医療AIの夜明け 岡田正彦著 2019年12月オーム社刊

(目次)

はじめに

第1章 まずは知っておきたい脳とAIの関係

第2章 コンピュータで病気の診断はできたのか?

第3章 AIは人間より正しい診断ができるのか?

第4章 治療はAIロボットがするようになるのか?

第5章 介護、リハビリ、看護、そして予防におけるAIの応用

第6章 個人情報がAIの未来を決める

第7章 AI医療の未来を考える

おわりに

 

 「コンピュータが電子カルテに書き込まれた複雑怪奇な専門用語を判読したり、患者のあいまいな訴えをきちんと聞き分けることができるようにならないと、本当に実用性の高いAIはつくれないだろう」と著者は主張されています。

 でも、AIの役割は、患者を診察する際に、それまでの患者の訴えから、どの病気を想定して、何を問診するか、何を検査すべきかを医者に提示することなのではないでしょうか。言わば、よくテレビに出てくる「総合診療科の名医」のイメージです。

 彼らは、患者の訴えとそれまでのデータから考えられる病気を想定して、質問や検査によって、それらの病気の可能性を1つずつ消していって、最後に結論に到達します。

 彼以前の医者は、それらの病気の可能性を想定できなかったために、本当の病気を見つけることができなかったのです。それが「誤診」とされるものなのでしょう。

 そこでは、AIは、診断する時点で与えられている患者の訴えや検査結果から、本当の病気を「診断」し「当てる」必要はないのです。その時点では、A病の可能性は70%でB病の可能性は20%で、C病の可能性は10%であるとするならば、AIに1つだけの診断を求めれば、最大でも70%の正解率しかないでしょう。

 要するに、著者のAIへの「期待」そのものが誤っているがために、「実用性の高いAIはつくれない」という結論になるのではないでしょうか?

 なお、本書は、だらだらとした記述が多く、今後、この方の別の書物を読む気にはなれません。

 例えば、第2章で「誤診が多い理由」について述べておられますが、結論は何なのでしょうか?

・医師が多忙であること

・医師の個々人の経験の範囲が狭く、かつ偏っていること

・骨折の診断は、手足の小さい骨や、腹圧な形の骨等では見分けるのが難しいこと

・同じ病気でも、症状に違いがあること

以上のようなことなのでしょうかね?