消えた歌姫 中森明菜 西﨑伸彦著 2023年4月文藝春秋刊

(目次)

序章 デビュー四十周年

第1章 スター誕生!

第2章 家族の肖像

第3章 二人の歌姫

第4章 出逢いと聖域

第5章 狂い始めた歯車

第6章 愛の難破船

第7章 疑心にさいなまされて

第8章 混迷の九十年代

終章 復活への道筋

 

 徐々に取り巻きの質が悪くなってるってところかな?

遺伝子 親密なる人類史(上) シッダールタ・ムカジー著 2018年2月早川書房刊

(目次)

プロローグ 家族

第1部 「遺伝といういまだ存在しない科学」 遺伝子の発見と再発見(1865~1935)

第2部 「部分の総和の中には部分しかない」 

    遺伝のメカニズムを解読する(1930~1970)

第3部 「遺伝学者の夢」 遺伝子の解読とクローニング(1970~2001)

 

【プロローグ】

 世界を根本から揺るがすような3つの科学的概念が20世紀を3等分した。原子と、バイトと、遺伝子だ。3つの概念の最も重要な類似点はその考え方だ。いずれもより大きな全体を構成する基礎的要素であり、原子は物質の、バイト(ビット)はデジタルデータの、遺伝子は遺伝と生物学的情報の基本的な最小限の単位である(P24~25)

 物質も、情報も、生物学も本質的には階層的構造だから、全体を理解するにはその最小の部分を理解することが不可欠だ(P25)

 ここでいうバイトとはより一般的かつ神秘的な概念のことだ。自然界のあらゆる複雑な情報は、「オン」「オフ」の状態についての情報だけを含む個々の情報の総和として描写することができる。あらゆる粒子、あらゆる力の場、さらには時空そのものすら、その機能と意味と存在そのものをイエスかノーかの答え、二者選択、ビッツから引き出している。あらゆる物理的なものは理論上、情報理論的なのだ、バイト(ビット)は人が考え出したものだが、その根拠となるデジタル情報の理論は美しい自然法則なのだ(P25原注)

【第1部】

 1835年、ビーグル号は、ガラパゴス諸島に向かった。そこで、ダーウィンは、多くの小鳥を発見した。1837年春、それらは13種のフィンチであることが判明した。ダーウィンは、すべてのフィンチが共通の祖先の子孫ではないかと着想を得た(P56~59)

 1837年7月、ダーウィンは、いわゆるBノートに、祖先の幹が枝分かれして、その枝がさらに小さな枝に分かれていき、やがて現在の数十の動になるような図を描いた。キリスト教の種形成の概念では、神が絶対的な中心に据えられており、神によってつくられたすべての動物が創造の瞬間に外に向かって放されたとされていた。よって、その発想が、神への冒涜であることをダーウィンも承知していた(P59~60)

 1838年10月、ダーウィンは、人口論(トマス・ロバート・マルサスの匿名の論文)から自然選択という状況のもとでは有利な変異体が生き残り、不利な変異体が死に絶え、その結果、新しい種が形成されるとの着想を得た(P62)

 1855年夏、アルフレッド・ラッセル・ウォレスが、ダーウィンの未発表の説と極めて近い内容の論文を発表した。1858年6月、ウォレスは、ダーウィンに自然選択による進化についての自説の概要をまとめた草稿を送った。両者の説の類似に驚いたダーウィンは、旧友のライエル自分の原稿を送り、ライエルは、両者ともがその発見の功績者として認められる方法を助言し、1858年7月、両者の論文はロンドン・リンネ協会の会合で共同の研究発表として読み上げられたが、聴講者の感銘を得なかった(P64~65)

 1859年11月24日、ダーウィンの「種の起源」がイングランドの書店に並び、1250部の初版が初日に完売した(P65~66)

 自然選択説の成立には一見矛盾する2つの事実が同時に真実でなければならなかった。1つ目は、短いくちばしの「正常な」フィンチがときおり大きなくちばしの変異体を作り出すことで、2つ目は、いったん生まれたら、大きなくちばしのフィンチは自分の特徴を子に伝え、変異体を子孫に定着させなければならないことだ。ダーウィンの理論が機能するためには、遺伝は不変と不定、安定性と多様性という性質を同時に持っていなければならない(P67~68)

 ダーウィンは、父親と母親からの情報が胎児の中で出会い、絵の具のように混じりあうと考えた(パンゲン説)。しかし、もしすべての世代で遺伝形質が融合し続けるなら、どんな変異体であれ、それが交雑によって薄められていくはずだ(フリーミング・ジェンキン:数学者兼技術者:エディンバラ)(P72)

 雑種とは、対立形質のうち、表に現れる優位の性質と、表に現れない劣性の形質の混合物なのだとメンデルは気づいていた。メンデルは1857年から1864年にかけて、何ブッシェルものエンドウマメの鞘をむき、黄色い花、緑色の子葉細胞、白色の花といったような交雑実験の結果を表にしていった。結果には驚くほどの一貫性があった。メンデルの実験結果から、遺伝は親から子へと受け渡される個別の情報の粒子でしか説明できないということだった。1865年2月8日、メンデルはフォーラムで二部構成の自身の論文を口頭で発表した(P82~84)

 1897年、フーゴ・ド・フリース(蘭:植物学者)は「遺伝性の奇形」において、それぞれの形質は1つの情報粒子に制御されていると論じた。1900年春、友人から送られてきたメンデルの1865年の論文の中に自らの疑問に対する答えを見つけたが、その論文は自分の独自性を脅かすものでもあった。慌てたド・フリースは、1900年3月植物雑誌についての論文を大急ぎで出版したが、メンデルの実験については触れなかった(P93~94)

