MMTは何が間違いなのか? ジェラルド・A・エプシュタイン著 2020年12月東洋経済新報社刊

(目次)

日本語版によせて

第1章 現代貨幣理論の台頭

第2章 MMTの基礎理論と主権通貨発行による政府債務ファイナンスの持続可能性

第3章 MMT開発途上国への適用の限界

第4章 複数国際通貨システムにおけるドルの特権

第5章 「アメリカ第一主義」の金融政策とそのコスト

第6章 ミンスキーへの誤解~MMT派のマクロ経済政策と金融不安定性

第7章 MMTの幻想~MMT派の経済政策の矛盾

第8章 結論~進歩主義的マクロ経済政策の輪郭

訳者解説 MMTは実際の経済政策に適用できるのか

訳者あとがき

 

 訳者解説の中の「MMT派のフリーランチの帰結」が私の関心事なので引用する。

「主権通貨発行による費用なしの財政支出が当面可能だとしても、完全雇用が達成されると、財とサービスへのさらなる需要は、短期で見れば新たな供給によって満たされないため、他の用途に利用されている既存の労働と生産設備を再配分することによって、その需要を満たさざるを得ない。それゆえ新たな財政支出は、その他の生産の供給を必然的にクラウドアウトする。この追加的財政支出が実施されれば、このクラウディングアウトは、インフレーションを生じさせ得る。」

 

 なんて、つまんないことを言う奴だろう。インフレっぽい兆候が出たら財政支出を止めればいいだけの話じゃないか。インフレになる前の段階で(今の日本だね)財政赤字削減、財政均衡という主張が財務省やマスメディアによって声高に唱えられているこの日本で、インフレになったら困るから「MMTはだめだ」という学者の片棒を担ぐのはいかがなものか?

 まぁ、アメリカは今インフレっぽい動きがあるから、その時点でのバイデン政権の追加財政支出法案はどうなのかな?とは思うけどね。

 

 それともう1つ気に食わないことは、この著者は、たぶん、「進歩主義的マクロ経済政策」を標榜しているのだと思うけど、その中身がほとんど書かれてなくて、第8章でもMMT批判に終始していることかな。