私たちは今でも進化しているのか?

マーリーン・ズック著 渡会圭子訳 2015年1月文藝春秋

(目次)

序文  速い進化と遅い進化

第1章 マンションに住む原始人

第2章 農業はのろいか祝福か

第3章 私たちの眼前で生じる進化

第4章 ミルクは人類にとって害毒か

第5章 原始人の食卓

第6章 石器時代エクササイズ

第7章 石器時代の愛とセックス

第8章 家族はいつできたか

第9章 病気と健康の進化論

第10章 私たちは今でも進化しているのか

 

 私たちは、進化とは想像を超えた時間がかかるものと考えている。しかし、ヒトの遺伝子の多くが数千年で変化したという証拠がある。

 ハワイのコオロギは寄生バエという天敵がおり、コオロギの鳴き声を聞いて位置を探し、卵を産み付ける。1990年代末から個体数は減少を始め、2001年には1匹の声しか聞

けなかった。しかし、2003年になると、鳴き声を出さないコオロギがごろごろいた。鳴くコオロギと泣かないコオロギは、遺伝子が1つ違うだけだ。

 ガラパゴスのフィンチは、エルニーニョが生じる前はくちばしも体も大きい。エルニーニョ後は、くちばしも体も小さい種が多くなる。

 

 著者は、これらを短期間に進化が起こった例として紹介する。しかし、これらは、突然変異を伴わない適応に過ぎない。後者は明らかに、2つのタイプがあって、気候(雨が多いか少ないか、したがって木々が栄えるか否か、したがって種子が多いか少ないか)により、2つのタイプが増減するというだけだ。

 前者も、わずか20年の間に鳴かない変異を生じたというより、もともと鳴かないタイプが細々と生き延びていたのが環境が変わって多数派になったということかもしれない。そんなに簡単に、都合のよい変異が生じるとは考えにくい。

 ということで、この本は、第3章までで読むのを止めた。