 同年、カール・コレンス(独・植物学者)が、エンドウマメとトウモロコシの雑種についての実験結果を発表したが、書かれていたのはメンデルの実験と全く同じだった。エーリヒ・フォン・チェルマク=ザイゼネック(大学院生)もメンデルの法則を再発見した(P94~95)

 ド・フリースは、オオマツヨイグサの群生から5万個の種子を栽培したが、その過程で800の新たな変異体を発見した。この変異体を彼は「突然変異体」と名付けた。こうした突然変異体こそが、ダーウィンのパズルの欠けたピースに違いなかった。自然発生的な突然変異体の発生と自然選択を組み合わせたなら、ダーウィンの冷徹な進化のエンジンが自動的にかかることになる(P96)

 1883年、フランシス・ゴールトン(ダーウィンの従弟)は「人間の能力とその発達の研究」を出版し、その中で人類を改良する戦略(優生学)について記した。最適な人間を選択的に増やしたならば、自然が無限に長い年月をかけて達成しようとしてきたことを、ほんの数十年で達成できるのではないか。その目的を達成するために、ゴールトンは、強者だけを選択的に交配させることを提唱した(P100,101,113)

 1909年夏、ウィルヘルム・ヨハンセン(植物学者)が遺伝子(gene)という新語をつくった。遺伝子は遺伝情報を運ぶという作用によって定義されていた(P110)

 メンデルの最初のエンドウマメ実験と、裁判所の承認によるキャリー・バックに対する断種手術の間には62年しかない。しかしこの60年という短い時間に。遺伝子は植物学の実験における抽象概念から、社会を統制するための強力な道具へと変貌した(P129)

【第2部】

 1890年代、テオドール・ボヴェリ(独:発生生物学者)は、遺伝子は染色体の中に存在すると提唱した。ボヴェリの仮説は、2人の科学者(ウォルター・サットンとネッティー・スティーブンス)の研究で裏付けられた(P138~139)

 トマス・モーガン(米:細胞生物学者)は、1905年ごろからショウジョウバエを用いた研究を開始した。モーガンはいくつかの遺伝子があたかも互いに連鎖しているかのようにふるまっていることを発見した。遺伝子が物理的に互いに連鎖している。遺伝子は、染色体というパッケージに入っている。遺伝子は、単なる理論上の単位ではなく、細胞の中の特定の場所に、特定の形で存在する物質的な物だった(P139~142)

 モーガンの実験は、同じ染色体上で物理的に連鎖している遺伝子が、一緒に受け継がれることを示した。しかし連鎖には例外がある。ごくまれに、遺伝子が連鎖を解いて、父親由来の染色体から母親由来の染色体に移ることがあり、その結果、青い目をした黒い髪の子供や、反対に、黒い目をした金髪の子供が生まれる。「乗り換え」である(P141~143)

 19世紀末の生物科学の世界では、発生学、細胞生物学、種の起源、進化等がテーマとなっていた。これらの疑問に答えるには「情報」が欠けていた。遺伝子は、こうしたすべての疑問に対する潜在的な回答を一気に提供できた(P149~150)

 1918年、ロナルド・フィッシャー(統計解析分析官、数学者、医学者)は、「メンデル遺伝を仮定した場合に血縁者間に期待される相関」において、それを司る3つか5つの遺伝子の効果を混ぜ合わせたなら、ほぼ完璧に連続した表現型を作り出すことができることを発表した

 テオドシウス・ドブジャンスキー(ウクライナ出身、米:生物学者)は、1943年9月、多様性と選択と進化を1つの実験で説明するために、期待を満たした容器の中に、遺伝子配列がABCとCBAという2種類のショウジョウバエの系統を1対1の比で混ぜて入れ、それらを密封し、1つの容器は低温にさらし、もう1つを室温に置いた。4か月後、寒い容器ではABCが2倍に増え、室温の容器では逆の比になっていた。この実験により、進化の決定的要素が捉えられた。遺伝子配列の異なる変異体を自然に持つ生物集団に温度という選択圧が加わると最も適応力の高い集団が生き残り、最終的に新しい遺伝子構成を持つ集団が誕生した(P155~156)

 個体の形や運命を決定づける遺伝、偶然、環境、変化、そして進化の相互作用の本質は、次のように表現できる。 遺伝型+環境+誘因+偶然=表現型(P158)

 新しい種が誕生するためには、交雑を不可能にする何らかの要因がなければならないが、地理的な孤立はその要因となりうる。(P160)

 自然界では遺伝的多様性が存在することは普通の状態であって、人類優生学者の考えとは異なっており、自然は遺伝的多様性をなくすことを望んでいない。むしろ、遺伝的多様性は生物にとって欠くことのできない蓄えであり、不利益よりはるかに多くの利益をもたらす。①多様性がなければ、生物は最終的に進化する能力を失う。②突然変異も多様性の一つに過ぎない。野生のショウジョウバエの集団では最初から優れた遺伝型というものは存在せず、どの遺伝型のショウジョウバエが生き残るかは、環境及び環境と遺伝子の相互作用で決まる。③優生学者は表現型によって選択しようとするが、個体の表現型が遺伝子と環境、偶然の結果であれば、その方法は間違っている(P161~162)

