATPを産生する。ブドウ糖グルコース)は、解糖系で代謝されピルビン酸を経た後にミトコンドリアに入ることなく、乳酸発酵により最終代謝産物として乳酸に変換される。(Wikipedia

◎ワールブルクは「無酸素状態でがんが発生する」とは言っているが、「酸性条件下で発症する」とは言ってないのではないか?また、「悪性腫瘍細胞は、解糖系で乳酸を産生する」ので結果的に「酸性に傾く」ことはあるとしても、「酸性条件下でがんが増殖する」とは言ってないのではないか?

◎がんを発症すると乳酸の産生により酸性に傾くことはあるとしても、それは結果であって、「酸性体質だからがんを発症する」ということとは別の事柄である。原因と結果を取り違えているのではないか?

 

 著者のクリニックでの検査では、PH7.0以上(アルカリ性体質)は健康な方が多く、7.0未満は有病率が高い傾向にあった。PH6.2以下でがん患者が増加し、5台ではほとんどの方ががんを患っている。

◎これも同じ。相関関係はあるとしても、どちらが因でどちらが結果なのかは、これだけではわからないはずだ。

※理論的には血液を含む体液の酸塩基平衡は、呼吸により排泄される二酸化炭素と、腎臓の尿細管による炭酸水素イオンの生成量により決定されることが解明されているが、疾患をもつ場合や、食事の摂取が不十分の場合には、食事の種類や構成によって血液が酸性に傾くことがある。(ほか、薬物などの摂取によっても起こる)食事によって代謝性アシドーシス(血液を酸性化しようとする病態)が起こることも観察されており、また酸性の負荷が高く代謝性アシドーシスを起こす食習慣では骨密度を減らす影響があることや、心血管疾患のリスクを高めることが懸念されている。海外の栄養学的な疫学研究では、酸の多い食事は骨に悪影響があるとする結果が示されており、疫学に関する専門家によって食事指導が提案されている。(Wikipedia

※2007年にWHOは、タンパク質中の含硫アミノ酸メチオニンシステインの酸が骨のカルシウムを流出させるため骨の健康に影響を与えるため、カリウムを含む野菜や果物のアルカリ化の効果が少ないときカルシウムを損失させるため骨密度を低下させると報告した。このような過剰な食事性たんぱく質や塩化物、リンといった食物源による酸性の負荷に偏り、野菜や果物のようなアルカリ性の栄養素が多い食品をバランスよく食べていなければ慢性アシドーシスのリスクが上昇する。酸の影響は尿路結石の形成につながり、酸負荷の低下につながる肉の摂取量の減少は血圧や心血管に関わる死亡リスクを減少させる。(Wikipedia

◎「疾患をもつ場合‥には、食事の種類や構成によって血液が酸性に傾くことがある」ということなので、やはり因果関係は逆のようだ。

 

◎本書のサブタイトルは、「すべての病気の原因は酸性体質にあった!」とされているが、そもそもこの認識が間違っているんじゃないかと思う。酸性体質は結果であって原因ではない。人間の体には「恒常性」が備わっているので、普通はアルカリ性に保たれているが、それがうまくいかなくなっていることにより酸性の状態に陥っているし、そういうときは体も不調なので、その状態を「不健康」あるいは「病気」と呼んでいるということだと思う。

 

◎このように言ったからといって、第3章に提示されている「生活術」を否定しているわけではない。「酸性体質」を「不健康」「病気」と置き換えてみればわかる。ストレスも環境(農薬・電磁波等)も病気等の原因となりうる。運動による乳酸も限度を過ぎれば病気の原因になるだろう。

 

◎第5章の「微生物との共存」もそのとおりだと思う。「人間は腸内細菌に助けられて生きており、無菌状態では生きていくことはできません」という箇所はそのとおりだと思う。