生物と無生物のあいだ 福岡伸一著 2007年7月講談社刊

(目次)

プロローグ

第1章 ヨークアヴェニュー、66丁目、ニューヨーク

第2章 アンサング・ヒーロー

第3章 フォー・レター・ワード

第4章 シャルガフのパズル

第5章 サーファー・ゲッツ・ノーベルプライズ

第6章 ダークサイド・オブ・DNA

第7章 チャンスは、準備押された心に降り立つ

第8章 原子が秩序を生み出す

第9章 動的平衡とは何か

第10章 タンパク質のかすかな口づけ

第11章 内部の内部は外部である

第12章 細胞膜のダイナミズム

第13章 膜にかたちを与えるもの

第14章 数、タイミング、ノックアウト

第15章 時間という名の解けない折り紙

エピローグ

 

・プロローグ

 本書全体のテーマの提示。生命とは何か。「自己複製を行うシステムである」を否定し、「動的な平衡状態である」とする。(=私たち生命体の身体は、パーツ自体のダイナミックな流れの中に成り立っている。)

・第2章

 ウィルスは規制によってのみ自己複製できるが、代謝、呼吸をしない。よって生物ではない。

・第3章:ATGCの4文字

・第4章:シャルガフのパズルとは、どのDNAでも含有量は、A=T、G=C。

 よって、DNAは対構造をとっている。PCR:ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(連鎖反応)

・第5章:PCRの発明者はポスドクでサーファー

・第6章、第7章:DNA発見の暗黒史。フランクリンのX線解析画像を盗んだ

・第8章

 我々の身体は、原子に比べてなぜ大きいのか?

 原子の振る舞いは一般的に無秩序であり、生命現象も、すべては物理の法則に帰順するのであれば、声明を構成する原子も絶え間ないランダムな熱運動から免れない。(ブラウン運動、拡散)

 秩序ある現象は、膨大な数の原子(分子)が一緒になって行動する場合に、その平均的振る舞いとして顕在化する。

・第9章

 生命とは、要素が集合してできた構成物ではなく、要素の流れがもたらすところの効果である。私たち生命体は、密度が高まっている分子の緩い淀みであり、その分子は高速で入れ替わっている。

 エントロピー増大の法則に抗する唯一の方法は、システムの耐久性と構造を強化することではなく、その仕組み自体を流れの中に置くことであり、流れこそが生物の内部に必然的に発生するエントロピーを排出する機能を担っている。

・第10章

 アミノ酸は、大小、電荷(+ー)、水溶性・非溶性等で特徴づけられ、タンパク質のアミノ酸結合順序が決まると、熱力学的に最も安定した構造に落ち着く。(=タンパク質の構造が一義的に決まる。)

 生命が絶え間なく壊され続けながらも、元の平衡を維持できるのは、タンパク質の形が相補性によって支えられているからである。相補性は、しばしば微弱でランダムな熱運動との間に危ういバランスをとっており、この柔らかい相補性は、常にタンパク質の合成と分解を繰り返すことにより、傷ついたり変性したタンパク質をとり除き、これらが蓄積するのを防いでいる。

・第11章

 細胞の中に小胞体がある、。小胞体は、細胞膜が陥入し球として分離したものなので、その内部は細胞の外部である。

・第12章

 細胞膜は、リン脂質が隙間なく整列しながら二次元的に広がり、均一な厚みを持つ柔軟な皮膜である。

第13章

 GP2タンパク質は、酸性状態に置くと凝集する。細胞膜を構成するリン脂質のいくつかはGP2を持っている。pHが酸性化すると、GP2が集合するがGP2は台形状なので集合するにつれ曲面状に並び、最終的に球状になる。(小胞体の形成)

・第14章

 129系マウスから胚性幹細胞を生成。

・第15章

 ノックアウトマウスは健全に成長するが、不完全な遺伝子をノックインすると次第におかしな行動をとるようになり、やがてマウスは衰弱死する。

 タンパク質分子の部分的な欠落や局所的改変のほうが分子全体の欠落よりも優位に害作用を与える。(ドミナント・ネガティブ現象)

 生命現象において、ある1つのピースが出現しなければ、動的な平衡状態はその欠落を埋めるようにその平衡点を移動して調節しようとする。うまくいけば新たな平衡が生み出されるし、修復できないときは発生のプロセスを中止し、その細胞塊は自己融解する。

 

 久しぶりに、いい本に出合った。