 肺炎球菌には多糖類でできた滑らかな皮膜を細胞表面にもつS株(smooth)と、表面がざらざらしたR株(rough)があり、S株は免疫系の攻撃を免れている。1920年代初め、フレデリック・グリフィス(英:生物学者)は、病原性のあるS型の菌を加熱して死滅させたものと生きたR型の菌を混ぜ合わせたものをマウスに接種したところマウスは発病して、すぐに死亡した。死亡したマウスでは、R型の菌がS型に変化していた。死滅していたS型の菌の残骸と接触しただけで病原性の因子である滑らかな皮膜を獲得していたのだ(形質転換)。しかもその形質転換した細菌の皮膜は子孫に受け継がれていった。このことの最も簡明な説明は、遺伝情報が化学物質として菌から菌へと受け渡されるというものだ(P166~167)

 1926年冬、ハーマン・マラーが低い線量のX線をあて、交配したところ、新しく生まれたショウジョウバエに数多くの変異体が存在していた。放射線によりショウジョウバエの突然変異率が上がるという結果は、①遺伝子は物質でできていること、②ゲノムの完全なる可鍛性を示していた(P169~171)

 ヘルマン・ヴェルナー・ジーメンス(独:皮膚科医)は、遺伝と環境の影響をほどくため、二卵性双生児と一卵性双生児の比較における一致率に着目した。同じ形質を持つ双子の割合である(P188~189)

 生命とは化学と言えるかもしれないが、科学の特殊な状況だ。生物は、かろうじて起こすことのできる化学反応のおかげで存在している。反応性が高すぎれば、我々は自然発火してしまうだろうし、反応性が低すぎれば、冷え切って死んでしまう(P195~196)

 核酸は、1869年、フリードリヒ・ミーシャ―(スイス:生化学者)が発見したが、昨日は謎のままだった(P196)

 1940年春、オズワルド・エイヴリー(米:細菌学者)は、グリフィスの形質転換の実験の主な結果が正しいことを確かめた。8月初め、エイヴリーは、コリン・マクロードとマクリン・マッカ―ティ(助手)とともに、フラスコ内で形質転換を起こすことに成功した。10月には、滑らかな菌をすりつぶした液に含まれる化学物質のふるい分けをはじめ、さまざまな物質を丹念に分離して、それぞれの物質に遺伝情報を運ぶ能力があるかどうかを調べた。結果、形質転換を止めるための唯一の方法は、菌をすりつぶした液をDNA分解酵素で処理して、DNAを壊すことだった。DNAについてのエイヴリーの論文は、1944年に発表された(P198~200)

 ヘモグロビンAは、四葉のクローバーのような形をしており、うち2つはαグロビン、残り2つはそれとよく似たβグロビンというたんぱく質でできている。これら4つの葉はそれぞれの中心に鉄を含むヘム(化学物質)を1つずつ握っている。ヘムは酸素と結合することができ、4つの葉すべてに酸素が1分子ずつ結合すると、4つの葉がサドル取付金具のように酸素をきつく締めつける。ヘモグロビンが酸素を放出する際には、4つの葉の締め付けが緩む。こうした鉄と酸素の結合と分離(周期的な酸化と還元)によって、酸素は効率的に組織に運ばれる(P205)

 ヘモグロビンは、その形のおかげでそうした機能を果たすことができる。分子の物理的構造が化学的性質を可能にし、分子の化学的性質が生理機能を可能にし、分子の生理機能が最終的に生物学的活動を可能にしている。生物の複雑な働きは、こうしたいくつもの層の重なりとして理解できる(P205~206)

 三次元構造をもつ小さい物体にさまざまな角度から光をあて、できた影を記録することで、一連の二次元イメージから1つの三次元構造が浮かび上がる。X線回析はこれと同じ原理で、分子の世界で分子に光をあてて影(X線の散乱)をつくり出そうとする。ただし分子は液体や気体の形で不規則に動き回っているので動く影しか得られない。そこで、溶液に溶けている分子を結晶化することによって、原子の位置が固定され、影は一定となり、格子状の結晶は規則正しい回析可能な影をつくる。ライナス・ポーリングとロバート・コリー(カリフォルニア工科大)は、この技術を用いて、いくつかのたんぱく質の構造を解明した(P207)

 モーリス・ウィルキンズ(ニュージーランド出身、ロンドン大キングズ・カレッジAD)は、この技術をDNAに応用しようとした(P206~208)

 ロザリンド・フランクリンは、ウィルキンズの研究室に入ったが、両者は敵対関係に入った。DNAを写真に収めるのは難しかった。DNAは水分が含まれているときと、乾いているときで形状が異なり、実験室の湿度の変化によって、緩んだり、縮んだりした。フランクリンは、塩水の中で水素の泡を発生させる独創的な装置を使って実験室の湿度を調節し、DNAの水分量をあげたところ、DNAの繊維は永久に緩んだように見えた。数週間後、彼女は、くっきりしたDNAの写真を撮影できた(P208~211)

 1951年春、ウィルキンズは、ナポリ臨海動物実験所で講演をしたが、最後のスライドにDNAのX線回析の初期写真があり、X線回析という簡単な方法でDNA結晶の三次元構造の解明ができることを示していた。聴講していたジェームズ・ワトソンは、そのことに気づき、マックス・ベルツの研究室(ケンブリッジ大)への移籍を希望した。ベルツは分子の構造を研究しており、彼の研究室に行くことが、ウィルキンズの写真に近づく早道だった。そこにフランシス・クリックがいた。(P212~213)

