団塊の後

堺屋太一著 2017年4月毎日新聞出版

小説の形をとった氏の主張と受け止めて以下に記す。

(概要)

 一度目の日本は、明治、1860年代の敗戦、幕末維新の動乱期

 二度目の日本は、戦後、1940年代前半、太平洋戦争敗北

 三度目の日本は、2026年

 一度目の日本(明治の日本)は、倫理=正義を変えた。江戸幕府の天下泰平から強国へ。その裏付けとして、富国強兵と殖産興業を図り、精神的には進取の気性と勤勉努力を推進した。その結果、維新から30年で第一次産業革命(石炭でボイラーを沸かし、熱エネルギーを力エネルギーに変換)に成功し、明治末には第二次産業革命(電気と内燃機関産業革命)を手掛けた。しかし、第一次世界大戦の間に欧米で普及していた第三次産業革命(規格大量生産)には乗り遅れた。農村部に購買力がなく、大量販売の市場がなかった。一度目の日本は、1945年の敗戦で終わった

 二度目の日本(戦後日本)は、アメリカみたいな豊かな国を創りたいという思いから、アメリカを美化し、安全、平等、効率の3つを正義とする戦後の倫理観を採用した。その結果、1970年代に規格大量生産で大成功した。しかし、1990年代初頭のバブル崩壊と世界の冷戦構造の消滅により高度経済成長が終了し、戦後日本が傾いた。この間。官僚主導で、安全、安心、安定ばかりが行き過ぎ、倫理が偏ったため、日本人全体が意欲と冒険心を失った。世界では、第四次産業革命が勃興しつつある。

 三度目の日本は、楽しい国を目指すべき。第四次産業革命は、規格大量生産を超えた個性的で多種多彩な製品を、短時間に安価に提供するシステムである。これに対応するために、国家にもやわらかいシステムが必要であり、東京一極集中から道州制が必要である。例えば2都2道8州制。2都は、東京と大阪、2道は、北海道と南海道(沖縄、奄美群島)8州は、九州、中国・四国、近畿、東海、北陸・信越、西関東、東関東、東北で、交通機関重視の州分けとしている。消費税、燃料税、たばこ税を地方の財源とし、国防、外交、通貨管理、マクロ経済、基本法の施行、国家的行事、巨大技術開発等を国の権限とし、残りを地方の権限とする。したがって、文科、農水、経済、国交、厚労省を廃止する。国有財産を時価で地方に買い取らせ、地方が発行する地方債を国が保証することで、国債発行残高を半分に減らす。