貧乏はお金持ち

橘玲著 2009年6月講談社

(目次)

まえがき~グローバル資本主義を生き延びるための思想と技術

第1章 楽園を追われて~フリーエージェントとマイクロ法人の未来

第2章 もう1つの人格

第3章 スターウォーズ物語~自由に生きるための会計

第4章 磯野家の節税~マイクロ法人と節税

第5章 生き残るためのキャッシュフロー管理~マイクロ法人のファイナンス

あとがき~「自由」は望んでもいないあなたのところにやってくる

(概要)

 サラリーマンは、経済活動の主要部分(会計、税務。ファイナンス)を会社にアウトソースしている。誰もが正社員に憧れるのは、日本の社会ではサラリーマン以外の生き方が圧倒的に不利だと信じられているからだ。

 サラリーマン法人化とは、会社との雇用契約業務委託契約に変え、同時にマイクロ法人を設立して、これまでと同じ仕事を続けながら、委託費(給料)を法人で受け取ることである。

 そのメリットは、隠れていた人件費を顕在化することで、収入が増えること。厚生年金、組合健保から脱退し、国民年金国民健康保険に移れること。法人を利用した節税やファイナンスで家計を効率化できることである。

 

 著者は、積極的に「サラリーマン法人化」を勧めているようだ。

 しかし、そこには大きなデメリットがある。飛び出した会社が、そのときと同じ条件で委託費を負担してくれる保証はない。会社内の配置が変わり、会社の業績悪化等を背景に、委託費削減の動きが出てくる。そのときにマイクロ法人の側には、交渉力は全くない。

 それどころか、より低額の委託費を提示した競争相手に業務を奪われるリスクがある。会社には、労働者を雇用し続ける義務はあるが、委託先の生活を保障する義務はない。ここまでのリスクを背負ってマイクロ法人化するだけのメリットは全くない。

 働き方がフリーエージェントへと構造的に移行しているのは事実だし、その中で積極的にその動きを進めている人たちがいることは事実だが、それは強力な武器を持っている人たちであって、多くは会社が仕掛けた「外部化」のあおりを受けて、やむなくフリーエージェントになったというだけのことだろう。