日本の地下で何が起きているのか

鎌田浩毅著 2017年10月岩波書店
(目次)
1 熊本地震と豊肥火山地域~いつ終息するのか
2 必ず来る南海トラフ巨大地震
3 活断層と首都直下地震
4 活動期に入った日本列島の活火山                    
5 富士山はいつまでも「美しい山」か
6 カルデラ噴火は起きるか
7 「想定外」に起きる災害への対処~知識から行動へ
終わりに~「大変動の時代」にこそ地球の知識


 太平洋プレートは年8cm、フィリピン海プレートは年4cm沈み込んでいる。高知県室津港の地盤は、巨大地震により地盤が隆起した後、同じ速度で地面は沈降してきた。現在に最も近い巨大地震の隆起量1.15mと1946年から等速度で沈降すると仮定すると、ゼロに戻る時期は2035年となる。これに5年の誤差を見込んで、2030年~2040年に南海トラフ巨大地震が発生すると予測できる。
 

直下型地震は、活断層の下10kmより浅い場所で起きる。陸のプレートに加わる巨大な力が地下の弱い部分の岩盤をずらして断層を作り、このずれが地表まで達すると活断層となる。首都圏は、北米プレートの下に、フィリピン海プレートがもぐり込み、さらにその下に太平洋プレートがもぐり込んでいる。
 

東京湾北部地震は、M7.3レベルで。地下20~30kmに震源があり、東京の下町で起きる。経済被害112兆円。震度7では、耐震補強のない木造住宅(1981年以前の建物)は10秒で倒壊する。立川断層帯は、M7.4。1万年~1万5千年周期だが、最後に動いたのは2万年~1万3千前年で今後30年以内の発生確率は0.5~2%。
 関東大震災の再来も考えられる。大正関東地震(1923年、M7.9)は、房総半島と伊豆大島の間を境とする2つのプレートがずれることで発生する。北米プレートの下にフィリピン海プレートがもぐり込んでいる箇所がずれる。

 富士山は、過去50年間隔で噴火してきたが、1707年の宝永噴火以来、300年間噴火していない。富士山の噴火による火山灰は、火力発電所ガスタービンの損傷、電線への付着による漏電や停電、浄水場の濾過装置へのダメージ、コンピュータ、飛行機へのダメージが想定される。南海トラフ巨大地震が、富士山の活動を誘発する可能性は低くない。

 日本列島には、10個以上のカルデラがあり、九州と北海道に集中している。屈斜路、支笏、洞爺、十和田、阿蘇山姶良、阿多、鬼界などである。屈斜路カルデラは日本最大のカルデラで、東西26km、南北20km。3万年前に形成された。
 

 阿蘇山カルデラは、東西18km、南北25kmで、4回の大噴火でできた。第一火砕流は27万年前、第四火砕流は9万年前に発生しており、阿蘇山では最大規模で、島原半島に達した。そのときの火山灰は、北海道東部に10cmの厚さで堆積している。

 日本列島では、最近12万年に18回のカルデラ噴火が発生しており、7000年に1回発生していることになるが、最新の鬼界カルデラは7300万年前のことなので、いつ大噴火が起きてもおかしくない。

 巨大噴火の前には規模の小さな噴火が多数起きる。噴火の前に、マグマの中で結晶が成長する現象からカルデラ噴火の準備期間を計算できる。マグマだまりの中で、数百年~数万年かけて結晶が成長する。
 
 まず、高知県室津港地震前後の地盤の上下変化量は次のとおりであり、南海地震は、最短で2034年、本命は2036年と予測されます。
  1707年(宝永地震M8.6)  ~1854年:1.8m隆起⇒0 年12.24ミリ沈降
  1854年安政南海地震M8.4)~1946年:1.2m隆起⇒0 年13.04ミリ沈降
  1946年(昭和南地震M8.0 ~    :1.15m隆起
   年12.64ミリ沈降で、90.94年 ⇒ 2036年
   年13.04ミリ沈降で、88.16年 ⇒ 2034年
 しかし、ここで0mとされているのは、模式的な数字であって、実際の数値ではないと考えられます。実際には、マイナスになったり、プラスの状態で次の地震が発生しているはずです。
 また、沈降速度は、厳密には一定ではなく、地震発生の直前時には急速に速度が低下するはずです。沈降速度の変化率を見れば、予測の精度が高まるのではないかと考えられます。

 巨大地震が、周期的に発生するとして、発生実績から次の発生を予測することも可能ですが、上記予測以上の精度が期待できるものでもありません。

 また、立川断層滞レベルの予測は周期性を確認するのが困難であり、ほとんど予測できません。

 相模トラフで発生する大正関東地震の再発は、プレート間の摩擦が原因なので、南海地震等の巨大地震と同じ考え方が当てはまるはずです。駿河湾の沈降については、以前週刊誌を賑わせていましたが、最近は見えません。しかし、これまでの実績からすると、200年周期説が有力であり、1923年の大正関東地震の次は、2123年頃となるので、差し迫った危機ではないと思います。

 富士山の噴火は、被害は半端ないが、「巨大地震に誘発される」ことが想定されているので、いますぐどうこうということではなさそうです。
 カルデラの巨大噴火は、巨大すぎて、対策の立てようがありません。発生したら、日本国滅亡を覚悟するしかなさそうです。