無人化と労働の未来

コンスタンツェ・クルツ、フランク・リーガー著 木本栄訳

2018年11月岩波書店

(目次)

Ⅰ 畑からパンになるまで~生産現場をめぐる旅

 第1章 農家と農作業~その現在

 第2章 大規模農場にて~技術革新の影響とリスク

 第3章 コンバインハーベスターが生まれるところ

 第4章 水車も風車もない製粉場~石臼から全自動へ

 第5章 現代の「ミル・ドクター」~イノベーションを生む機械メーカー

 第6章 パンが焼きあがるまで

 第7章 無人化が進むロジティクス~始まった技術革命

Ⅱ 労働の未来へ

 第8章 運転手のいない自動車

 第9章 人に優しい機械を目指して

 第10章  知能の自動化

 

 第1部は、畑で育てた小麦が製粉工程を経てパンが焼きあがるまで、その周辺の収穫、倉庫分野における機械化の歴史と現状が解説されており、なかなか興味深い。

 ドイツの中規模農家は100ヘクタールを保有し、3種類以上の農作物を栽培。1930年代は50人が働いていたが、50年代は10人程度、現在は1.5人の雇用で賄えている。

 ローマ時代の製粉場は1日に4~28トン。現代の製粉場は1,000トン~5,000トン製粉できる。光選別機の高速カメラで、穀物の1粒1粒を分析し、標準値と異なる粒に圧縮空気を当てて、排除するなど、粉砕工程、包装は完全自動で一握りのオペレーターが機械を調整、管理している。 一方、入荷搬入、出荷の際の品質検査、焼成テスト、穀物(原料)仕入には人手を要する。

 今どきの倉庫は、高度な自動化とハイテクを駆使している。無人フォークリフトが倉庫内を縦横無尽に走り回り、商品を納めた可動棚ごと梱包作業所に運んでくる。梱包作業員1人につき5~10台の運搬ロボットが必要。このシステムのスターター用セットは25機の運搬ロボットと専用棚、位置情報を知らせるバーコードレール、無線ネットワークレーザーと操作盤付4つの梱包作業場、現在使用中の商品管理システムに合わせてこのソフトを導入し、稼働させるサービスを含んでおり、ピッキング作業の人件費12人分を削減できる、2年以内に採算が取れるとされる。

 自動化は、人員を必要としなくなった仕事の代わりに、専門能力を要するが健康リスクが小さく収入も多い仕事を創出する。しかし、全体の雇用は減少する。