 1951年4月、たんぱく質のヘリックス構造についてのポーリングの論文が発表された。ワトソンとクリックは、ポーリングの模型はどの原子がどの原子の隣にいたがるかを見極めた結果ではないかということに気づき、これをDNAの構造解明に応用しようとした(P215~216)

 1951年11月21日、フランクリンは、キングズ・カレッジで講演し、その中で、「数個の鎖から成る大きならせん構造」、「外側にはリン酸がついている」など大きな概念的革新について話していた。講演に招待されていたワトソンは、フランクリンの予備的な考えを理解し、大急ぎでケンブリッジに戻り、模型づくりに取りかかった。あのデータから示唆されるのは、鎖は2本か、3本か、4本だった(P217~218)

 1953年1月、ポーリングとロバート・コリーが論文を書き、その暫定的なコピーをケンブリッジに送ってきた。だが、論文に描かれた構造は、何かがおかしかった。ポーリングの模型には、リン酸をくっつけておくためのマグネシウムの「のり」はなく、その構造はかなり弱い結合によってまとまっているとされていた。それはエネルギー的に不安定だった。

 1952年5月2日、フランクリンとゴズリングは、DNA繊維にX線をあて、技術的に完璧な写真を得た。写真にはらせん構造が写っていた。その写真をウィルキンズはロザリンドの許可を得ることなく、ワトソンに見せた。写っていたパターンは、驚くほどシンプルだった(P222~224)

 リン酸の骨格が内側を向いている場合は、塩基(A,T,C,G)は狭い空間に収まらなければならず、お互い同士がうまく嚙み合わなければならなかった。1950年、エルウィン・シャルガフ(コロンビア大:生化学者)は、DNAの塩基は互いに関係しているに違いないと主張していた。彼がDNAを粉々にしてその中の塩基の量を調べてみると、AとCの量、CとGの量がいつも、ほぼ等しかった(P224~225)

 1952年冬、キングズ・カレッジでの研究を調査するための視察委員会がつくられた。ウィルキンズとフランクリンは、DNAに関する自分たちの最新の研究についての報告書を準備し、そこに予備的な測定結果を盛り込んだ。委員会のメンバーだったマックス・ベルツは、報告書のコピーをワトソンとクリックに渡した。1953年2月28日、ワトソンはらせんの内側には異なる塩基同士の対があるのではないかと考え始めた。AとG、CとGはの塩基対はらせんの中心を向いた状態で、簡単に重ねられることに気づいた(P225~226)

「超小型原子炉」なら日本も世界も救われる! 大下英治著 2011年11月ヒカルランド刊

(目次)

はじめに これまでのものより<超安全な原子炉>が実用化されている

第1章 日本のナショナルプロジェクトを愚弄し続けた反骨の男服部と原子力との出合

    い

第2章 世界のスタンダード「原発の安全基準」を作ったのは服部だった!

第3章 技術屋は必要なし、すべては経済原理‥浜岡原発建設への危ない道

第4章 これまでゴミだった「ウラン238」を使用~夢の高速増殖炉もんじゅ」開発

    に参画した服部

第5章 ”大型・複雑化・ハイコスト”こんな原発ではダメだ~理想の形を求め続ける服    

    部の眼にとまった「乾式再処理法」とは?

第6章 超巨額の予算投入でも「六ケ所村施設」「もんじゅ」「ふげん」いまだ稼働せ

    ずの怪~日本政府の”狂気の沙汰”

第7章 燃料無交換の金属棒、ナトリウム冷却材、自然停止する炉心~安全な「超小型

    原子炉」だけが世界を救う

第8章 カプセル収納型の夢の発電機~1万キロワットの超小型原子炉「ネイチャー・

    セル10」

 

※著者名から告発型の内容であることが推測され、私が求める中味はないだろうと懸念していたが、案の定だった。目次と本文を少し拾い読みしただけで、とっとと退散した

 

超小型原子炉の教室 苫米地英人著 2022年7月cyzo刊

(目次)

はじめに

第1章 脱炭素社会の圧力

第2章 新旧交代

第3章 原子力の真実

第4章 超小型原子炉

第5章 原子力と安全保障

おわりに

 

【第1章】【第2章】(略)

【第3章】

 基本的に原子力発電そのものは最新の技術で運用されれば、震災後のようなことが起きない限り、それほど危険なものではない(P88~89)

 商業原子炉に原子爆弾のような核爆発のリスクはない。原子爆弾と原子炉ではウランの濃縮度が一桁違う(P89)

 核爆発が起こるためには、高濃度のウラン(ウラン235濃度20%以上のもの)が必要だが、原子力発電所で使用されるウラン235は、濃度3%~5%。核爆発は全エネルギーを1回の爆発で放出するようつくられているため、その燃料は高密度かつ均一な球体構造をとることが必要。原子炉では、エネルギーを安定的にゆっくりと取り出せるよう核分裂の速度をコントロール⇒100万KW発電では、1キロのウラン235を8時間かけて核分裂させる(P89~90)

 天然ウランでは、ウラン235は0.7%しか含まれないので、濃縮により、濃度をあげる(P90)

 東日本大震災時に福島第一原発の原子炉がメルトダウンしたのは、原子炉を冷やすための冷却水がなくなったため。原子炉が停止し、核分裂の連鎖反応が止まっても、既につくられた放射性物質が崩壊するときに出る崩壊熱が、放射性物質が崩壊しきる(放射性物質半減期)まで発生し続ける(P91~92)

