中国の行動原理 益尾知佐子著 2019年11月刊

(目次)

序章 国内力学が決める対外行動

第1章 現代中国の世界観

第2章 中国人を規定する伝統的世界観

第3章 対外関係の波動

第4章 政経分離というキメラ

第5章 先走る地方政府

第6章 海洋問題はなぜ噴出したか

終章 習近平とその後の中国

 

 「中国のすべての陸上国境問題を検討したMITのテイラー・フレイヴェルによれば、中国はこれまでの交渉の中で、係争地域の半分以上の面積を相手方に譲り、清王朝の最大版図のうち340万平方キロメートルを放棄している。」

 「インドの外交研究所のサナ・ハシミは、中国は小国には大きな譲歩を行い、外交上の味方を増やそうとするが、自国への服従が期待できず、ライバルとみなす隣国には強硬な姿勢で臨むと分析する」

 「どちらの研究からも、中国が領土について、とくに強欲という結論は導き出せない。中国は、一般原則として、各国の主権を平等とする近代主権国家体制を受け入れ、それにかなり忠実である。」

 

 著者は、東大院卒の中国問題の専門家。一方、先の「驚きの世界史」の著者は、関西学院大卒の歴史ブロガー。本書の論理は精緻である。細部はよく見えている。しかし、根本的なことを見失っていないだろうか?