(目次)
序文
序章 意識の問題
第1部 人間の心
第1章 意識についての意識
第2章 意識
第3章 「イーリアス」の心
第4章 <二分心>
第5章 2つの部分から成る脳
第6章 文明の起源
第2部 歴史の証言
第1章 神、墓、偶像
第2章 文字を持つ<二分心>の神政政治
第3章 意識のもと
第4章 メソポタミアにおける心の変化
第5章 ギリシアの知的意識
第6章 ハビルの道徳意識
第3部 <二分心>の名残り
第1章 失われた権威を求めて
第2章 予言者と憑依
第3章 詩と音楽
第4章 催眠
第5章 統合失調症
第6章 科学という占い
後記
訳者あとがき
イーリアスの登場人物は、意識ある心を持たず、内観も自我もない。神々が意識に変わる位置を占めており、神々が人々を動かしている。(=二分心仮説)
イーリアスは、アキレウスの行為とその結果についての物語であって、彼の心についての物語ではない。
比喩は、言語の土台であり、比喩とはよく知られた比喩後によって、あまり知られていない被比喩後を処理する関係である。言語は、比喩によって発達する。
意識は、言葉の比喩によって創造されたものであり、表現の具体的な比喩語とその比喩連想から生まれ機能的な意味でのみ存在する投影連想を投影する。
意識は、人類にのみ生じえたもので、言語が発達してから発生した。
脳は、右半球と左半球に分かれており、左半球は言語機能を持ち、左半球優位となっている。
右半球の主な機能は、過去の出来事が選びだされ、分類、比喩の統合を伴いながら、新しい状況下でどう行動するかを考え、指示することである。今日、右半球に残っている機能は組織化に関するものである。
神々の発言は、左半球のウェルニッケ野に相当する右半球の領域で瞬間的にまとめられ、それが前交連を通り、左側頭葉の聴覚野に話しかけたり、聞かれたりしていた。
中石器時代は、人口が固定化し、互いの関係も安定し、寿命が延び、区別しなければならない部族内の人数も増えた。そこで、名詞を使って、個々の人間に名前を付ける必要を生じた。
部族の一員が固有の名前を持つと、不在の時でも彼とその場を再現できる。名前によって特定の幻覚(神々の声)が特定の個人が発した声として一度認識されると、幻覚は個人の行動において、はるかに大きな役割を持った社会的相互作用となる。
BC1470年又はBC1180~1170年頃、テラ島火山噴火による大混乱の中で、二分心による神の声が役に立たないという事態を生じ、二分心による社会統制が崩壊した。
アッシリアは、恐怖による支配を試みて残虐行為を行った。
背信によって被征服者は生き延びたが、背信という欺きを行うには、アナログの自己を創造し、自分の中で、仲間に見える実際の行為や外見とは完全に異なる行為をすることや、完全に異なるものであることが可能でなければならない。
意識の起源は、①文字の出現により幻聴の力が弱まったこと、②幻覚による支配の脆弱性、③歴史の激変による混乱の中で、神々が適切に機能しなかったこと、④他人に観察される違いを内面的原因に帰すること、⑤叙事詩から物語化を習得したこと、⑥欺きは生き残るために価値があったこと、⑦少しばかり自然淘汰の力を借りたこと、あたりにある。(以上、第2部第3章まで)