【第4章】

 小型モジュール炉(Small Modular Reactor:SMR)は、小型原子炉の一種で工場でつくって規格化できる原子炉を現地に運んで設置する。出力小。設置が簡単で、炉全体を冷却材の中に沈めてしまうので、安全性が極めて高い(P129)

 2021年11月、ニュースケール・パワー社(米)製作のSMR12基を、ルーマニアが導入することを発表(P130)

 

※このところウラン採掘会社の株価が上昇していることや、火力発電の代替としての原子力発電、小型原子炉の安全性などについて関心があったのでこの本を読んでみた。なので、それ以外の事柄への記述については割愛した。

※ニュースケール・パワー社は、SPACにより上場している模様だが、ティッカーシンボルは分からなかった。

CCJ社は、Forward PE    63.46、2016年から21年までずっとマイナス成長で、2022年にようやく26%の売上成長となっており、今後の収益拡大のかなりの部分を織り込んでいる可能性があることや、現在の株価が2007年4月以来の高水準にあることなどから投資するにはリスクが大きいので、とりあえず断念した。

 

米国式投資の技法 広瀬隆雄著 2013年12月東洋経済新報社刊

(目次)

まえがき

序章 1990年代のシリコンバレーとMarket Hack流投資術が編み出されるまで

chapter1 Market Hack流投資術

chapter2 ポスト団塊ジュニア時代のネストエッグ戦略

chapter3 デイトレーダーへの道

chapter4 長期投資のコツ

chapter5 2014年の投資機会

 

【序章】(略):読み流していい

【chapter1】(重要)

①営業キャッシュフローのよい会社を買え(P24~)

・営業キャッシュフローは毎年着実に増えていることが望ましい(P24,P26)

・営業キャッシュフローは会計的に一番ごまかしにくい(P25)

・営業キャッシュフローはその年の純利益より大きくなければならない。

 そうでない場合は粉飾のリスクがある(P27)

・営業キャッシュフローが15~30%ある会社を狙え(P27)

・BUY&HOLD戦略は、放っておいてもどんどんキャッシュを生み出すP27 のような企業  

 でこそ意味のある投資戦略(P34)

 BUY&HOLD戦略とは、株式を購入して長期で持ち続ける投資法(P34)

 

◎P36 以下のCOLUMNのうち④⑤は、公表されているデータからこれらを見ることは無理のように思う。⑥のDSO(売掛金の回収に要した日数)に着目することは一理あるが、DSOは売掛金/1日当たりの売上高の比率なので、結局、「売掛金/売上高の比率」に帰着する。

売掛金/売上高と棚卸資産/売上高の比率は、小さい振幅の範囲内で推移するのがふつうである。これらのいずれかの数値が急速に増加している企業は、何か良からぬことが起こっている可能性がある。

売掛金の場合は、回収不能となった売上債権が償却されていないことや架空売上があったこと(不良債権の存在)等が疑われるし、棚卸資産の場合は、売れ残り商品がいつまでも計上されていること(不良資産の存在)等が疑われる。

 

保有銘柄の四半期決算のチェックを怠るな(P45~)

・次の決算発表日くらいは知っておくこと(P44)

・コンセンサス予想(EPSと売上高)を調べる(P45)

・よい決算とはEPS、売上高、ガイダンスの項目すべてでそれぞれのコンセンサスを上回ること(P50)

・上場まもなく決算を2回連続でしくじった会社の株は売れ(P50)

IPOに際して主幹事証券は「上場後初の決算は絶対よい決算にならないといけません。だから業績の見通しは、あらかじめ大幅にサバを読んだ、楽勝に達成できる低い数字で語ってください」と経営者に念を押します。だからのっけから決算でズッコケるというのは、あってはならないことなのです(P50)

◎実のところ、私は、決算発表日や決算の結果は、X(ツイッター)のフォローしている人のツイートで知ることが多く、自分で探す作業は省いている。

◎上場後間もない会社(IPO銘柄)で、上場直後に人気化し大きく上昇した会社の多くは、その後、長期間上場時の株価を下回る結果となっているようだ。IPO銘柄は割高な価格で上場され、その後人気化してさらに割高となっていることが多い。したがって、人気化の波にうまく乗ることで短期間にキャピタルゲインを得ることは可能だが、時間の経過とともに株価下落の可能性も高い。

 

・プロは「この株、どうかな?」と思ったら、まず少し株を買ってみる(打診買い)その理由は、実際にポートフォリオの中にその銘柄を入れたほうが、調査に身が入るし、その企業のことを早く理解できるからです(P53~54)

◎この手法は、(ノンプロの)私も使っています。投資資産全体の1%程度の金額で「打診買い」をしています。理由は著者の言うとおり。失敗したときの「ロスカットに慣れる」という副次的効果もあります。

 

③業績・株価の動きが荒々しい銘柄と、おとなしい銘柄をうまく使い分けろ(P54~)

◎うーん、どうでしょうね?

