ラストエンペラー習近平 エドワード・ルトワック著 2021年7月文藝春秋刊

(目次)

日本の読者へ

序章 「戦略のロジック」で中国を見る

第1章 最悪の選択「チャイナ4.0」

第2章 米中対決 勝者はどっちだ

第3章 習近平を「つまずかせる」には

第4章 軍事テクノロジーの逆説

第5章 軍事テクノロジーの逆説 エアパワー編

第6章 戦略のパラドキシカル・ロジック

 

 習近平を政権から引きずり下ろす方策として、著者は、習近平が主張した政策を実現できなくすることで、彼の実行力、判断力に疑念を生じさせ、その権威や政権担当能力を否定することだと主張する。そうなのかもしれないが、言い換えれば、このような間接的な手段しかないということでもある。(第3章)

 台湾は、アメリカに対し、「私たちを守ってくれ」と深刻に頼んでくるが、自分たちで自分たちの身を守ろうという気概はない。真剣な国防は、徴兵制度から始まるものだが、台湾は2012年に、徴兵制から志願兵への移行を決定し、国民の間で国防意識が薄れてしまっている。「台湾」を「日本」に置き換えて読むべきだろう。(第2章)

 海軍では、潜水艦と潜水艦のターゲットの2種類しかない。中国は、世界最大の艦船を建造することで、最大の標的を作り出している。(第4章)

 人々は、最新技術が戦場の常識を一新するので、兵器開発競争について行かないと戦争に勝てないと思い込んでいるが、そうではない。必要なのは、目の前にある技術の中から有用なものを見極め、採用することである。現在採用すべきは、ドローンとAIである。(第4章)(感想:中国企業EH:イーハングの存在は脅威である)

 日本は、10万トン級の中古のタンカーを改造して、海上保安庁の船として尖閣諸島の周辺に浮かべて、島を守るために使うといい。(第4章)

 戦争は平和をもたらすためのプロセスであり、戦争の終結は、①リソースの消耗→欠如、②国民のメンタリティの変化(厭戦気分等)によりもたらされる。

 平和は、戦争の原因となる。平和な時に、①人々は、戦争を恐れない、②脅威に注意を払わず、何の準備もしないことで、攻撃を受けやすくなる。(第6章)

 日本は、②の状態だろう。