 

分散投資を心がけろ(P62~)

個人投資家10~16銘柄くらいに抑えたい(P62)

・一般に、銘柄はある程度分散したほうがポートフォリオのリスクと期待されるリターン(収益)のバランスはよくなります。20銘柄を超えたあたりでは、さらにもう1銘柄追加することによる効果はほとんど感じられないほどに小さくなる(P62~63)

◎「分散」は、指数に連動するETFを持つことでも得ることができる。

 

・図表24のグラフは、景気や金利の環境がどういう状況のときに、それぞれの業種が株式市場で人気になるかを示したもの(P63,64)

◎このグラフは、ある時点での景気や金利水準に、現在のポートフォリオがマッチしているかの検証と、今後、どこに投資をするかを検討するときに役立つ。(実のところ、それほどうまく使いこなせているわけではない)

 

・リスクには2つの意味がある。①価格変動(ボラティリティ)②金融リスク(P65)

・金融リスクは3分類される。①流動性リスク②信用リスク③市場リスク(P65)

 

⑤投資スタイルをきちんと使い分けろ(P66~)

・グロース投資とは、その企業が市場平均に比べてより高い収益成長が見込める場合、株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)などの水準を気にせずに投資する手法(P68)

◎PERについては、春山昇華氏が丁寧な考察をされているので、それを参照するとよい

 

・グロース株投資で株を買った直後から利が乗り始めないのなら、銘柄選択や買うタイミングを間違った可能性が高い。すぐ処分せよ(P69)

・早めの損切りが断行できない人は、グロース株投資をするべきではない(P70)

◎新たに株を買ったら、損切りする水準を考えて、逆指値売りの注文を出しておきます。後は機械がやってくれるので、人間(自分)の感情を排除できます。

 

・グロース株投資の尺度は、①EPS成長率、②レラティブ・ストレングス、決算のサプライズ(P70~71)

◎①のEPS成長率は、ブレが大きく使いづらいので、売上高成長率を使っています。

 

・バリュー投資とは、株価がその企業の内在化値に比べて割安に取引されている時を見計らって投資するスタイルである。バリュー投資で言うよい会社とはワイド・モート銘柄であり、卓抜した防御力を持ったビジネスを行う会社を指す。(motoは中世の城の堀の意。城池)ライバルの参入を撃退する際、城池になる要素(参入障壁)は、次のとおり(P71~74)

①事業規模がバカでかい

市場占有率が圧倒的である

③構造的競争優位(=多くの場合低コストになる特別な秘密を持っている)

④太刀打ちできない無形資産(ブランド)

ネットワーク効果

⑥ユーザーや顧客にとって乗り換えコストが大きすぎる

・成長株へ投資する際、競争優位の源泉となる新技術や新製品は、ワイド・モートとは無関係だ(P74)

◎参入障壁の重要性は、バリュー投資に限りません。グロース投資では、比較的長期間の成長を前提として企業価値を推し量っているのですから、成長の源泉となっている新技術・新製品等にどの程度の(期間において)競争優位性が認められるかが極めて重要です。つまり参入障壁の高さは、グロース株においてさらに重要です。

 

⑥長期投資と短期投資のルールを守れ(P77~)

・短期投資(トレーディング)なら、買った直後から利が乗らなければ失敗(P77)

・長期投資なら、上場して20年くらい時間が経っている銘柄に投資したい(P78)

・「よい会社」と「よい投資ストーリー」を混同するな。「よい投資ストーリー」とは、証券会社が演出したお伽噺だ(P79)

 

⑦マクロ経済がわかれば、投資家としての洗練度が格段に上がる(P80~)

◎マクロ経済を理解することは重要だが、ここではグローバル・マクロ戦略が紹介されている。しかしこの戦略は「上級編の投資ストラテジーだ」(P82)と記載されているように、初級者がこれを実戦で使うことは無理だと思う。その意味では読み流してよさそうな気がする。

 

⑧市場のセンチメントを軽視する奴は儲けの効率が悪い(P84~)

・通勤電車の中吊り広告に「投資」の文字が踊ったら、買いの手を控えろ(P85)

◎似たような話はほかにもある。例えば、「1929年の大恐慌のときには、靴磨きの少年が株式投資をしていた」という逸話など。要は、日頃、株式投資に縁のなさそうな人たちが「投資」に着目し、話題になってきたら、天井が近く危険な状態にあるから警戒すべきということ(逃げ出す準備をせよということ)

 

⑨安全の糊代をもて(P87~)

・安い仕込み値段だけが投資家にとっての防御だ(P87)

・安易にPERの数値を信用するな(P88)

◎ここに書かれていることは間違いではないが、もうひとつ、投資資金のうちどの程度をキャッシュとして温存しておくかということもあると思う。なお、PERについては、先述のとおり、春山昇華氏の考察を参照するとよい

 

⑩謙虚であれ(投資の勉強に終わりはない)(P89~)

・「最小限の努力で、最大のリターン」を考える奴は、イチコロに死ぬ(P89)

 

【chapter2】(P92~)

・まず、「ボチボチだったな」程度の成果を目指す(P95)

・よく「株をやるなら、長期で持て」と言われます。2つ条件が付きます(P95)

①その長期保有対象がダメな対象でないこと

②リスク分散があること

・ネットで見ると、集中投資の成功者の話が出てくる時がありますが、それは単純に失敗者の話は取り上げられないからにすぎません。一点集中の成功者の陰に、無数の失敗者が存在するのです(P95)

・(S&P500を対象とする)ETFを1つ買うだけで、S&P500と同じ値動きを得られます。だから体感上「500銘柄に分散しているのと同じ」効果を得られます(P99)

・このような株価指数ETFは、個々の企業の業績を追いかける時間的余裕がない投資家たちにとってはありがたい存在であり、かなり利用価値の高い商品です(P100)

 

【chapter3】(P108~)

◎読んでも構わないけど、この程度の解説を読んだだけでデイトレード、CHD取引、先物取引等で勝てるはずもなく、ケガをするだけである。このような取引に手を出さなくても「ボチボチ」程度には勝てる。

 

【chapter4】(P162~)

インデックス投資の弱点は、「マーケットは長期では右肩上がりである」ことを前提としている点です(P164)

・債券の金利と株式とは競争関係にあります。(金利は1980年をピークに2010年まで下がり続けているので)(=P165「米国10年債利回り」のグラフ)、かれこれもう30年も株式にフォローの風が吹く状態が続いてきたということです。これが今後も続く保証はありません(P164~165)

◎この記述は、常識的な内容ですが、極めて重要です。

◎2021年後半から現在まで続いているアメリカ株の不調は、2020年に新型コロナによる経済活動へのだけ気を緩和するために、マネーをばらまいたことで⇒2021年にインフレが顕著となったにもかかわらず、FRBによる金融引き締め(FFレートの引き上げ)が遅れたこと⇒その結果、さらにインフレが亢進したこと⇒FFレート引き上げ時期の遅れに気づいたFRBが急速にFFレートを引き上げたことで、長期債金利(10年債利回り、30年債利回り)も急速に上昇したこと⇒その結果、株価が大きく下落という経過をたどりました。

◎現状、インフレはだいぶ落ち着いてきましたが、コロナ以前の水準まで下がるかどうかは分かりません。したがって、金利水準もどの程度の水準で落ち着くかもわかりません。その意味で「マーケットが今後も右肩上がりで推移する」かどうかは分かりません。1970年代の高インフレ時代には「株式の死」と言葉ができたように、マーケットは約10年間高値を更新できませんでした。今後、似たようなことが起こる可能性はゼロではありません。

 

・成長株投資、10のルール(ウイリアム・オニール)(P168~169)

①株価が上昇中の銘柄を買うこと。株価が安くなるのを待ってはいけない

②買い増しするなら、株価が上がって最初のポジションに利が乗ってから実行すること

ナンピンしてはいけない

④最高値に近い株を買うべきで、底値圏の株には手を出さないこと。特に割安に見える株は駄目

⑤値がさ株を買い、ペニー・ストックのような株価が1桁台の銘柄は避けること

⑥買ってすぐ損になったら、損が小さいうちに早めに処分してしまうこと

⑦PBR、配当利回り、PERは無視すること

⑧利益成長の高い株を買うこと

出来高を伴いながら上がっている株を買うこと

⑩同業他社の中で、利益が一番上がっている銘柄を買うこと

◎②は、「最初のポジションに利が乗る」ことは、最初にとったポジションが正しかったことを市場が証明してくれたのだから、その時初めて買い増ししてよい、ということ。言い換えると、最初のポジションが正しかったかどうかがわからない状態で、ポジションを膨らませると、間違っていた時に損失が大きくなるから避けなさいということです。

◎③のナンピンも趣旨は同じ。「最初のポジションが損失の状態にあるとき」は、そのポジションが間違っていた可能性が高いのだから、損きりを考えるべきで、ナンピン(最初の買値より下がったところで買い増しすること)により、損失の絶対額が大きくなるのは避けなさいということです。

◎⑦PBRと配当利回りは、それほど気にする必要はありませんが、PERはそれなりに重要だと思うので、「PERは無視すること」というのは言い過ぎだと思います。

◎CAN SLIMについては、使っていないので、省略します。

 

◎P172~174に新興国投資について記述がありますが、新興国投資の難易度は低くはないので初心者は近寄らないのが無難でしょう。

 

ETFについて(P176~)

②コア・サテライトのコアとは中心の意味でサテライトとは衛星の意味です。例えば、メインになるETFとしてアメリカの代表的な株価指数であるS&P500をなぞるSPYを据え、個別銘柄で自分が特に好きな銘柄を組み入れるなどの方法です(P177)

◎ここに書かれているのは、「ETFをどういう戦略(ストラテジー)の中で使うか」というほどの意味のようです。

◎②のコア・サテライトは、多くの個人投資家に採用されている、バランスのとれた投資法と思われます。それ以外は、読み流していいと思います。

 

【chapter5】(P180~)

◎2014年時点での著者の見解が書かれています。

◎中国に関するP182~189の記述は、現在の中国の経済的苦境の原因が簡単にまとめられています。

◎P190~198は、戦後の経済史をごく簡単にまとめたものです。読んでおいて損はないでしょう。

ストーリーでつかむファイナンス理論 永野良佑著 2013年11月日本実業出版社刊

(目次)

はじめに

第1章 ファイナンスを理解するための基礎知識

第2章 資金を運用する側から見たファイナンスの理論

第3章 資金を調達する側から見たファイナンスの理論

第4章 企業評価をめぐる論点

第5章 最新(っぽい)金融技術の考え方・使い方

おわりに

 

【第1章~第3章】(略)

【第4章】

 

投資の超基本 泉美智子著 2021年朝日新聞出版刊

(目次)

はじめに

Chapter1 ライフプランと投資

Chapter2 投資の基礎知識

Chapter3 iDeCo・NISA

Chapter4 株式投資

Chapter5 債券投資

Chapter6 投資信託

Chapter7 FX・金・不動産‥

 

【Chapter1~3】(略)

【Chapter4】

キャッシュフロー計算書(P117左下)

 説明不足の感があります。

 営業キャッシュフローは、当該期間において、その企業が営業活動により、キャッシュを生み出したか、それともキャッシュを流出させてしまったかを明確にするものです。マイナスが続くと企業の存続が困難になるので、いずれ資金調達(借入または新株発行)が必要となります。営業キャッシュフローがマイナスの企業はリスクが高いので、私は投資対象から外しています。

 

・PER(P119)

 「一般的に、日本の企業の平均PERは15倍程度といわれており、それより高ければ割高、低ければ割安の株式と見ることができます」(P119)との記述は誤っていると言っていいでしょう。

 一般に、成長性の高い企業のPERは高く、成長性が低い企業は低くなります。成長性を考慮することなく、PERの数字だけで割安、割高を判断するのは誤りです。

 

・成行注文と指値注文(P122)

 日々の売買高が少ない銘柄は、指値注文をしないと想定外の価格で売買が執行されてしまうリスクがあります。一方、売買高が多い銘柄はそういうリスクがありません。なので、成行注文を出しても差し支えありません。

 

・単元未満株(ミニ株)の売買(P124)

 ここでの説明は間違いではありませんが、ミニ株の売買は売買が成立しにくいし、価格も不利なので、そもそもやらないのが正解です。

 

・逆指値売り注文(P129)

 株式の売買では「自分の感情を抑える」ことが非常に大切です。

 株価が現実に下がる前の時点(つまり平常心を保っているとき)で、「これ以上下がったときは売る」という注文(逆指値売り注文)を事前に出しておくのは非常に有効です。自分の予想に反して株価が下がってきたときは、月末あるいは翌月末までの期間を区切って逆指値注文を出すことが多いです。

 なお、逆指値注文は「買い注文」でも有効な時があります。(別の機会に書きます)

 

・一部だけを売る(P129)

 これは「ポジションを軽くする」という意味合いを含みます。損失が嵩んできたとき半分売っておくと、その後株価が下がっても、その後の損失が半分で済むので、気持ちが楽になります。利益が乗ってきたときも、「半分売って利益を確定する」ことも有効です。

 

・チャート(P134~135)

 「ローソク足の高値と安値を結んだライン(サポートライン)が右肩上がりになっているときは『上昇トレンド』」(P135①)と記されています。

 しかしネットでは、以下のような説明がされています。

「「支持線」と「抵抗線」は、それぞれ「サポートライン」と「レジスタンスライン」とも呼ばれます。これらの線は、チャート上にある2つ以上の高値または安値の水準を線で結ぶことで表現されます。具体的には、「支持線(サポートライン)」は価格が下落する局面で定期的に反転する2以上のポイントを結んで表現されます。一方、「抵抗線レジスタンスライン)」は価格が上昇する局面で定期的に上値が抑制される2以上のポイントを結んで表現されます。」

 つまり、安値同士を結んだ線がサポートライン(支持線)、高値同士を結んだ線がレジスタンスライン(抵抗線)と呼ばれます。著者が言いたかったのは「サポートライン」ではなく、「トレンドライン」だったと推測されますが、「トレンドライン」は高値を安値を結んだラインではなく、そのトレンド中の安値同士を結んだ線ということになります。

 なお、私は、トレンドはの判断は、移動平均線が上向きか、下向きかで行っており、200日、50日、25日の移動平均線を見ています。

 

・情報収集のツール(P136)

 いろいろ書かれていますが、私の場合は、ツイッター(X)でフォローしている人からの情報が圧倒的に多いです。もちろん、ツイッター情報は玉石混交というか、大半はろくでもない情報です。なので、フォローする人の選択は重要です。

 なお岡崎良介氏(ユーチューブ)、田中泰輔氏(X、ユーチューブ)、春山昇華氏(フェイスブック)からの情報(すべて無料)は、極めて良質です。

 

【Chapter5】(略)

【Chapter6】

ETF(P170~171)

 ETFは、①リスク分散が図れること、②株式と同じように売買できること=流動性が高い、③少額から投資できることが説明されています。個別株投資では、常に倒産リスクに注意を払う必要がありますが、ETFでは、①のリスク分散には、企業の倒産リスクを回避できることなどのメリットがあります。

 

・ESG投資(P172~173)

 ひと頃マスメディアでもてはやされましたが、耳障りのいい言葉ではありますが、あまり惑わされないほうがいいです。投資の基本は、利益と成長です。

 

・暗号資産(P186~187)

 暗号資産は値動きが激しいので、短期間に儲けることができそうに思えます。でも、資産の管理(パスワード管理)、ハッキング、事業者による分別管理の不徹底等価格下落リスク以外のリスクも大きいので、私は手を出してはいません。

 

 ここまで書いてきたように、本書は、「株式投資」の項目での「誤り」と目されるものが多いです。おそらく、著者、監修者、協力者、STAFFのいずれも「株取引」をしていないと思われます。須藤先生(協力者)は「株式を10年以上保有している」(P138)とのことですが、ほとんどトレード(取引)はしたことがないのでしょう。この本は、他の初心者向けの投資本(P191:参考文献)を要約する形でつくられたものだと思います。

 

 「投資の基本は、利益と成長です」と書きました。

 企業の(投資家の視点からの)価値の基本は「利益」です。

 ここでの利益とは、将来的にもたらされる累積的な利益を指します。なので、「成長」、特に「持続的な成長」の要素が大きくなります。

 その持続的成長を確保するための要素として、「堀」と呼ばれるものの存在が重要視されます。他の事業者に対する「圧倒的優位性」の存在です。

 このあたりのことを平易に解説してくれている本があれば、その本は良書だと思います。